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Web限定【自動車業界特化型税理士新連載企画】「個人事業」で車屋を始めた酒井くんと、「法人」を設立した相川さん

『第18話:家族に給与を払おう!【前編:個人事業主の場合】』

 個人経営と法人経営のメリット・デメリットなどについては様々な書籍が発行されていますが、この連載企画では「実際のところどうなの?」という素朴な疑問に立ち返り、物語形式でその実態に迫ります。

【今回のテーマ】
 「個人事業主」として開業した酒井くんと、「法人」を設立して開業した相川さんは、順調に事業を進めており、自分一人では業務が手一杯になってきたので、家族に事務仕事を手伝ってもらうことにしました。前回の『第17話:自分に給与を払おう!』では、自分自身に給与を支払う際の取り扱いなどについてご紹介しましたが、家族に給与を支払う場合にはどうすれば良いのでしょうか?また、個人と法人とではどのような違いがあるのでしょうか?そんな家族に給与を支払う際のポイントについて【前編:個人事業主の場合】と【後編:法人の場合】の2回に分けてご紹介します。

【所得税法上の家族への給与】
 個人事業主が従業員に給与を支払った場合には、その支払った金額は事業所得の必要経費となりますが、所得税法上では、個人事業主が生計を一にする家族に支払った給与は、原則として必要経費として認められません。反対に、生計を一にする家族から受け取った給与も、給与所得として所得税の課税対象になることはありません。あくまでも、生計を一にする家族同士で金銭のやり取りをしているに過ぎず、経費になることも給与所得になることもないのです。
 しかし、個人事業主で青色申告を選択している場合、税務署へ届出をすることで、事業専従者として働く家族の給与は例外的に必要経費として認められます。また、白色申告の場合でも、「事業専従者控除」という定額の控除があります。

【生計を一にするとは】
 個人事業主が本人とは別生計の家族に給与を支払う場合には、家族以外の従業員に支払う給与と同じように必要経費として取り扱われますが、前述のとおり「生計を一にする家族」に支払う場合には、必要経費として認められません。それでは、この「生計を一にする」とは、どのような状況を言うのでしょうか。
 「生計を一にする」とは、日常の生活の資を共にすることをいいます。必ずしも同居を要件とするものではないため、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
 なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。


【青色事業専従者給与の特例】
 青色申告者である個人事業主は、次の1~4の要件を満たすことで、生計を一にする家族への給与が必要経費として認められます。

1.青色事業専従者に支払われた給与であること。
 青色事業専従者とは、次の①~③の要件のいずれにも該当する人をいいます。
①青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
②その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
③その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

2.「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
 提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)までです。なお、この届出書には、青色事業専従者の氏名、職務の内容、給与の金額、支給期などを記載することになっています。また、専従者が増える場合や、給与を増額する場合など、届出の内容を変更するためには、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

3.届出書に記載されている方法により支払われ、かつ、その記載されている金額の範囲内で支払われたものであること。

4.青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。(過大とされる部分は必要経費とはなりません。)


【事業専従者控除の特例】
 白色申告者である個人事業主は、事業に専ら従事する家族従業員の数、配偶者かその他の親族かの別、所得金額に応じて計算される金額を必要経費とみなす「事業専従者控除」を受けることができます。

1.事業専従者控除額
 事業専従者控除の金額は、次の(1)または(2)のいずれか低い金額です。
(1)事業専従者が事業主の配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円
(2)この控除をする前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

2.事業専従者控除の要件
 事業専従者控除を受けるための要件は、次のとおりです。
(1)白色申告者の営む事業に事業専従者がいること。
 事業専従者とは、次の要件のすべてに該当する人をいいます。
①白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
②その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
③その年を通じて6か月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。
(2)確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載すること。

【今回のまとめ】
今回は、個人事業主が生計を一にする家族に給与を支払った場合の取り扱いについてご紹介しましたが、税務調査において必ずと言ってよいほど論点になるのが、「専ら従事している」か否かの判定です。例えば配偶者に給与を支払っているケースで、「その配偶者がパートで働いていた」「その配偶者がほとんど事業に関与せず家事に専念していた」といった場合には、税務調査で否認を受けることになります。また、青色事業専従者給与では「不相当に高額である」という点で、税務否認を受ける事例も散見されます。実際の業務内容と照らし、家族以外の従業員を雇った場合の給与と比べて明らかに高額であれば、税務調査で否認されることになります。これらの点を踏まえ、税務調査できちんと勤務実態を説明できるよう、事業専従者が行っている業務や、勤務体系などについて日頃から整理しておくようにしましょう。

【著者紹介】
税理士 酒井将人。
自動車業界特化型税理士事務所OFFICE M.N GARAGE代表。
税務の枠を超えて自動車販売店の業務改善などを行う「中小企業者の経営サポート」と「相続&事業承継対策」のスペシャリスト。著書に『いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務Q&A(セルバ出版)』『おうちのくるま(乗り物絵本シリーズ)』など。

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