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【企画特集】自動車公正取引協議会が不当表示と販売対応に厳格な措置

支払総額表示に苦情急増

 中古車市場における「支払総額の表示」制度が導入されてから4カ月が経過したが、一部の事業者がその運用ルールを守っておらず、消費者が表示された金額で購入できないといったさまざまな問題が多数発生している。ここでは、現行制度において事業者がルールを守っていないことから発生する深刻な問題点と事例を通じて具体的に検証し、中古車業界における透明性と消費者保護の向上を促進するための適正な表示を提案する。2面では違反事業者に対する厳格な措置基準を再掲するとともに、3面では業界トップのコメントを紹介したい。(近藤厚志)

●問題点の具体例と苦情
①相談状況
 支払総額を表示しながら別途保証費用や整備費用を請求 
数多くの報告により、保証費用や整備費用を含まない支払総額を表示しながら、別途で保証費用や整備費用を請求していることがあげられる。これにより、消費者は表示された支払総額では購入できないという問題が発生している
②オプション購入の要求
 今回の改正では購入時に最低限必要な費用を表示することにより、支払総額以外に別途費用が発生することはおかしいことを明確にした。 こうした中、一部の販売店では、不要なオプションの購入を販売条件とし、表示された支払総額では購入できないという事態に消費者は直面している。
③諸費用の不透明な計上
 支払総額に含まれるべき諸費用が明確であるにもかかわらず、購入時に予測不能な追加費用が発生するケースが多発している。消費者は事前に把握できない費用に不安を抱えている。
④車検なしと表示した
車両でも車検整備費用
を請求
 車検が切れた状態の車両は、車検なし、もしくは車検整備付と表示される。車検整備なしと表示しながら車検整備費用を請求することはできないが、ここでも購入者に追加で請求されている例が散見される。不適切な販売行為が購入者にとって混乱を生んでいる。
⑤納車準備費用・利益の含まれ方
 車両価格に含まれるべき納車準備費用や利益が別途請求され、これが表示された支払総額と実際の購入価格とに乖離が発生している。透明性の不足が生じ、購入者にとっては不利益となっている。
⑥苦情相談状況
 2023年10月1日から11月30日までに31件の苦情相談が寄せられ、その内訳は会員18件、非会員3件、不明10件となっている。これは業界全体での不信感をとるべき改善策とは
①透明性の向上
 「支払総額」の名称を使用し、車両価格に諸費用を含めた価格を適正に表示することで、消費者に対して透明性を提供することに責任を持つ。
②サービス費用の明確な表示
 販売時に影響を与えるサービス(定期点検整備や保証)の費用は、車両価格に含めて表示し、予想外の費用発生を防ぐ。
③諸費用の具体的な明示
 保険料、税金、登録に伴う費用を含む「諸費用」を具体的に表示し、消費者が購入時に把握しやすくする。
④作業費用の適正な表示
 納車準備費用や利益など、商品化のために必要な作業費用は「車両価格」に含め、不透明な追加請
求を防ぐ。これら改善策を踏まえてとるべき改善策とは中古車販売業者は消費者に対して公平かつ透明な情報を提供し、表示された「支払総額」で購入ができない場合の重大な規約違反を避けるべきだ。業界が改善を求められる状況下で、信頼関係の構築が不可欠となる。 透明性を確保し、誠実な販売プロセスを通じて、中古車業界が消費者に信頼される存在となるためには、これら規約を遵守し適正な販売が着実に実施されることが求められる。
【2面・3面に続く】

●主な苦情相談事例
1)「保証」や「整備」を購入しないと販売しない
①中古車情報ウェブサイトに「支払総額255 万円」「保証なし」「整備なし」と表示されていたが、担当者から「保証を購入してもらわなければ販売できない」と説明され、合計296 万円になった。「保証なし」で購入できないのはおかしいと抗議したが、担当者は応じてくれない。
②県外の販売店と商談しているが、中古車情報ウェブサイトには「支払総額144 万円」と表示されていたにもかかわらず、見積書は支払総額230 万円となっており、希望していない販売店保証50万円等が計上されている。再三、保証等はいらないと言ったが応じてくれず、表示されていた支払総額で販売してくれない。

2)「オプション」を購入しないと販売しない
①担当者から「ポリマーコーティングやマフラー錆止めを購入してもらう必要がある」と説明され、中古車情報ウェブサイトに表示されていた支払総額より40万円も高額になった。表示されていた支払総額で購入したいと言ったが、担当者は応じてくれない。
②中古車情報ウェブサイトに「全国配送無料」と表示されていた、県外の販売店と商談しているが、見積書に陸送費
10万円等が計上されている。配送無料ではないのか確認したところ、「コーティング13万円を購入すれば配送無料となる」と言い、表示していた支払総額で販売してくれない。

3)「支払総額」に、購入の際に最低限必要な「諸費用」が含まれていない
①中古車情報ウェブサイトに表示されていた支払総額よりも見積額が高いので確認したところ、同サイトに表示されていた支払総額には「環境性能割」が計上されていなかったことが分かった。担当者からは「『環境性能割』を計上し忘れた」と説明されたが、問題ではないか。
②軽自動車を注文したが、支払総額以外に、「検査登録手続代行費用」と「車庫証明手続代行費用」として、計5万円を請求されている。
③中古車情報ウェブサイトで見つけた中古車について問い合わせたところ、販売店から「車庫証明の申請に要する費用は各地域によって違うので、支払総額に含めていない」と言われた。


【中古車の支払総額 違反事業者は実名公表】
①初回違反違約金は100万円、再違反は500万円
②支払総額違反行為は走行距離、修復歴、冠水車不当表示と同等の最も重い処分

 支払総額の表示をしておいて、その価格で購入できない場合は、自動車公正競争規約第14条第9号で禁止している不当な価格表示に該当する。不当表示に対しては、当然罰則規定が置かれており、措置基準は軽い順に「口頭注意」、「文書注意」、「警告」、「厳重警告」さらに悪質な場合は、違約金を課し、また事業者名を公表する等重い処分がある。

●不当な価格表示の禁止
 第14条 販売業者は、中古自動車を販売する際に、次に掲げる表示をしてはならない。⇒⑼表示された価格では実際に購入できないにもかかわらず、購入できるかのように誤認されるおそれのある表示。(⑴~⑻省略)

 これに違反すると走行距離や修復歴の不当表示(自動車公正競争規約違反)と同等の最も重い罰則を受けることになる。

 違反に対する措置は第20条に定められている。違反行為を行った事業者に対し、当該違反行為を排除するために必要な措置を採るべき旨、当該違反行為又はこれに類似する違反行為を再び行ってはならない旨その他これらに関連する事項を実行すべき旨を「文書で警告」することができる。

 この警告を受けた事業者が当該警告に従わないときは、事業者に対し、200万円以下の違約金を課し、もしくは除名し、または消費者庁長官に必要な措置を求めることができる。

 「支払総額表示に違反」したものは警告に併せて、または警告に代えて100万円以下の違約金を課すことができる。再違反の場合は当該事業者に対して500万円以下の違約金を課すことができる。

●違反は本社の責任
支店、営業所が多い場合の複数違反については、同一時期の違反として、累犯とみなさないものとするが、支店、営業所が他県にまたがる場合の取り扱いについては、規約の適用を受けるのは事業者であるため、支店または営業所が行った行為でも当該事業者の責任となる。

●違反事業者は実名公表
更に規約違反措置基準では、走行距離、修復歴、冠水車に関する不当表示(表示された価格で購入できるかのように誤認させる表示)ならびに新車及び中古車のおとり広告に関する「厳重警告のうち、行為が特に悪質なもの」や「違約金」、「除名処分措置」では事業者の実名を公表する措置も定められている。
事業者にとって、事業者が行った行為と併せてその事業者名が告知(実名公表)されると、社会に不当表示を行ったことが広く知らしめられることになるので、違約金よりも当該事業者に与える影響は大きい(社会的信用の失墜)といえる。また前述のように再違反の場合は違約金も500万円に跳ね上がり、経営事体も危うくなる場合も生じるなど事業者にとって大きな打撃を受ける。


【自動車公正取引協議会 鈴木欣也専務理事】
「悪質事業者への厳正な対処等により「支払総額」の表示を定着化」
「消費者の信頼」と「事業者間の公正な競争」確保のために

 中古車の「支払総額」(購入時に最低必要な全ての費用が含まれた価  格)の表示が昨年10月にスタートし、早くも約4か月が過ぎました。重大なルール変更であるため、表示の実施に当たっては、1年半の周知期間を設け、かつてない規模の周知活動を行いましたが、実施目前の9月には、通常の10倍の約400件の問合せが当協議会に入るなど、会員事業者も対応に追われました。

新しい表示がスタートして間もないこともあり、「支払総額」を表示していない事業者がいる、という声を聴くことがあります。もちろん、表示が 定着するよう、今後一層の周知を図ってまいりますが、最も問題なおは、広告や店頭では「支払総額」を表示し、商談になると「支払総額」では販売しない(保証やオプションの購入を強制、支払う必要のない諸費用を請求等)という、詐欺的な販売行為を相変わらず続ける悪質事業者がいることです。これらの行為は、会員事業者が多くの時間や労力、コストをかけて実施した「支払総額」の表示の趣旨を踏みにじるものです。

 悪質事業者の実態を把握するため、昨年10月以降、当協議会消費者相談室(年間約6,000件の相談を受付)に寄せれる苦情相談のモニタリングを実施しています。その結果、本年1月までに「表示された支払総額で購入できない」という苦情が、38件寄せられ、中には、大手中古車専業店の複数の苦情も含まれます。

 当協議会は、今後もモニタリングによる監視を継続し、苦情が寄せられた事業者へのヒアリング等を実施、不当な価格表示等が判明した場合は、「厳重警告」や「違約金」、「事業者名公表」など、厳正な措置を採ることにより、「支払総額」の表示の定着化を図ってまいります。

 また、今回、相談室に苦情が寄せられたのは、「支払総額」は「最低限必要な全ての費用が含まれた価格」であることが消費者に認知されたためであり、追加の支払いを求められた消費者の「苦情」として顕在化しました。この事業者は「信頼できない」ということにも気付きました。したがいまして当協議会は、中古車の価格表示が「支払総額」に変わったことを消費者に広く周知するためのPR活動についても、関係団体や中古車情報誌賛助会員の協力も得ながら、引続き重点施策として実施してまいります。


【日本中古自動車販売協会連合会 海津博会長
「価格の透明性と信頼性向上へ」、「中古車市場の新たな挑戦と課題解決」

 今まで一部の販売店が行ってきた不明瞭な価格表示では、お客様にとって分かりにくく、不信感にも繋がってしまっていました。これが昨年10月に自動車公正競争規約が改正され、車両価格に諸費用を加えた支払総額表示となったため、同品質の車ではプライスボード上で極端に値段の差があるというのは減ってきていると推測されます。支払総額表示になって約4ヶ月が経過しましたが、お客様もまだ支払総額についてわかっていないところもあります。課題や問題点などは今後顕在化していくとは思いますが、公取協とも共有し、中販連としても対処していかなければならないと考えております。

 我々が引き続き行っていくことは、ユーザーへの認知を図ること、そして「総額表示になって安心」というのを伝えていくことだと考えています。今回の改正によって価格の表示は統一されましたが、売り方まで統一されていません。つまり、ユーザー自身が支払総額に含まれる費用を確認する必要があるのです。そのためには保証や定期点検整備の有無など、ユーザーが確認をしなければならないポイントがあるということを伝えていかなくてはなりません。そして販売店には総額表示ののぼりを店舗に掲示していただいたりして、「中古車の表示=支払総額表示」ということを少しずつアピールしていただきたいと思っています。

 また、ユーザーの信頼確保に関する話として、中古自動車販売士とJU適正販売店認定制度について意義を再確認していただきたいと思います。お客様に疑念を抱かれるようなお店ではないと自らが宣言してもらうのが適正販売店制度なので積極的に参加していただきたいと考えています。

【詳細は自動車流通新聞2024年2月25日号】

















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