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【特集】カーライフスタイルを提案し差別化を図る販売店戦略

  • 自動車流通新聞8月25日発行 自動車流通新聞8月25日発行
 キャンピングカーやスポーツ用多目的車(SUV)の売れ行きが好調のようだ。販売店も単に中古車を販売するというより、こうした車両をライフスタイル全般に対して訴求する傾向が強まっている。アウトドアライフの相棒となるSUVやキャンピングカーなどを強みにラインアップ拡充を図り、他店とのすみ分けを図る。コロナ禍で「三密」を避けるレジャーとしてもアウトドアが脚光を浴びる中、災害時などでも活躍を見せる場面も多く、この数年の「アウトドアブーム再来」と合わせて、改めてニーズが高まりつつあるという。

 日本RV協会(横浜市港北区、降旗貴史会長)がとりまとめた「キャンピングカー白書2020」には、ユーザーがどのようにしてキャンピングカーと接しているか、産業としてのキャンピングカー市場の拡大など、近年のキャンピングカーを取り巻く環境などの調査結果を掲載している。

 同白書によると、協会員のキャンピングカー事業者が出荷した台数と、輸入した台数を合計し、廃棄台数を差し引いた数値を国内キャンピングカーの保有台数とすると、2019年は11万9400台と「過去最高」と順調に更新している。同様にキャンピングカーの出荷台数や売上総額も堅調に推移している。

 比較的高価なキャンピングカーを購入しないまでもレンタルキャンピングカーのニーズも高い。同白書によると利用者の中心は40代だが、前年比で最も増加率が高かったのが20代で若年層がキャンピングカーに興味を持ち、レジャーなどで利用する傾向が拡大してきたとも考えられる。

 販売する側も、ただ単に中古車を販売するより、ユーザーとのつながりを強化でき、リピートや紹介などで業績を伸ばしている事例も数多くみられる。

 大手中古車販売店では、ネクステージ(名古屋市中区)が全国にSUV専門のSUVランドを11店舗展開、IDOM(東京都千代田区)は「Brat」のブランドでNATURE CAR PLAYをコンセプトに専門店を8店舗展開、グッドスピード(名古屋市東区)は中部地区を中心にSUV専門店を6店舗展開するなど、多様化する消費者ニーズに応えるとともに新たな需要を喚起している。

 アウトドアライフを提案するブランドとコラボするディーラーも登場するなど盛り上がりを見せてきている。今回の特集ではこうした活動による成功事例や今後の市況の変化(ウィズコロナ、アフターコロナ)に備えた各販売店の取り組みを中心に紹介したい。


【事例紹介】カーライフスタイルを提案し差別化を図る販売店戦略


①【週末レジャーを中心にカーライフ全般への提案】アウトドアの楽しみ方を提案し差別化経営

 エムクライム(兵庫県三木市、森本光則社長)では、創業当時よりトヨタ「ハイラックスサーフ」の専門店として事業展開、他店との差別化を図っている。特定の車種を通じ、レジャーを中心にカーライフスタイル全般への提案を実践している。森本社長は「ハイブリッド車や低燃費車が主流となる中で『皆が乗っているクルマ』で差別化を図るのは難しい。アウトドアなどのレジャーを想定したクルマに特化することで、他店との競合も少ない」という。「日常の足」としてのクルマに「週末の相棒」という特別感を持たせた提案を行う同社では、普段使いにもしっかりと対応できるカスタムカーを展開する。

 一見、アウトドアレジャーのヘビーユーザーが多いかと思うが、顧客層は比較的ライトユーザーが多いという。日常の使い勝手を犠牲にせず、週末のレジャーにも十分対応出来るポテンシャルや手軽にアウトドアを楽しめる便利アイテムの供給などが功を奏している様子だ。森本社長は「自店では『このクルマを売る』ではなく『このクルマをどう使ってもらう』を目的に合わせて提案している。ライフスタイルの様々なシーンを想像しながら、大規模店などとは一味違う、付加価値を提供している。

 こうしたスタンスは動画配信サービス「Youtube(ユーチューブ)」などで、不特定多数に発信し続けている。数年越しでチャンネル登録ユーザーが来店し「ここで買いたい」という一声がお店とユーザーとの関係性の作り方の大きなヒントと言える。

 中には、平成8年式の「ハイラックスサーフ」を購入する際の下取り車として、平成28年式の「アルファード」を入れるユーザーも。「価値」を提供し続けるからこそ見られる現象かもしれない。

 最近では、エムクライムグループとして、スズキ車販売の三木スズキやルーフテント「iKAMPER(アイキャンパー)」の国内正規販売代理店などを務め、カーライフに関わる付加価値提供を強める。得意とするハイラックスサーフやFJクルーザー、ランドクルーザー、ランドクルーザープラド、デリカD:5などの車種のカスタム販売と合わせて、ルーフテントの需要も高まる。「自社で販売した中古車を長く乗ってもらいたい。長く乗ってもらうクルマに長く使える装備を提供することも大切な役割」(森本社長)とする。

 インターネットの普及により、県外からの注文も多くを占めるまでに。今後は各都道府県に販売やメンテナンスでの協力店網を展開、いわゆる「整備難民」を無くすべく、万全のフォロー体制を確立したい考え。最近では自社の輸出関連企業を通じて、カスタム車両の輸出も手がける。「安心」を根底に、幅広い販路を開拓、唯一無二のスタイルで存在感を示す。

 昨今のアウトドアブームの再来を受け、キャンピングカーニーズも拡大している。その中でも関戸社長の考えはブレない。購入するかどうかはユーザーが決める。決めてもらう為に、商品と価格のバランスを意識し、価値を提供していく。


②【軽キャンパーで需要を掘り起こし全国展開へ】コロナ禍で「個」のレジャーが脚光、需要高まる

 コロナ禍において軽自動車をベースとしたキャンピングカーの需要が高まりを見せている。新車・中古車販売から自動車整備など車両に関わる全般業務の他、軽キャンパー「ちょいCan」のFC本部として、企画・開発を行なっているユーズネット(愛知県豊田市、井上美鹿社長)では、緊急事態宣言が解除された2020年5月以降、公式ホームページのアクセス数が急上昇、それにともない全国加盟店の販売台数が増加している。新型コロナウイルス感染拡大を懸念して、大人数が集まるキャンプなどのレジャーは自粛傾向にある。その中で軽キャンパーのように限りなく「個」に近いレジャーに脚光が当たり、今回の需要拡大につながった。

 同社が「ちょいCan」の取り扱いを開始したのは、リーマンショック直後の2009年春になる。景気後退により定年後の再雇用が抑えられる中、活動的でしかも金銭的に余裕のある60代が増えた時期である。そこに需要があると見込んだ同社は、軽キャンパーの取り扱いを開始、市場を開拓した。軽キャンパーは大型のキャンピングカーと違い、比較的ライトユーザーが対象となるため、本格的なノウハウを必要とせず、また開発にあたり低コストで済む。また、アイテム数も少ないので商談にかかる時間も抑えられるというメリットがあった。販売を開始して1年、商品の改良とともに、今まで外注に委託していたキット製作と架装が自社で行なえるようになったことで、販売代理店の募集を開始、全国展開を開始した。現在、販売代理店は北海道から熊本県まで全国に広がり130社が加盟、またロートピアやJプラン、フラット7加盟店とも連携、約2500社が「ちょいCan」の取り扱いを行なっている。

 「ちょいCan」の取り扱い直後は60代前半であったユーザー層は徐々に低年齢化しており、現在では50台半ばとなっている。この年代は子供が手を離れ、定年を見据えて、定年後のライフプランを考える時期でもある。それと同時に、ある程度金銭的に余裕ができたことで趣味にお金を掛けられる年齢でもある。「ちょいCan」のユーザーはアウトドア感覚で使用するのではなく、釣りや写真、旅行の移動手段として使用することが多い。

 今後について、「ちょいCan」を取り扱うキャンパー事業部の井上政彦会長は「上がってきた需要は下がらないと考えている。生産能力を高めオーダー待ちを無くすとともに、より良い商品を開発していく。また。本部と代理店のコミュニケーションを深め、活性化につなげていきたい」としている。


③【売り手と買い手の視点を持ち付加価値を提供】

 新車・中古車販売から商用車・特装車まで幅広く展開する新相武(神奈川県愛川町・関戸朝一社長)。その中でも同社の強みは「付加価値」の提供にある。

 関戸社長自ら「架装に強い」と話すように、積載車をはじめとした架装車のラインナップは多岐にわたる。特に軽自動車をベースとした軽ダンプや軽冷蔵車は「オリジナリティを出した商品を売りたい」という関戸社長の想いを具現化している。

 商品の提供・開発において「マーケットイン」と「プロダクトアウト」という言葉を耳にする。「マーケットイン」は消費者ニーズを、「プロダクトアウト」は作り手・売り手の論理を優先したものだが、関戸社長はその両方を持ち合わせていると言える。 
 
 関戸社長は「ものを創ることは夢がある」と話し、魅力のある商品を開発、提供すべく常にアイデアを巡らせている。一方では「自分ならこうしたい、こんな商品が欲しい」という想いを胸に現在、キャンピングカーの製作に取り組んでいる。

 関戸社長が製作、販売するキャンピングカーは軽自動車のバンタイプとトラックタイプの2通りのラインアップ。開発、設計に既に3年以上を要しており「やる以上は本物を、絶対にあきらめない」と強い想いを口にする。バンタイプはポップアップルーフを備え、軽自動車とは思えない解放感をユーザーにアピール。また、走行充電も可能としキャンピングカーとしての快適な空間を提供する。ベースとなる軽自動車も複数メーカーを視野にバリエーションに富んだ商品構成を予定している。トラックタイプは荷台を上手く活用することで、バンタイプ以上の空間を実現する。既にバンタイプは完成間近であり近々、販売も予定している。これまで製作、販売してきたバリエーションに富んだ架装車と同様に「オリジナリティを出した商品を売りたい」という想いはキャンピングカーでも同じだ。

 昨今のアウトドアブームの再来を受け、キャンピングカーニーズも拡大している。その中でも関戸社長の考えはブレない。購入するかどうかはユーザーが決める。決めてもらう為に、商品と価格のバランスを意識し、価値を提供していく。





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