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(中古車販売店座談会①の続き)
大川氏>
これまでの話を聞いて広田社長が経営者としての強い信念を持ち、周囲の人の意見に流されることもなく、現在のネクステージを築き上げることが出来たことを納得できました。
【書店のクロスマーチャンダイジングに大きなヒント】
広田氏>
多店舗、専門店展開で次々と出店していきましたが、2005年には大きな壁に差しかかりました。専門店展開と新車ディーラーのような綺麗なガラス張りのショールームを特徴に差別化を図る中、次なる差別化を模索しました。そこで参考になったのは「ヴィレッジ・ヴァンガード」という書店のビジネスモデル。本屋は粗利が低いが、本に関連する粗利の高い雑貨を多数並べて販売するのが特徴。いわゆるクロスマーチャンダイジングを展開している点が非常に大きなヒントになった。
中古車販売においてはAAなどにおける仕入れ価格は規模の大小に関わらず同じ条件で、価格的な差別化は難しい。前述のクロスマーチャンダイジングの考えの中、車に携わる周辺ビジネスを強化する戦略に拍車をかけた。ボディコーティングや部品・用品、オートローン、自動車保険などで収益力を高める基盤収益確保のビジネスモデルを構築していきました。
大川氏>
ネクステージではフロアマットに至るまで納車時に交換していると聞いたことがある。
広田氏>
実際はクルマの販売時に新品マットを販売しています。社外品を業者に委託して製造しているのですが、新品への交換を薦めています。新車を買う時にマットを買うのと同じ考え方で、中古車購入時にも新品のマットを販売することを徹底しています。例えばオートローンは沢山売れば仕切りが下がったり、保険を多く販売すれば手数料収入が増える。こうしたことを磨くことが他者との差別化につながるのではないでしょうか。
大川氏>
車販時にひと声かけることでプラスアルファの利益につながるということか。
【価格競争力と周辺利益確保というスタイルを確立】
広田氏>
クルマの価格を限界まで下げて、競争力をつけ、周辺で利益を確保するスタイルを今から12年前に確立しました。当初は社員からも「売れるわけがない」と不信感を持たれましたが、先行者として徹底していきました。専門店展開から「薄利多売」へと変化し、クロスセールスによって収益を確保するスタイルに転換していきました。ユーザーの不公平感を無くすことや価格競争力によって来客も増加、差別化が図れましたが、今やこれも業界のスタンダードになりつつあります。
これまでは販売に特化してきましたが、これからは「ストック」を意識し、基盤収益確保にも取り組んでいきたいと思います。
稗田氏>
これまでの話を聞いて、あらゆることを考え、確実に実行できたことが成功のカギとなっていると感じる。特別な手法を行うというより、当たり前のことを当たり前に実行出来ていることが非常に大きい。
前田氏>
車両自体で利益が確保出来る時代ではなくなってきたというのはこの数年特に強まっている。多くの販売店は周辺利益も取れておらず、小規模店は淘汰される方向にある。車両で利益が取れない中、オーディオやナビ、さまざまな部品の販売、整備や鈑金、保険などで周辺利益を確保するため、顧客をいかに拡大出来るかが大きなテーマになっている。今後は車検期間が延長される可能性もある中で、整備・鈑金部門を拡張していく方向性を考えている。
【車検・整備部門の重要性が高まる】
広田氏>
車検制度は今後も継続されていくのではないだろうか。先日のツアーバスの事故もそうだが、クルマは人が運転する者として、「安全」はこの国ではとても大切なテーマ。車検制度は今後も継続されるのではないだろうか。
稗田氏>
欧米諸国では安全を確保する手段として、日本の車検制度を取り入れたいという向きもある。
広田氏>
これから20年後には自動運転やAI(人工知能)の拡大が予想され、点検項目も増えていく方向にあるのではないか。こうした点への対応がいかに出来るかが、生き残りのターニングポイントになる。収益基盤は増税や原油高など、環境変化により大きく変動する。ただし、ユーザーとの関係性はあくまで人が行うことで「FACE TO FACE」。会社規模の大小に関わらず、これを実行出来る会社でないと生き残れないのではないだろうか。車検でも販売でも全て同じ。大規模店でも小規模店でも、まずはお客様のことをしっかりと考えて行動でき、「ファンを増やす」ことが実行できれば、将来も明るいのではないでしょうか。
【商売の原点に帰りユーザー本位に】
前田氏> サービス面が今後の会社作りの大きな課題。本当にクルマだけを売るのではなく、クルマ関連以外のものまでを売っていけるくらいのことを考えないといけない。
【ユーザーとの接触頻度拡大が重要】
広田氏>
クルマに関することは何でもやるくらいの考えが必要。販売店にとってユーザーとの接触頻度が最も大事なこと。今クルマを販売し、保証を付けたとしても2年後の車検を取ることは大変難しい。いかに接触頻度を増やすことが出来るか、無料オイル交換などを活用し、接触機会を増やしている。頻度を増やすことで、車検入庫の確保などにもつながっている。年間を通じて、ご来店いただき、コミュニケーションをとり、お店をご利用いただくかが重要だと考えます。
大川氏>
現在、50~100台程度展示する1店舗あたりの営業スタッフ数は何人ぐらいですか。
西脇氏>
平均で4~6人程度を配置しています。
広田氏> もう少し人員が欲しいところです。あと2人程度が適当ではないか。(店舗としての)営業活動量がまだまだ低い。1人あたり30件、40件もの営業案件を持つと多すぎるため、現在1人あたり月25件程度が適当と考えている。成約率50%と考えると1人あたりの販売台数は13台程度から、多くて17、18台程度成約している。40件もの案件を抱えてしまうと、売る側がお客さんを選んでしまいます。来店が多い場合には人員不足により、売り逃がすなど、機会損失が発生してしまうことが課題です。
前田氏>
新規客の来店がこれだけ多いということですか。
【価格、在庫回転率を強く意識】
広田氏>
価格や在庫回転率を強く意識しており、いかに新しいクルマを登録し、在庫を回転させ、かつ競争力のある価格で出していけるかが重要。
大川氏>
回転させるというのは決まった周期で見切りをつけ、AAなどに出品、在庫を整理するということですか。
広田氏>
自社のルールを設定しています。90日をルールとしていますが、60日経過したあたりから、フラッグが上がり、在庫回転を強く意識しています。現在はこれをもう少し短縮したいと考えています。
前田氏>
現在特化している車種体系などを考えるとAAでもなかなか思うように仕入れられないのではないか。
広田氏>
その通りです。在庫を整理したとしても新たに仕入れるクルマも同じ車種を買うことも多く、「なぜ売れなかったのか」をしっかりと分析する必要があり、専門のチームも設けている。
前田氏>
AA仕入れは本当に難しくなってきている。
広田氏>
買い取り事業の強化なども考えていかなければならない。
大川氏>
AA仕入れはネットからの外部落札ですか、それとも現車会場で落札しているのですか。
広田氏>
ほとんどはネットでの落札です。
西脇氏>
東京、名古屋、神戸の主要会場には実際にバイヤーが出向いて買い付けていますが、なかなか全てを下見できないのが現状です。
広田氏>
在庫回転のため、ある程度見切らないといけない部分も強いが、売れない車には何かしらの理由がある。本来であれば、原点に回帰し「クルマ屋」という意識を持ち、「見て」「選んで」「買う」という仕入れが命。現場に届いた車両もしっかりと見極め、在庫期間に関係なく、見切りをつけることも大切だが、組織が大きくなるとこうした部分が薄れつつあるのは事実です。仕入れを現場に戻すなど、あらゆる可能性も考えている。
西脇氏>
これが一番良いという「究極」はないのではないでしょうか。決めたことをどれだけ徹底してやり切ることが出来るかが大切。
【拠点長の教育が最重要】
前田氏>
店舗展開していく中で、拠点長が経営者の意識を持っているかどうかによって大きく実績が変わることが多い。拠点長の教育はどうされていますか。
広田氏>
これまでの積み上げでやっていかなければならないところ。社員教育は本当に難しいことで、拠点長になるからには人格も問われる。営業スタッフの時からチームワークを大切にしているかなどをしっかりと見極めている。まずは何事も「人のせい」「会社のせい」にしない誠実な人材が望ましい。こうした意味ではディーラーでも中古車販売店でも同じではないでしょうか。
松沢>
人材採用で工夫されていることはありますか。
【離職者を出さない体制整備に注力】
広田氏>
採用以前に社内の体制整備に重きを置いています。まずは中を整え、いかにして離職者を出さないかが大変重要となる。これからの時代を見通すと、2030年には790万人の雇用が減るとされている。われわれ小売業は不人気業種とされ、中でも自動車販売業はさらに厳しい。この中で、いかに人材を確保するかが重要。
求人活動や教育には莫大な費用もかかることから、いかに離職者を出さない体制を整えるかが未来永劫を考えた際には非常に大切。離職者を出さず、雇用を安定させるためにも給与の(ベア)ベースアップなどもしっかりと行っています。
稗田氏>
スタッフの平均年齢はおいくつですか。
広田氏>
現在29歳くらいです。以前に比べると上がりました。
【消費税10%時代をどう切り抜ける】
稗田氏>
今後想定される消費税10%時代について、大手販売店としてどう考えていますか。
広田氏>
AA仕入れにしろ、メーカー(ディーラー)仕入れにしろ、これまでの車両本体価格は据え置きにせざるを得ないのではないか。つまり増税分をユーザーではなく、われわれ販売店が被ることになり、粗利率は確実に下がることになる。
稗田氏>
大手になればなるほど、増税分の2%は厳しくのしかかる。
広田氏>
年間4万台に対しての2%は非常に重い。増税分について、店頭では転嫁できないのが実情。販売は波があり、その波を踏まえたストック型のビジネスを強化し、販売以外の部分で収益を上げられるよう、ユーザーに長く利用してもらえる仕組みを構築していかなければ厳しくなる。環境整備のための投資もしっかりと実行していきたい。こうした意味では抱えている問題は皆さんと同じです。
【5年後の業界展望は】
前田氏>
会社設立から20年が経過し、これからの20年を見通す中、まずはこれから5年後の市場をどう見ていますか。
広田氏>
5年後には新車、中古車問わず、販売台数は減少しているはず。こうした中でも拠点展開は続けていきたい。人材教育も含めて、しっかりとした体制整備を推進することが重要ではないか。
大川氏>
新卒だけでなく、中途採用も活発に行っていますか。
西脇氏>
最近は中途採用者の方が離職率が高い傾向にある。最近は新卒、中途に関わらず、本社での研修を実施するなど、会社の理念やコンプライアンス(法令順守)に関する研修なども含めて、店舗と会社のギャップを埋めている。
【創業者のバイタリティーとリーダーシップ】
稗田氏>
これまでの話を聞いていると、大企業でありながら、現場をよく知っている社長の強さを感じた。
前田氏>
創業者ならではのバイタリティーとリーダーシップではないか。こうした中で現在、拠点長にはどれくらいの権限を与えているのか。
広田氏>
拠点長は経営者の視点を持たないといけないという考えは前田さんと同じです。仕入れを含めて権限を持たせたいとも考えている。責任を含めて持たせることが必要ではないか。成長する人の共通点は自分で考え、意思決定を下せる人。
稗田氏>
18年ほど上場企業でサラリーマン勤めをした経験があるが、当時はサラリーマンとしての誇りもあった。行き着くところは「人間」であると今回の座談会でつくづく感じました。
大川氏>
今日は大変素晴らしい話を聞くことが出来ました。本当にありがとうございました。
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