ユーザーの安心のカーライフにOBD検査は必要
車検は、車両が安全性や環境面で国が定めた基準を満たしているかを確認するためのもので、法律で義務付けられている。車検は、車の安全性を確認し、故障や不具合によるトラブルを未然に防ぐことで、安心して車を使用できる環境づくりに大きく貢献している。
近年では、車の安全機能は飛躍的に向上し、ほとんどの新車に高度な先進安全装備されている(表)。アダプティブ・クルーズ・コントロール(定速走行・車間距離維制御装置)や自動ブレーキ、車線維持機能など、ドライバーの運転を支援し、未然に事故の防止に一役買っている。これらの先進安全装備には多くの電子部品が使用されているが、その部品に不具合が生じていないか、機能は正常に作動しているかの検査は義務ではなかった。今後、車の安全性を高めていくためには、技術の進歩と歩調を合わせた点検・整備は必要であり、OBD検査は必然と言える。
■OBD検査とは
OBDは「On Board Diagnostics」の略語であり「車載式故障診断装置」を意味している。OBD検査は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)内部に搭載された自己診断機能である車載式故障診断装置(OBD)を利用した検査となる。OBD検査はスキャンツール(外部診断機)を自動車の診断器用コネクタに接続し、電子制御装置に記録された故障コード(DTC:Diagnostic Trouble Code)を読み取り、故障の有無の確認を行う。10月から車検時にOBD検査が導入されることから、OBD車検とも言われている。
■OBD車検の対象は
車検は乗用車であれば、新車登録時は初度登録から3年、以降は2年後とだが、OBD車検の対象車は、令和3年10月1日(輸入車は令和4年10月1日)以降に型式指定を受けた新型車で、車検証の備考欄に「OBD検査対象」と記載された車両(大型特殊自動車、被牽引自動車及び二輪自動車を除く)となる。令和3年10月以降にフルモデルチェンジした車が対象のため、現時点ではOBD車検に該当しない車が多いと思われるが、今後、対象車両が増えていくことからも事前の準備が求められる。
OBD検査はスキャンツールが必要となるが、スキャンツールは自動車メーカーが自社製車両の整備のために使用する専用スキャンツールと、自動車メーカー以外が製造した汎用スキャンツールがある。OBD車検に使用できるスキャンツールは、一般社団法人日本自動車機械工具協会が公表する「検査用スキャンツール」を備える必要がある。
国土交通省は、自動車整備事業者を対象にスキャンツール導入の補助事業を令和7年1月31日まで先着順で行っており、これから準備を始める事業者は確認していただきたい。
■OBD車検の注意点
OBD検査の結果はOBD検査用サーバーに記録される。10月1日以降は、検査結果は法令・通達に基づいて実施されたものとして取り扱われる。このためOBD検査において違反がある場合、行政処分の対象となり得る。
ユーザー車検の場合は、全国の運輸支局等の検査場、軽自動車の場合は軽自動車検査協会の検査場でOBD検査を含む車検を受けられる。OBD検査で不合格の場合は、修理をしないと車検に通らない
OBD車検が始まることに自動車整備事業者は「販売時にユーザーの安心につながる」「見えない部品を確認できるのは大事」といった好意的な意見も聞こえる。一方で「一台あたりの作業時間が増える」「OBD検査対応の環境を整える必要がある」いった懸念点も上がっている。ただ、ユーザーのためにはOBD検査は必要であり、この検査によって車両の安全性がさらに高まり、ユーザーが安心して運転できる環境づくりに繋がる。
【日整連インタビュー】日整連・島雅之専務理事に聞く
~電子制御装置の検査がもたらす安全性の向上~
令和6年10月から新たに導入されるOBD検査は、自動車の電子制御装置の故障を診断し、車両の安全性を確保するための重要な車検制度である。OBD検査の基本的な内容とその目的、対象車両、整備事業者が直面する準備や課題、OBD検査の導入が整備事業者の業務や収益に与える影響、さらに自動車ユーザーへの理解促進方法について、日本自動車整備振興会連合会(日整連)・島雅之専務理事にOBD検査の導入に対する見解や期待に関する話を聞いた。(近藤厚志)
■OBD検査とは・新しい車検制度の概要
令和6年10月から、車検制度に新たに「電子制御装置の検査」、通称OBD検査が導入されます。この新制度は、令和3年10月以降にフルモデルチェンジした車両(輸入車については令和4年10月以降のモデル)が対象です。OBD検査の目的は、車両の電子制御装置の故障を特定することです。具体的には、自動ブレーキ、レーンキープアシスト、自動運転、車両接近通報、排気ガス制御が検査対象となります。
近年、自動運転技術の進化に伴い、電子制御装置が高度化し複雑になっています。このため、装置の故障や誤作動が車両の故障や事故を引き起こす可能性が高まっており、これらの機能を維持するための検査が必要です。
OBD(車載式故障診断装置)を搭載している車両に対して、電子的な検査を実施することになりました。OBD検査の対象となる車両は、車検証の備考欄に「OBD検査対象」と記載されています。
■整備事業者の取り組みと課題
OBD検査の導入により、整備事業者には新たな検査制度の習熟や設備の導入が求められます。設備導入では、検査用スキャンツールが必要です。このツールにより、車両の電子制御装置の検査が可能となります。検査に携わるスタッフには、OBD検査に関する専門的な教育が求められ、検査用スキャンツールの定期的なソフトウェアのアップデートも必要です。
認証工場であっても、OBD確認を自社で行うことで、車検場での作業がスムーズに進みます。また、国土交通省が実施しているスキャンツールの導入補助事業を活用することで、整備事業者は新しいスキャンツールを導入しやすくなります。これらの施策を活用することにより、OBD検査が開始されてもスムーズに移行することが可能になります。
■OBD検査の導入が整備事業者に与える影響
OBD検査の費用や電子的な装置の修理などが発生する可能性があることから、自動車ユーザーに対して、検査や修理内容について丁寧に説明することが重要です。
日整連では、OBD検査の料金設定に関して基準となる工数を設定し、その結果を作業点数表に反映させ公表しています。この点数を参考に、各事業場で検査料金の見直しを行ってほしい。
■自動車ユーザーへの理解促進
自動車ユーザーに対するOBD検査の理解促進には、整備事業者の適切な対応が必要です。国土交通省が提供するOBD検査に関するチラシを活用し、検査の目的や手順、費用について丁寧に説明することが求められます。
具体的には、OBD検査の方法や故障が見つかった場合の対応、修理にかかる費用について明確に説明することが重要です。また、診断機の差し込み口に他の装置が接続されている場合は、検査ができないことがあるため、車検前に取り外すように説明することも大切です。
■国土交通省と業界団体のサポート体制
国土交通省や業界団体は、OBD検査の実施に向けて積極的なサポートを行っています。整備事業者向けの説明会を開催するとともに、OBD検査の方法や注意点につい実演を交えながら行っているところもあります。独立行政法人自動車技術総合機構の協力のもと、各整備振興会での説明会や個別訪問指導も実施されています。
また、OBD検査に関するポータルサイトが開設され、意見や要望を受け付けています。このサイトで、整備事業者や自動車ユーザーへの周知活動が進められています。国土交通省からは、本格運用開始に向けた体制整備や課題整理の依頼があり、各整備振興会と協力して取り組んでいます。
【OBD検査の活用でユーザーに安心感を与える】 射水自動車
1973年(昭和48年)12月に創業、今年で創業51年を迎える射水自動車(富山県射水市、高長晴雄社長)。地元に根を張った経営で多くの顧客を抱え、年間約500台の車検業務を行っている。敷地内にある指定整備工場には4基のリフトを設置、整備士は5名で、4名が検査員の資格を所有。車検業務において、10月から追加されるOBD検査についても、スキャンツールや整備士の研修受講など事前準備をしっかり整えている。
■OBD検査は安心につながる
同社は約20年前からOBDによる故障診断を実施している。そのため、OBDの有用性を理解しており、今回の車検時のOBD検査追加に対しても柔軟に対応することができた。高長社長は「OBD検査は必要だと思う。OBD検査を行うことで、目に見えない不具合を発見することができる。まさに、自動車の健康診断だと思う。また、買取やオークション仕入れの車両も入庫時にOBDでチェックすることで、故障履歴を確認することができ、販売時の安心につながっている。10月からのOBD検査対象車はまだ少ないので、今のうちに慣れておき、今後の台数増加に備えて準備していきたい」と話す。
■メリットも多いがデメリットもあるOBD検査
OBD検査の追加はメリットもあるがデメリットもある。高長社長は「OBD検査の追加で1台当たりの車検に関わる時間が増加する。特に繁忙期は車検入庫の車両が集中するので、入庫管理を見直す必要がある。また、スキャンツールの導入やインターネット環境の見直しなど設備投資のコストがかかる」としている。
【全4工場指定整備工場化へ矢継ぎ早の設備投資】 ピットイン鯉城商事
~特定整備にも対応し、サービスを営業基盤に~
ピットイン鯉城商事(広島市佐伯区、安部英雄社長)では、自動車特定整備事業者として2024年10月からのOBD検査のスタートを前に、昨秋時点で、自動車特定整備事業の認証を取得するとともに、事業場の整備やスキャンツールの配備などを完了させた。設備投資に際しては、補助金活用などで、負担も軽減したという。一方で特定整備への対応はもちろん、既存の2つの指定工場だけでなく、今後は中古車販売店併設の認証2工場についても、指定工場化を進める。
■アフターサービス強化と車検取り込みは必須
同社では、2つの指定工場(車検の速太郎アルパーク前店、同呉店)のほか、2つの認証工場(カージャンボ広島、同山口)の4工場を有し、アフターサービス強化、車検の取り込みを推進している。サービスの経費カバー率は約60%に上る。「顧客を大切にしながら、顧客代替を促進しており、管理客への車販台数は全体の50%を占める」という。
■全4工場を指定工場に、更なるサービス強化へ
2つの認証工場のうち、カージャンボ広島では、年内から来春をめどに、新たなサービス工場を新設し、もちろん指定工場としての稼働を目指す。カージャンボ山口においても来年までに指定工場資格取得を計画、大規模中古車展示場2店舗に併設するサービス工場で先進の車検・整備に対応し、基盤強化につなげる。
■将来に向け、必要な設備投資は積極的に
「将来を見据え、必要な設備投資は積極的に行っていきたい。言わば『先行投資』で、今後の自動車整備高度化にもしっかりと対応していきたい」(安部社長)とする。
中古車販売業界ではユーザーの信頼を損なうできごともあった。全てのユーザーがクルマに精通している訳ではない。その意味ではユーザーは販売店を信頼するしかない。整備においてもユーザーは知識が無い人の方が圧倒的に多い。機械は壊れる、故障するものと感覚的に理解していてもいざ壊れると不信感を抱く。OBD車検は、わかりにくいものをよりわかりやすくでき、整備の安心と信頼を得る良い機会と言える。見えない箇所を見える化することで、中古車に対する安心と信頼をより高められ、販売と整備に明るい未来をもたらすきっかけになると思う。
近年では、車の安全機能は飛躍的に向上し、ほとんどの新車に高度な先進安全装備されている(表)。アダプティブ・クルーズ・コントロール(定速走行・車間距離維制御装置)や自動ブレーキ、車線維持機能など、ドライバーの運転を支援し、未然に事故の防止に一役買っている。これらの先進安全装備には多くの電子部品が使用されているが、その部品に不具合が生じていないか、機能は正常に作動しているかの検査は義務ではなかった。今後、車の安全性を高めていくためには、技術の進歩と歩調を合わせた点検・整備は必要であり、OBD検査は必然と言える。
■OBD検査とは
OBDは「On Board Diagnostics」の略語であり「車載式故障診断装置」を意味している。OBD検査は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)内部に搭載された自己診断機能である車載式故障診断装置(OBD)を利用した検査となる。OBD検査はスキャンツール(外部診断機)を自動車の診断器用コネクタに接続し、電子制御装置に記録された故障コード(DTC:Diagnostic Trouble Code)を読み取り、故障の有無の確認を行う。10月から車検時にOBD検査が導入されることから、OBD車検とも言われている。
■OBD車検の対象は
車検は乗用車であれば、新車登録時は初度登録から3年、以降は2年後とだが、OBD車検の対象車は、令和3年10月1日(輸入車は令和4年10月1日)以降に型式指定を受けた新型車で、車検証の備考欄に「OBD検査対象」と記載された車両(大型特殊自動車、被牽引自動車及び二輪自動車を除く)となる。令和3年10月以降にフルモデルチェンジした車が対象のため、現時点ではOBD車検に該当しない車が多いと思われるが、今後、対象車両が増えていくことからも事前の準備が求められる。
OBD検査はスキャンツールが必要となるが、スキャンツールは自動車メーカーが自社製車両の整備のために使用する専用スキャンツールと、自動車メーカー以外が製造した汎用スキャンツールがある。OBD車検に使用できるスキャンツールは、一般社団法人日本自動車機械工具協会が公表する「検査用スキャンツール」を備える必要がある。
国土交通省は、自動車整備事業者を対象にスキャンツール導入の補助事業を令和7年1月31日まで先着順で行っており、これから準備を始める事業者は確認していただきたい。
■OBD車検の注意点
OBD検査の結果はOBD検査用サーバーに記録される。10月1日以降は、検査結果は法令・通達に基づいて実施されたものとして取り扱われる。このためOBD検査において違反がある場合、行政処分の対象となり得る。
ユーザー車検の場合は、全国の運輸支局等の検査場、軽自動車の場合は軽自動車検査協会の検査場でOBD検査を含む車検を受けられる。OBD検査で不合格の場合は、修理をしないと車検に通らない
OBD車検が始まることに自動車整備事業者は「販売時にユーザーの安心につながる」「見えない部品を確認できるのは大事」といった好意的な意見も聞こえる。一方で「一台あたりの作業時間が増える」「OBD検査対応の環境を整える必要がある」いった懸念点も上がっている。ただ、ユーザーのためにはOBD検査は必要であり、この検査によって車両の安全性がさらに高まり、ユーザーが安心して運転できる環境づくりに繋がる。
【日整連インタビュー】日整連・島雅之専務理事に聞く
~電子制御装置の検査がもたらす安全性の向上~
令和6年10月から新たに導入されるOBD検査は、自動車の電子制御装置の故障を診断し、車両の安全性を確保するための重要な車検制度である。OBD検査の基本的な内容とその目的、対象車両、整備事業者が直面する準備や課題、OBD検査の導入が整備事業者の業務や収益に与える影響、さらに自動車ユーザーへの理解促進方法について、日本自動車整備振興会連合会(日整連)・島雅之専務理事にOBD検査の導入に対する見解や期待に関する話を聞いた。(近藤厚志)
■OBD検査とは・新しい車検制度の概要
令和6年10月から、車検制度に新たに「電子制御装置の検査」、通称OBD検査が導入されます。この新制度は、令和3年10月以降にフルモデルチェンジした車両(輸入車については令和4年10月以降のモデル)が対象です。OBD検査の目的は、車両の電子制御装置の故障を特定することです。具体的には、自動ブレーキ、レーンキープアシスト、自動運転、車両接近通報、排気ガス制御が検査対象となります。
近年、自動運転技術の進化に伴い、電子制御装置が高度化し複雑になっています。このため、装置の故障や誤作動が車両の故障や事故を引き起こす可能性が高まっており、これらの機能を維持するための検査が必要です。
OBD(車載式故障診断装置)を搭載している車両に対して、電子的な検査を実施することになりました。OBD検査の対象となる車両は、車検証の備考欄に「OBD検査対象」と記載されています。
■整備事業者の取り組みと課題
OBD検査の導入により、整備事業者には新たな検査制度の習熟や設備の導入が求められます。設備導入では、検査用スキャンツールが必要です。このツールにより、車両の電子制御装置の検査が可能となります。検査に携わるスタッフには、OBD検査に関する専門的な教育が求められ、検査用スキャンツールの定期的なソフトウェアのアップデートも必要です。
認証工場であっても、OBD確認を自社で行うことで、車検場での作業がスムーズに進みます。また、国土交通省が実施しているスキャンツールの導入補助事業を活用することで、整備事業者は新しいスキャンツールを導入しやすくなります。これらの施策を活用することにより、OBD検査が開始されてもスムーズに移行することが可能になります。
■OBD検査の導入が整備事業者に与える影響
OBD検査の費用や電子的な装置の修理などが発生する可能性があることから、自動車ユーザーに対して、検査や修理内容について丁寧に説明することが重要です。
日整連では、OBD検査の料金設定に関して基準となる工数を設定し、その結果を作業点数表に反映させ公表しています。この点数を参考に、各事業場で検査料金の見直しを行ってほしい。
■自動車ユーザーへの理解促進
自動車ユーザーに対するOBD検査の理解促進には、整備事業者の適切な対応が必要です。国土交通省が提供するOBD検査に関するチラシを活用し、検査の目的や手順、費用について丁寧に説明することが求められます。
具体的には、OBD検査の方法や故障が見つかった場合の対応、修理にかかる費用について明確に説明することが重要です。また、診断機の差し込み口に他の装置が接続されている場合は、検査ができないことがあるため、車検前に取り外すように説明することも大切です。
■国土交通省と業界団体のサポート体制
国土交通省や業界団体は、OBD検査の実施に向けて積極的なサポートを行っています。整備事業者向けの説明会を開催するとともに、OBD検査の方法や注意点につい実演を交えながら行っているところもあります。独立行政法人自動車技術総合機構の協力のもと、各整備振興会での説明会や個別訪問指導も実施されています。
また、OBD検査に関するポータルサイトが開設され、意見や要望を受け付けています。このサイトで、整備事業者や自動車ユーザーへの周知活動が進められています。国土交通省からは、本格運用開始に向けた体制整備や課題整理の依頼があり、各整備振興会と協力して取り組んでいます。
【OBD検査の活用でユーザーに安心感を与える】 射水自動車
1973年(昭和48年)12月に創業、今年で創業51年を迎える射水自動車(富山県射水市、高長晴雄社長)。地元に根を張った経営で多くの顧客を抱え、年間約500台の車検業務を行っている。敷地内にある指定整備工場には4基のリフトを設置、整備士は5名で、4名が検査員の資格を所有。車検業務において、10月から追加されるOBD検査についても、スキャンツールや整備士の研修受講など事前準備をしっかり整えている。
■OBD検査は安心につながる
同社は約20年前からOBDによる故障診断を実施している。そのため、OBDの有用性を理解しており、今回の車検時のOBD検査追加に対しても柔軟に対応することができた。高長社長は「OBD検査は必要だと思う。OBD検査を行うことで、目に見えない不具合を発見することができる。まさに、自動車の健康診断だと思う。また、買取やオークション仕入れの車両も入庫時にOBDでチェックすることで、故障履歴を確認することができ、販売時の安心につながっている。10月からのOBD検査対象車はまだ少ないので、今のうちに慣れておき、今後の台数増加に備えて準備していきたい」と話す。
■メリットも多いがデメリットもあるOBD検査
OBD検査の追加はメリットもあるがデメリットもある。高長社長は「OBD検査の追加で1台当たりの車検に関わる時間が増加する。特に繁忙期は車検入庫の車両が集中するので、入庫管理を見直す必要がある。また、スキャンツールの導入やインターネット環境の見直しなど設備投資のコストがかかる」としている。
【全4工場指定整備工場化へ矢継ぎ早の設備投資】 ピットイン鯉城商事
~特定整備にも対応し、サービスを営業基盤に~
ピットイン鯉城商事(広島市佐伯区、安部英雄社長)では、自動車特定整備事業者として2024年10月からのOBD検査のスタートを前に、昨秋時点で、自動車特定整備事業の認証を取得するとともに、事業場の整備やスキャンツールの配備などを完了させた。設備投資に際しては、補助金活用などで、負担も軽減したという。一方で特定整備への対応はもちろん、既存の2つの指定工場だけでなく、今後は中古車販売店併設の認証2工場についても、指定工場化を進める。
■アフターサービス強化と車検取り込みは必須
同社では、2つの指定工場(車検の速太郎アルパーク前店、同呉店)のほか、2つの認証工場(カージャンボ広島、同山口)の4工場を有し、アフターサービス強化、車検の取り込みを推進している。サービスの経費カバー率は約60%に上る。「顧客を大切にしながら、顧客代替を促進しており、管理客への車販台数は全体の50%を占める」という。
■全4工場を指定工場に、更なるサービス強化へ
2つの認証工場のうち、カージャンボ広島では、年内から来春をめどに、新たなサービス工場を新設し、もちろん指定工場としての稼働を目指す。カージャンボ山口においても来年までに指定工場資格取得を計画、大規模中古車展示場2店舗に併設するサービス工場で先進の車検・整備に対応し、基盤強化につなげる。
■将来に向け、必要な設備投資は積極的に
「将来を見据え、必要な設備投資は積極的に行っていきたい。言わば『先行投資』で、今後の自動車整備高度化にもしっかりと対応していきたい」(安部社長)とする。
中古車販売業界ではユーザーの信頼を損なうできごともあった。全てのユーザーがクルマに精通している訳ではない。その意味ではユーザーは販売店を信頼するしかない。整備においてもユーザーは知識が無い人の方が圧倒的に多い。機械は壊れる、故障するものと感覚的に理解していてもいざ壊れると不信感を抱く。OBD車検は、わかりにくいものをよりわかりやすくでき、整備の安心と信頼を得る良い機会と言える。見えない箇所を見える化することで、中古車に対する安心と信頼をより高められ、販売と整備に明るい未来をもたらすきっかけになると思う。