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【特集】2020年度自動車流通の展望

【今年度の新車販売台数の見通し立たず】

 日本自動車販売協会連合会(加藤和夫会長)と全国軽自動車協会連合会(堀井仁会長)から3月の新車販売台数が発表された。3月単月の登録車と軽自動車の販売台数合計は、58万1438台(前年同月比9.3%減)で昨年10月の消費増税後6か月連続でマイナスとなった。

 3月は新型コロナウイルスの感染拡大から、新車、中古車販売、オートオークションへの影響も大きかった。各種統計データから2019年度を振り返り、足元の状況と今後考えられる影響について業界関係者の声を聞いた。

 2019年度(19年4月~20年3月)の新車販売台数(含軽)は、前年度比4.2%減の503万8727台で4年ぶりに前年度を下回る結果となった。上半期(4月~9月)は、6月を除き前年を上回る販売台数(前年同期比5.6%増)で、9月は消費増税の駆け込み需要からか前年同月比で18.8%増という好結果だった。しかし、消費増税直後の10月は、前年同月比で25.0%減と販売台数は大きく落ち込んだ。その後の販売台数も前年を上回ることなく2桁減のまま推移したところに3月については新型コロナウイルスの影響で、下半期(10月~3月)は大きくマイナスとなってしまった。(同12.9%減)

 日本自動車工業会(豊田章男会長)は3月19日、定例会長記者会見を実施し、通常であれば2020年度の国内4輪車需要見通しが公表されるが、今回は新型コロナウイルスの状況を踏まえ公表が見合わせられた。

 4月に入り、世界的に自動車生産に必要な部品の調達にも影響が出ている上に、国内外工場の稼働も一時的に難しい局面を迎えている。国内感染拡大エリアでは、不要不急の外出自粛が続いており、販売店への来店も控える傾向がみられる。

 国産ディーラ関係者は「新型コロナウイルスの影響もあり、先行きの見通しを立たせることが出来ない。基盤客の来店数は著しく低下はしていないものの、新規来店数が減少している等、明らかに新型コロナウイルスの影響が出てきている」と話す。

 こうした中、政府は消費税増税後の景気対策で導入した自動車購入への税制優遇の期限を半年間延長すると発表。日本の基幹産業である自動車メーカーなどの収益減を抑え、景気停滞を抑制する狙いだが「この状況下においては特効策としては難しい」との声もあがっている。

 数千万円クラスの高級輸入車ディーラー関係者は「ここ数年、ニューモデルの追加などで販売も堅調だった。10月の消費増税の影響もそれほど大きくなかったが、ここに来て、顧客の注文車(新車)について、キャンセルフィーを承知の上でのキャンセルも入っている。コロナ関連で事業を取り巻く環境が激変したことや株価の急落が原因。数百万円のキャンセルフィーになるが、現在の状況では購入が不可能という。1台1台オーダーメイドに近い形で受注販売しているだけに、キャンセル車の販売が難しい」と頭を悩ませる。

 一方で300~600万円クラス輸入車ディーラー関係者は「コロナ関連の反動か、この価格帯の新車販売が堅調に推移している。富裕層がGWなどに予定していた海外旅行などを取り止めていて、お金の使い道として高級車を購入して発散している」という。

 国産ディーラー関係者は「昨年末あたりの新車受注が少し年度末を跨いで登録(販売)につながっているケースがあり、販売自体は悪いなりにもそれほど低迷している感じではない。車検・整備入庫の堅調に推移しており、3月車検の延長もあって4月のサービスは繁忙している。加えて、コロナ自粛で外出を控えるファミリー層が家族揃って来店している。一方で、こうした受注からの納期がかかっているクルマの下取り価格が現在のAA相場と乖離していることから、大きな損失が見込まれている」と収益面でのダメージは大きい。

【中古車登録・販売台数は前年度比微減】
●今年度はコロナ影響拡大のおそれ・中古車販売減に対する対応急ぐ

 2019年度の中古車登録・販売台数(3月は軽中古自動車未発表のため推計値)は、前年度比0・3%減のおよそ692万4000台になりそうだ。消費増税の影響から10~3月にかけて大幅な前年割れとなった新車販売に比べ、小幅な減少とも見られる数値だが、販売現場の声はかなり厳しい。上半期は新車同様に前年を上回る登録・販売台数で推移していたが、下期に入る10月以降では、一度も前年を超えることがなかった。

 こうした状況の中、中部エリアの中古車販売店の現場では「10月の消費増税以降インターネットでの問い合わせが激減、かなり厳しい状況の中、新型コロナウイルスの発生で、顧客のサービス入庫など来店も減少したため、苦しくなってきた。また、在庫の換金についてもオークション相場が低すぎるため難しくなっている。資金力に余裕があるのであれば、安く仕入れられる今、在庫を増やしていきたいが、このような状況では不安があり、思い切ったことができない」と困惑する。

 京都府の中古車販売店では「1~3月の順調に推移し、年度での販売台数は前年度を上回った。10月以降の消費増税反動減も最小限に止めた。顧客中心の中古車販売だったこともあり、増税の影響を最小限に止められた。一方で、前年度は何とか締め括ったものの、4月以降の市場環境急変で、先を見通せない状況になっている。AA相場が急落しており、仕入れのチャンスは拡大しているという見方も出来る」といった声もあがる。

 岡山県の中古車販売店は「消費増税の影響も最小限に止め、年度を通じて順調な推移を見せた。2~3月も厳しい市場環境ながら、計画を上回る推移を見せたものの、4月以降は市場環境が急変している」と今後の危機感を抱く。

 鹿児島県の中古車販売店は「年度では小売り、共有在庫を通じた業販とも堅調に推移したが、2~3月は小売りがやや失速する中で、共有在庫での販売で何とかカバーできた状況だった。3月以降、ショールームへの来場が極端に減少している。4月に入っても先が見えない」と話す。

 一方、こうした危機感に対して、前向きな声としては「オークション相場が急落しているため、仕入れを強化をしている。あらたに仕入れた車両はすぐにに問合せ、販売につながるケースも多く来店もある。今後も継続的に仕入れをして販売を強化し危機を乗り越える」という積極的な姿勢や「買取査定数が伸びている。買取実績により仕入れの補強とお客様との接点強化ができている」との声も。中部エリアの販売店では「コロナの影響で電車通勤から車通勤へのシフトから安い価格帯の軽自動車やミニバンが動いている」と話す。

 来店減少の対策として、WEB上でのやり取りやLINEなどを用いたネット上での商談で実績を確保する店舗も多い。大幅なプライスダウンを決行し、販売時には保険、保証などの付帯商品を販売、将来に向けた乗換や車検や整備などのアフターを強化するケースも見られる。こうした中、中古車共有在庫市場への出品数が増加している。新型コロナウイルスの影響で在庫回転率が低下傾向にある中、新たな販売経路を拡大し、業績を下支えする動きが活発だ。


【2019年度AA流通台数微増だが成約数減少】
●4月は苦戦、AA成約台数激減・中古車輸出も大幅に減少
 
 2019年度の全国オートオークション(AA)実績は、出品台数が前年度比1.3%増の756万574台、成約台数が同0.5%減の478万9497台、成約率が同1・1㌽減の63・3%だった。出品台数は前年を上回ったものの成約数が前年をやや下回ったことで、成約率を落とす格好となった。消費増税前の上半期(4月~9月)は、出品数、成約数ともに前年を上回り、堅調に推移していたが、増税後の11月以降は出品・成約ともに前年を割り込み、特に直近の3月では新型コロナウイルスの影響もあり、成約台数が前年同月比で11.7%減の44万8554台と大きく数字を落としてしまった。

 こうした19年度の状況についてAA業界関係者は「消費増税を見据え販売店の落ち込みを予測し、一般店の強化を前もって進めていたが、12月までは予想以上の落ち込みとなった。1月以降回復の兆しはあったもののコロナウイルスの影響が大きく、出品台数は前年を超えることができたが、成約台数については厳しい結果となった」(中部地区AA会場)

 関西地区会場関係者は「年度での出品台数は前年度を上回る推移となった。一方で成約率は低下、年度を通じて輸出関連の動きが不安定だった。こうした中で、年度末にはコロナウイルス関連での緊急事態に。輸出ダマを中心に急激に応札が弱まり、成約率が急減した。業態に関わらず、各AA会場の成約単価も大幅に低下、出品店も苦しんでいる」と話す。

 中国地区のAA会場関係者は「暦年、年度とも出品台数は過去最多を記録した一方で、年度末以降はコロナウイルス関連の動向に翻弄される展開に。ディーラー担当者をはじめ、会場への来場者が減少したことで、会場落札の勢いが低下、全体の成約率を下げる格好に。輸出バイヤーの落札台数も急減、成約台数、成約単価の面で苦しいAA開催が続いている」と苦戦する。

 また、九州地区のAA会場では「暦年に続き、年度でも過去最多の出品台数を記録しながらも手放しでは喜べない状況。コロナ騒動以降、とりわけ高額車への応札がストップ。輸出の鈍化が非常に大きく影響している」とし、増税以降成約が弱くなっていたところに、追い打ちをかけるように世界的に流行するコロナウイルスの影響は大きく、国内新車市場の低迷により、良質車の出品が少なく、それを如何に集めるかが課題とAA会場関係者は声を揃える。

 オートオークションに大きく影響を与える中古車輸出の状況も3月に入り一変している。為替レートの大幅な変動や現地港や隣国国境の封鎖に加えて、各国で外出禁止令の発動により現地物流がストップ。車両受入れ先や銀行の閉鎖に伴う国際送金の停止(米ドルを海外に流出させない施策の実施)も大きく影響している。

 国内外の輸出事業者は、少額の運転資金で、かつ掛売で商売する業者も多いため、コロナ騒動が長引けば長引くほど経営状況は厳しくなる」と警鐘を鳴らす。(中古車輸出コンサル会社)

 こうした状況は政府の緊急事態宣言を受け一層厳しさを強めている。緊急事態宣言対象エリアのオークション会場は無来場(在宅ワーク型)でWEB開催のみ、予定していたイベントを中止とするケースも増えてきた。今後の自動車流通市場については新型コロナウイルスをいかに早く終息させるかにかかっている。










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