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Web限定【自動車業界特化型税理士新連載企画】「個人事業」で車屋を始めた酒井くんと、「法人」を設立した相川さん

『第10話:自賠責保険の代理店になろう!』

 個人経営と法人経営のメリット・デメリットなどについては様々な書籍が発行されていますが、この連載企画では「実際のところどうなの?」という素朴な疑問に立ち返り、物語形式でその実態に迫ります。

【今回のテーマ】
 「個人事業主」として開業した酒井くんと、「法人」を設立して開業した相川さんは、中古車の仕入ルートを確保することができたため、いよいよ販売のための準備に取り掛かるべく、まずは自賠責保険の代理店となり、自店で自賠責保険を取り扱うことができる環境を整えることにしました。そこで今回は、自賠責保険の代理店になるためにはどのような要件があって、どのように手続きを進めればよいのか、そんな自賠責保険の代理店登録に関するポイントを整理したいと思います。

【自賠責保険とは】
 自賠責保険とは、原動機付自転車や電動キックボードを含む全ての自動車に加入が義務づけられている損害保険「自動車損害賠償責任保険」の略称です。自賠責保険に入っていなければ公道を運転することができないことから「強制保険」と呼ばれることもあります。交通事故による被害者救済の観点から、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、基本的な対人賠償を確保することを目的としており、被害者1名ごとに支払限度額が定められているため、1つの事故で複数の被害者がいる場合でも被害者の支払限度額が減らされることはありません。
 なお、農業協同組合などが共済として扱う「自賠責共済(自動車損害賠償責任共済)」も自賠責保険と概ね同じ制度ですが、取り扱い手続きなどが一部異なる場合があります。

【自賠責保険を取り扱うまでの流れ】
 自動車販売店が自賠責保険を取り扱うためには、自賠責保険を取り扱っている保険会社との間で代理店委託契約を結んだ上で、代理店となる店舗の所在地を管轄する財務局に登録しなければなりません。これだけを読むと何だかハードルが高いように感じてしまいますが、実際の登録手続きなどは保険会社を経由して行う形となるため、まず最初に行うことは、保険会社に問い合わせをすることです。

<自賠責保険を取り扱っている主な保険会社>
 □ あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
 □ AIG損害保険株式会社
 □ 共栄火災海上保険株式会社
 □ セコム損害保険株式会社
 □ 損害保険ジャパン株式会社
 □ 大同火災海上保険株式会社
 □ 東京海上日動火災保険株式会社
 □ 日新火災海上保険株式会社
 □ 三井住友海上火災保険株式会社
 □ 楽天損害保険株式会社

 保険会社のウェブサイトなどから最寄りの営業店を調べて問い合わせをする方法が一般的ですが、既に代理店をしている知人などがいる場合には、保険会社の担当者を紹介してもらうのも良いでしょう。

【代理店になるための要件】
 自賠責保険の代理店になるためには、代理店として相応しい環境や営業実態が整備され、適切な知識や能力を備えている必要があります。これらの審査方法や判断基準などは各保険会社によって異なりますが、一般的には事業形態や取引規模(年間の自賠責保険の契約見込み件数など)、そしてPC環境や各種書類の整理状況などから総合的に判断されることとなります。
 なお、自動車保険(いわゆる「任意保険」)は扱わず、自賠責保険のみを取り扱う場合には、損保一般試験(損害保険募集人一般試験)の受験は必須ではありませんが、日本損害保険協会が運営する「募集人・資格情報システム」に登録して「募集人ID」を取得する必要があります。また、業界知識やコンプライアンス知識の習得という観点から、任意での損保一般試験「基礎単位」の受験が推奨されています。

<損保一般試験の概要>
 損保一般試験とは、保険募集にあたり保険商品に関する重要事項などを正確に説明するための知識を習得しているかを確認するための試験です。試験には「基礎単位」と「商品単位(自動車保険単位、火災保険単位、傷害疾病保険単位)」があり、損害保険の代理店になるためには、取り扱う種目に応じた受験が必要となります。
 □ 自賠責保険のみ取り扱う場合
   … 受験は任意
 □ 自動車保険のみ、または自賠責保険と自動車保険の両方を取り扱う場合
   … 「基礎単位」と「自動車保険単位」を受験
 なお、試験はCBT(コンピュータ試験)により実施され、単位ごとに5年の更新制となっています。

【代理店になるための費用】
 自賠責保険や自動車保険の代理店になった場合においても、保険会社や日本損害保険協会などに対して加盟料や会費といった費用が発生することはありません。ただし、初めて損害保険の代理店業を営む場合には保険会社を通じて財務局に登録をする際に15,000円の収入印紙が必要となり、この費用は代理店となる自動車販売店が負担することになります また、前述の損保一般試験を受験する場合には、受験する単位数に応じた受験料が必要です。

<受験単位数と受験料>
 □ 1単位:1,900円
 □ 2単位:3,500円
 □ 3単位:3,700円
 □ 4単位:3,900円
(金額は税込、基礎単位・商品単位を問わず、1回の申込みごと)

【代理店になるための必要書類】
 自賠責保険の代理店になるための申請書や契約書といった書類などは基本的に保険会社の方で準備して頂けます。ただし、代理店となる自動車販売店が手配すべき書類もあるため、個人代理店と法人代理店それぞれについて主な必要書類を整理しておきます。

(1) 個人代理店の場合
 個人代理店となる場合、主な必要書類は次のとおりです。
 ・各種申請書(保険会社が準備、様式は保険会社によって異なる)
 ・委託契約書(保険会社が準備、様式は保険会社によって異なる)
 ・住民票抄本
 ・身分証明書(運転免許証の両面の写し等)
 ・その他各種誓約書、届出書など保険会社が定める書類

(2) 法人代理店の場合
 法人代理店となる場合、主な必要書類は次のとおりです。
 ・各種申請書(保険会社が準備、様式は保険会社によって異なる)
 ・委託契約書(保険会社が準備、様式は保険会社によって異なる)
 ・商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)原本
 ・その他各種誓約書、届出書など保険会社が定める書類
 なお、法人代理店の場合には、定款に定める事業目的に「損害保険代理業」が含まれていることが必須条件となっているため、定めがない場合には、定款の記載内容を変更したうえで法務局に変更登記申請を行う必要があります。法人を設立して開業した相川さんは、『第3話:設立登記をしよう!』において自賠責保険や自動車保険の代理店業を営む可能性を考慮して「損害保険代理業」を事業目的に加えていたため、スムーズに手続きを進めることができました。

【今回のまとめ】
 今回は自賠責保険の代理店になるための手続きについて、要件や費用・必要書類などに関する情報を整理しつつご紹介しました。自動車販売店における自賠責保険の取り扱いについては、自賠責保険証明書の発行や各種管理の面で負担が大きいと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、実務上は「e -JIBAI 」という各社共通の発行・管理システムを用いて運用される場合がほとんどであり、インターネット環境と最低限のPCスキルがあれば、PC上で契約内容の入力から自賠責保険料の精算まで行うことができます。
 新規に自動車販売店を開業した際には、ぜひ自店で自賠責保険を取り扱うことができる環境を整備し、登録業務の効率化を図ってみてはいかがでしょうか。


【著者紹介】
税理士 酒井将人。
自動車業界特化型税理士事務所OFFICE M.N GARAGE代表。
税務の枠を超えて自動車販売店の業務改善などを行う「中小企業者の経営サポート」と「相続&事業承継対策」のスペシャリスト。著書に『いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務Q&A(セルバ出版)』『おうちのくるま(乗り物絵本シリーズ)』など。

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