近年、地球環境保護が避けて通れない課題として認知され、世界中の自動車メーカーが、CO2の削減や燃費向上による省エネルギー化を目的として、ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)の量産化を加速している。
HEVやEVに搭載される自動車用モーターの研究開発は、リチウムイオン電池をはじめとする次世代二次電池とともに、もっとも重要な技術とされている。現在、HEVやEVには、高出力を得るためにネオジムやサマリウムなどのレアアース(希土類元素)を使用した希土類磁石モーターが用いられている。しかし、レアアースは産出国が限られており、世界産出量の実に95%を中国が占めている。
産出国ではレアアースを戦略物資と位置づけ、産出量・国際取引量を制限しつつある。とりわけ中国は7月、今年下半期の輸出量を前年同期比で3割にまで減らすことを表明。表向きはレアアース産出に伴う環境汚染を軽減するためと言っているが、実際は製造業全般に欠かせないレアアースの出回りを激減させることによって価格を高騰させ外貨を稼ぐのみならず、海外メーカーの価格競争力を低下させること、また、レアアースを用いるハイテク工程を中国国内に誘致し、技術移転(というと聞こえがいいが、技術泥棒も同然)をさせるのが狙いだろう。 さらに、わが国固有の領土である尖閣諸島の海域で起きた漁船衝突事件の報復措置として、レアアースの海外持ち出しを遅延させた(中国政府は否定しているが)ことで、ものづくりに欠かせない戦略物質を中国に依存することに対するリスクが世界中でクローズアップされる事態となっている。
レアアース自体は、アメリカやオーストラリア、モンゴルなど、中国以外の国々でも産出するのだが、中国が低価格を武器に輸出攻勢をかけたことで、各国のレアアース鉱山が軒並み閉山に追い込まれた。ところが、今回の中国側の身勝手な振る舞いに危機感を感じた各国が、閉山した鉱山を再稼動させ、産出量を増やそうとする動きがみられる。
レアアースの中国依存から脱却し、安定確保しようという動きと並行して、レアアースそのものを用いない、もしくは使用量を減らそうという研究がわが国で鋭意進められている。 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発」をテーマに、大学などと共同で「新方式・構造の開発」と「代替素材の開発」という両面から技術開発を進めている。
【レアアース不使用】 北海道大学などと協力し、従来のハイブリッド自動車用希土類磁石を用いた小型モーターに匹敵する50KWを発生できる新構造のモーター「ロータセグメント形アキシャルギャップモーター」の開発に成功。レアアースを使わず、安価なフェライト磁石だけで構成されている。磁石と鉄芯の配置などを工夫することで、希土類磁石なみのサイズでも強力な磁力を発生できるようにし、出力を確保した。
【レアアース半減でも最高水準の高出力】 名古屋工業大学の小坂卓准教授らは、現行ハイブリッド車に搭載されているモーターと比較して、レアアースを用いた永久磁石の使用量を50%に抑えつつ、世界最高水準の高出力(最大出力123KW)を発生するモーターを開発した。その技術については、きわめて専門的で難解なため詳細は割愛するが、「ハイブリッド界磁モーターにおいて永久磁石と電磁石を効果的に協調作用させるため、SMCコアと呼ばれる鉄粉を圧縮成形および熱処理製造した磁心を使用。従来のモーターにはない新たな3次元磁気回路を持ったモーター構造を採用した」とのこと・・・(難)。
【永久磁石そのものを用いないモーター】 東京理科大学は、永久磁石そのものを一切用いないモーターの開発に成功した。 EVやHEV用のモーターには、「IPMSM」(ロータの内部に永久磁石を埋め込んだ構造を持つ回転界磁形式の同期モーター)と呼ばれる、レアアースを用いたモーターが搭載されている。一方、磁石を一切使わないモーターである「SRM」(スイッチドリラクタンスモーター・磁気抵抗の差を用いて回転する)は構造が簡単で耐熱性に優れ、丈夫なものの、出力が劣るため、自動車用モーターとするには大きくなりすぎて、事実上搭載
が不可能であった。 同大学では、モーターの構造と材料の選定を工夫し、最適な組み合わせを模索することで、従来のSRMにはないトルクを実現。構造につ
いては、モーターの部品である「回転子」や「固定子」の数がトルクと関係していることが明らかとなったため、「回転子」と「固定子」を増加させた18/12
極モデルを設計。また、固定子に傾斜(テーパー)をつけることで、トルクの増加につなげたとのこと。
【自動車用モーター以外の分野でも】 立命館大学は、民間企業と共同で、液晶テレビのガラス基盤を磨く際に用いられている「セリウム」の使用量を大幅に削減できる技術を開発
した。このほか、二次電池に多く用いられているレアアースを代替素材に置き換える研究も、産官学挙げて急ピッチで進められており、早期の実用化、低コスト
化により、世界における日本の産業競争力が増すことに期待が持てる。
HEVやEVに搭載される自動車用モーターの研究開発は、リチウムイオン電池をはじめとする次世代二次電池とともに、もっとも重要な技術とされている。現在、HEVやEVには、高出力を得るためにネオジムやサマリウムなどのレアアース(希土類元素)を使用した希土類磁石モーターが用いられている。しかし、レアアースは産出国が限られており、世界産出量の実に95%を中国が占めている。
産出国ではレアアースを戦略物資と位置づけ、産出量・国際取引量を制限しつつある。とりわけ中国は7月、今年下半期の輸出量を前年同期比で3割にまで減らすことを表明。表向きはレアアース産出に伴う環境汚染を軽減するためと言っているが、実際は製造業全般に欠かせないレアアースの出回りを激減させることによって価格を高騰させ外貨を稼ぐのみならず、海外メーカーの価格競争力を低下させること、また、レアアースを用いるハイテク工程を中国国内に誘致し、技術移転(というと聞こえがいいが、技術泥棒も同然)をさせるのが狙いだろう。 さらに、わが国固有の領土である尖閣諸島の海域で起きた漁船衝突事件の報復措置として、レアアースの海外持ち出しを遅延させた(中国政府は否定しているが)ことで、ものづくりに欠かせない戦略物質を中国に依存することに対するリスクが世界中でクローズアップされる事態となっている。
レアアース自体は、アメリカやオーストラリア、モンゴルなど、中国以外の国々でも産出するのだが、中国が低価格を武器に輸出攻勢をかけたことで、各国のレアアース鉱山が軒並み閉山に追い込まれた。ところが、今回の中国側の身勝手な振る舞いに危機感を感じた各国が、閉山した鉱山を再稼動させ、産出量を増やそうとする動きがみられる。
レアアースの中国依存から脱却し、安定確保しようという動きと並行して、レアアースそのものを用いない、もしくは使用量を減らそうという研究がわが国で鋭意進められている。 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発」をテーマに、大学などと共同で「新方式・構造の開発」と「代替素材の開発」という両面から技術開発を進めている。
【レアアース不使用】 北海道大学などと協力し、従来のハイブリッド自動車用希土類磁石を用いた小型モーターに匹敵する50KWを発生できる新構造のモーター「ロータセグメント形アキシャルギャップモーター」の開発に成功。レアアースを使わず、安価なフェライト磁石だけで構成されている。磁石と鉄芯の配置などを工夫することで、希土類磁石なみのサイズでも強力な磁力を発生できるようにし、出力を確保した。
【レアアース半減でも最高水準の高出力】 名古屋工業大学の小坂卓准教授らは、現行ハイブリッド車に搭載されているモーターと比較して、レアアースを用いた永久磁石の使用量を50%に抑えつつ、世界最高水準の高出力(最大出力123KW)を発生するモーターを開発した。その技術については、きわめて専門的で難解なため詳細は割愛するが、「ハイブリッド界磁モーターにおいて永久磁石と電磁石を効果的に協調作用させるため、SMCコアと呼ばれる鉄粉を圧縮成形および熱処理製造した磁心を使用。従来のモーターにはない新たな3次元磁気回路を持ったモーター構造を採用した」とのこと・・・(難)。
【永久磁石そのものを用いないモーター】 東京理科大学は、永久磁石そのものを一切用いないモーターの開発に成功した。 EVやHEV用のモーターには、「IPMSM」(ロータの内部に永久磁石を埋め込んだ構造を持つ回転界磁形式の同期モーター)と呼ばれる、レアアースを用いたモーターが搭載されている。一方、磁石を一切使わないモーターである「SRM」(スイッチドリラクタンスモーター・磁気抵抗の差を用いて回転する)は構造が簡単で耐熱性に優れ、丈夫なものの、出力が劣るため、自動車用モーターとするには大きくなりすぎて、事実上搭載
が不可能であった。 同大学では、モーターの構造と材料の選定を工夫し、最適な組み合わせを模索することで、従来のSRMにはないトルクを実現。構造につ
いては、モーターの部品である「回転子」や「固定子」の数がトルクと関係していることが明らかとなったため、「回転子」と「固定子」を増加させた18/12
極モデルを設計。また、固定子に傾斜(テーパー)をつけることで、トルクの増加につなげたとのこと。
【自動車用モーター以外の分野でも】 立命館大学は、民間企業と共同で、液晶テレビのガラス基盤を磨く際に用いられている「セリウム」の使用量を大幅に削減できる技術を開発
した。このほか、二次電池に多く用いられているレアアースを代替素材に置き換える研究も、産官学挙げて急ピッチで進められており、早期の実用化、低コスト
化により、世界における日本の産業競争力が増すことに期待が持てる。