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【バディカ連載 Ver.2.0】007 アイスブレイク<前半> 「信用の壁」

バディカ代表取締役・中野優作氏による新連載

 初対面から第一印象がうまくできれば、次にアイスブレイクトークだ。

 ここでも目的をハッキリとさせておこう。第一印象の目標は「安心感を与える」ことで次の展開を進めやすくする事だった。そしてもちろんこのタイミングでも成し遂げたい事がある。

 ここからは、1つ一つの壁を突破していく段階に入る。
 お客様がご来店されて契約に至る手前に、4つの壁がある。この4つをすべて破壊し終えればクロージングをかけられる。契約だ。商談がいいところまで進んで何故か決まらないことが多いという人がいるが、そういった人はこの壁のどれかが残っている。壊し切れてない。
 この段階で破壊すべき一つ目の壁は「信用の壁」だ。読んで字のごとくお客様に信用してもらう事を目的とする。この壁はこれから登場する4つの壁の中で最も重要な壁だ。今後の全ての展開の成否を決める。

 数分間のアイスブレイクで一気に流れを掴んでいきたい。
 この壁をしっかり破壊しておかなければ、どんなにいい提案をしたとしても効果は半減、信用していない相手の話は入ってこない。
 アイスブレイクとは、緊張状態にある関係を氷(アイス)に例えて、打ち砕く(ブレイク)トークということで、アイスブレイクトークと呼ばれている。
初対面のお客様と接するときに、緊張をほぐしてスムーズにコミュニケーションできる状態にするための手法のことだ。

 この重要性が分かっている外資系の保険会社や金融系の会社では鬼のように練習するだろう。ここで商談の全ての流れが決まるし、商品以外の営業力が最も問われる部分だ。逆に言えばここが最も「営業マン」としてライバルに差がつけられる部分でもある。
それでもこの本を読まれている方はしっかり練習したことがあるだろうか?僕は業界大手の中古車販売店のほとんどに友人がいて教育について相談を受けるが、ほとんどやっていないと聞く。
それこそ、年収1000万円、2000万円を超える外資系企業やIT企業の営業マンの練習量と比較すると全く時間を割いてない。

 ここをやらない手はない。伸びしろが一番大きい部分だ。

 それではアイスブレイクトークのポイントに移ろう。
 流れで言うと初めましてと顔を合わせて数分経過したぐらいだろう。ここから5~10分間で「信用の壁」を破壊したい。 
★アイスブレイクの3つのポイント
✔自身をもって対等に接する
✔相手のリズムで、話したい事を話してもらう
✔共感しまくる
 
 自信を持って対等に接する

 そもそも高額な商品を買うときに、ユーザーは慎重になる。そこで自信がなさそうな営業マンが担当だと不安が加速する。
 この人大丈夫か?
 ミスをされないかな?
 このクルマを買っていいだろうか?
 他社ももう少し回って比較するべきか?
 自信が無さそうな営業マンだと、お客様まで迷ってしまう。
ところが堂々とした営業マンに「任せて下さい」と自信満々に言われれば一瞬で不安が消し飛ぶ事もある。この人が言うなら大丈夫だろうと。

 では自信がある人とはどういう人のことだろう。
僕は知り合いやYouTubeを見てくれた人からよく言われる。何でそんなに自信家なのですか。どうやったら中野さんみたいにエネルギッシュに生きられるでしょうかとDMをもらうこともある。周囲の人や視聴者様から見て、僕は自信があるように見えている。
 
つまり、僕のように振舞えばいい。何を言っているんだこいつは。と思った方は少し落ち着いてほしい。 
 僕みたいに振舞えと言われてどう理解しただろう? 
 えーと、声が大きいのか?
 少しゆっくり喋っているのか?
 あ、よく笑っているな、それとよく頷いているな。
 まあこんな感じだろうか。つまり、所詮は見た目と声の雰囲気。資格情報と聴覚情報から判断しているだけだ。セリフじゃない。
 自信を本当に持っている僕みたいなサイコパスもいるが、それを実績のない人がやるのは難しい。これまで何百何千と営業指導してきたから分かっている。「やればできる!」という気持ちもいいが、それよりも僕がおすすめするのは、自信家のモノマネだ。僕がやったのはそれだ。
 自信なんか初めは全くなかったが、トップセールスの真似だけをしていた。モノマネして、自分との間違い探しを徹底的にやっていた。当時は意識していなかったし言語化もできていなかったが、モノマネがうまくなれば、自然とそれが自信のある立ち振る舞いになっていた。
 それによってクルマが売れるようになり、成功体験が得られれば本当の自信がついた。今はクルマのセールスで誰にも負けない自信があるが、はじめは自信がある人のモノマネから始まった。

 自信とは究極的には「自分を信じる」ことだ。
 これは全ての仕事に通ずるが、自信のない人の話は説得力に欠ける。まるで迫力がないし、自分を信じていない営業の事を信用できるわけがない。
 「形から入り心に至る」だ。初めはモノマネから入り徹底的にやり込む。形を徹底的に真似して継続させることで本当の自信を入れよう。
 あとは自分の力を信じて前に進むのみだ。


 相手のリズムで、話したいことを話してもらう
 
 会話の中で気持ちが上がるときはどんな時だろう。
思い出してほしい。ほとんどの人は自分が話したいことを話している時だ。会話の相手とテンポが合えば話も弾むものだ。ついつい楽しくなって話し過ぎてしまう。こういった相手と会話をしていると話が噛み合うと感じるだろう。

 この会話をトップセールスは意図的にやっている。「ミラーリング効果」だ。心理学でも使われる言葉で、自分と似た行動をとっている人に好感を抱いてしまうことだ。

 このアイスブレイクトークで達成したい目標は何だったか思い出してほしい。「不信の壁」を破壊して、安心してもらう事だ。その為に最も手っ取り早いのは会話が弾み、自分に好意を持ってもらう事。会話のリズムが合わずにこちらの話を聞いてくれず、一方的に説明してくる営業マンに心は開かない。逆に相性のいい相手は初対面でもついついなんでも相談してしまう。

 ではどうすればいいか。

 ミラーリング効果とは自分と同じ行動を取る相手に好意を持ってしまうことだから、究極的に言えば相手に合わせる事だ。

 まずはテンション。もの静かなお客様が相手ならこちらも相手に合わせる。テンションが高めの元気いっぱいのお客様だとこちらも同じように合わせる。

 次に会話のスピードだ。これもお客様と同じスピード、同じテンポに合わせる。会話の「間」の間隔まで相手に合わせるぐらいの気持ちで望んで欲しい。そしてお客様が話している最中に間違っても質問を被せたり、会話を遮ってはいけない。お客様のペースで話ししてもらう事を徹底的に心がけて欲しい。リズムが狂うと心地が悪くなってしまうからだ。

 そして最後に会話の量。これはセオリーだがお客様に7割話してもらおう。どうしても自分が話したがる営業がいるが、今じゃない。この時間はお客様のターンだ。まだ開始間もないこのタイミングで焦る事はない。ここで気持ちよくなってもらって、情報収集した後で話した方がトークの効果が高いことは感覚的に理解してもらえるだろう。

 時間にして数分だ。「不信の壁」を破壊する為に聞く側に徹しよう。

【プロフィール】
中野優作(なかの・ゆうさく)氏。1982年3月香川県さぬき市生まれ。バディカ代表取締役社長。
中古車小売り大手で数万台を超える実戦経験で手腕を発揮したのち、2017年同社創業。最大手業販サイト、オートサーバーで「5ツ星認定」を受け、21年度「販売台数ナンバー1」(全国会員7万社中)に。「車の流通をもっと自由に、なめらかに」というミッションを持ち、圧倒的な努力と情熱で挑戦する。地元・香川の3店舗と千葉、兵庫、岡山、福岡の直営店に加え、初のフランチャイズ店を茨城と香川に2店舗オープン。趣味は「筋トレ」というストイックな側面は、事業への熱意や意識の高さにも通じる。著書「クラクションを鳴らせ!」(幻冬舎刊)も好評発売中!

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