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【特集】世界で加速するEV化戦略

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  • 図① 図①
  • 図② 図②
  • 図③ 図③
  • 図④ 図④
  • 図⑤ 図⑤
  • 図⑥ 図⑥
  • 図⑦ 図⑦
  • 図⑧ 図⑧

求められるのは変化に対応する力

 バイデン米大統領が8月5日(日本時間6日)に2030年までにアメリカの新車販売におけるEⅤ(純粋なバッテリー電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)の比率を50%以上に引き上げる大統領令に署名した。
 同署名にはHV(ハイブリッド)を含んでいない。プリウスを代表とするHVは米市場でも販売台数を伸ばしてきたが、今回の署名により日本の自動車メーカーは方向転換を迫られることが予想される。
 他にも世界最大市場の中国でもEV・PHV・FCVを「新エネルギー車(NEV=New Energy Vehicle)」と位置づけ、35年までに新車販売の50%以上を掲げている。
 EUの欧州委員会は35年までにHVを含むガソリン等の内燃機関エンジン車の販売を禁止する案を公表しており、更に踏み込んだ政策を打ち出した。既にイギリスやフランスをはじめとした欧州各国は独自の目標を定め“脱炭素”に向け舵を切っている。
イギリス、ドイツ、スウェーデンは30年にガソリン・ディーゼル車の販売禁止を、フランスは40年に定めるなど、EV化は既定路線となっている。
 日本でも昨年、菅総理が所信表明演説において「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言。東京都も独自に30年に新車の乗用車の脱ガソリンを表明している。
 これまで中国と欧州がEV化の旗振り役を務めていたが、今回、世界第2位の新車市場である米国が “脱炭素”を標榜した目標を定めEV化を推進することで、世界が本格的にEV化に向かって進む形になる。図①

■世界のメーカー動向
 メルセデス・ベンツは2030年までに新発売する全ての車をEVにすると宣言している。これに伴い電気モーター会社の買収をはじめ、22年から30年の間にバッテリー電気自動車へ400億ユーロ(約5兆2000億円)を超える投資を行い、EV導入を加速、推進していく。
 BMWは21年末までにEVモデル5車種の投入を予定しており、順次その比率を高めながら30年までに新車販売の50%のEVを目指す。
 フォルクスワーゲングループも30年までに新車販売の50%をEVとする計画を発表しており、最終的には50年までにEV・PHVの100%を目指す。
 ボルボは30年までにEV化100%を計画しており、欧州のメーカーは一斉にEV化に舵を切った状況にある。

■日本のメーカー動向
日産自動車は50年までにカーボンニュートラルを実現すべく、30年代早期より、主要市場に投入する新型車のすべて電動車両とする方針を打ち出している。中期計画では、23年までに8車種を超えるEV車投入を計画。順調に進んでいるとしている。また、電動化率は23年度までに日本が60%、中国23%、欧州50%へ向上し、23年度までに年間100万台以上の電動化技術搭載車の販売を目指す。主要市場である日本、中国、米国、欧州に投入する新型車をすべて電動車両とすることで、電動化技術の採用をさらに積極的に推進していく。

 トヨタはHV・PHV・EV・FCVの電動車フルラインアップ化を推し進め、様々な選択肢を用意している。
 フルラインアップ化を推し進める理由は、各国・各地域で、ユーザーが要望する使用環境や航続距離、充電インフラの整備状況などが異なり、それぞれの事情に合わせ、ユーザーが「使いやすい、乗りたい」と感じるパワートレーンを提供していく考えがある。
 トヨタは水素燃料電池車のMIRAIを販売し、他社とは異なる“脱炭素”へのアプローチを見せていたが、4月に電動車のフルラインアップ化の一環として25年までにEV15車種導入計画を発表した。
新EVシリーズ「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」は、上海モーターショーにて、シリーズ第一弾となる「TOYOTA bZ4X(トヨタ ビーズィーフォーエックス)」のコンセプト車両を初披露している。新シリーズTOYOTA bZについては7車種を導入する計画としている。

 ホンダは四輪車のグローバル市場でのEV・FCVの販売比率を30 年に40%、35年に 80%、40年には、100%を目指すとしている。世界各国、各地域のエネルギー事情やインフラにあわせて開発、投入し、HV・PHV・EV・FCVという電動車のフルラインアップで“脱炭素”を目指していく。

■“脱炭素”の課題
 世界・国内のメーカーが電動車(EⅤ・PHV・FCV)の開発、販売に一斉に舵を切った状況にあるが、以前に日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長が問題提起したEV車で使用する電池製造の工程での大量の電力使用、その電力不足を既存の原子力発電所や火力発電所の数ではカバーできない点については明確な回答は出ていないと言える。この点も踏まえ今後“脱炭素”がどのように進んでいくかは注視する必要がある。

■日本のEV市場の現状
 環境・エネルギー性能に優れた自動車の普及を促進する一般社団法人次世代自動車振興センター(東京都中央区、堀洋一代表理事)の統計資料(図②③)によると国内保有台数は毎年増加しており、19年の時点でEV・PHV・FCVの合計は26万3620台、HEV(HV)も同様に増加し1068万4681台となっており着実に普及していると言える。
 一方で国内販売台数(図④)では、HEV(HV)は安定した販売数を示しているが、EV・PHV・FCVは年によってバラつきが見られる。バラつきの理由は、次世代自動車振興センターによると新車発売と補助金交付によるものと考えられるとのこと。17年のEV乗用車は前年の倍に近い販売台数となっているが、これは日産リーフのモデルチェンジにより販売台数が増加している。これはEV車に限った話ではなく、一般的に新モデルが登場すれば販売数は伸びる。また、エコカー補助金等が交付された際も消費者が購入する理由になり、販売台数は伸びる傾向にある。

■モデルチェンジを重ねる毎にバッテリー性能は向上
 EV車について言えば、所有者の評価は高い。以前に販売店の声として日産リーフについて「電気自動車のパワーに驚くユーザーがほとんど。タワー型の自走式駐車場に多く見られる急こう配の坂道でもグイグイ進む。加えてアクセルを踏むとスムーズに発進できストレスを感じない。その点はユーザーから高評価をいただいており、近県はもとより遠方からもリーフを求めるユーザーも少なくない」と紹介した。
 EV車のパワー以外にもガソリン車と比べ静粛性や乗り心地、燃料代が安い点など評価する声も聞こえる。
 一方でEV車の車両価格とバッテリー容量を懸念し、購入に二の足を踏むユーザーも少なくない。特にバッテリーに関してはエアコンの長時間使用はできないのでは、また走行中にバッテリーが減ってきた時に充電施設が無いのではといった不安を抱くユーザーもいる。
 しかしバッテリーの性能はモデルチェンジを重ねる毎に向上している。次世代自動車振興センターがまとめた「日産リーフ」の資料(図⑤、BEVはバッテリーEV)から見て取れるように、バッテリーの大容量化を重ね、走行距離もガソリン車並みを実現している。
今はEV・PHVのラインアップも輸入車も含め軽自動車から高級車まで多岐に渡りユーザーの選択肢も増えている(図⑥)。EVやPHV、FCVの特長をユーザーがもっと理解することで購入促進に繋がるとも言える。
 EV・PHV・FCVの特長については次世代自動車振興センターのホームぺージにて詳しく紹介されているので是非ご覧いただきたい。

■EV普及のカギはインフラ
 先ほど、ユーザーの懸念点として充電施設が無いのではと挙げたが、19年11月時点で急速充電施設数は7700を数える(図⑦)。特に14年7月以降は補助金の交付により、急速に設置数が増えている。また、普通充電施設を含む充電設備補助金交付台数で見ると全国で約3万9000カ所に設置されている。最近では商業施設やコンビニエンスストアに充電設備が設置されており、日本全国を網羅している状況にある。充電施設に関しては既に地点数についてはインフラは整ったと言えるが、EV・PHVの増加にあわせた充電器の数を増やすことが課題である。充電できる環境が整えば、EVの普及は加速すると思われる。
 次世代自動車振興センターは環境・エネルギー性能に優れた自動車の普及、促進を目的としている通り、充電インフラの補助金交付の受付をしている。
 また、近年日本は全国で災害に見舞われるケースが増えている。その中でEV車が災害時の給電支援活動を行った場面も記憶に新しい(図⑧)。同センターでは充電と給電が可能な、V2H(Vehicle to Home)充放電設備への補助も行っている。V2Hに関しては、令和3年度は法人のみ対象としており、条件によって補助金額は異なるが、申請期間は10月29日まで、設置工事完了後の実績報告が来年の1月31日までとなっている。
 今後、EV車の販売台数が増加する可能性を考えると自動車販売店に充電施設を備えることで地域貢献に繋がり、店舗の特長付けに成りえると思う。

■EVは中古車流通にも影響
 これまで新車販売を中心に話を進めてきたがが、前述の“脱炭素”は世界的な取組として中古車輸出にも影響を与えると予想される。
 NPO法人自動車流通市場研究所(栃木県小山市)の中尾聡理事長によるとニュージーランドで7月1日から低炭素型自動車の購入補助制度「フィーべイド」が始まったという。「フィーべイド」は、新たに登録される新車と中古車を含む輸入車のうち、EV車やPHV車を対象として(既にニュージーランドにある自動車及びHV車は適用外)購入を補助する制度。具体的には日本から輸入される対象の中古車には最大3450NZドル(日本円で約27万円)がキャッシュバックされるというもの。
 中尾理事長は「日本から輸入される中古車で、この対象となる代表格とすれば日産リーフが挙げられるが、そのリーフを巡って争奪戦が生じれば。相場に影響を及ぼす可能性がある」と話す。一方で「フィーべイドの財源として、来年1月1日から従来型のガソリン車やディーゼル車を購入する際には追加料金を徴収し、それを充てるとしている。現時点では具体的な車種やどの程度の負担になるかは判明していないが、恐らく二酸化炭素の排出量の多い車の負担が重くなると思われる」という。
 中尾理事長の話からも“脱炭素”に向け、新車に限らず中古車にも影響を及ぼすと思われる。

 “脱炭素”に向けた世界各国の取組み、自動車メーカーのEV戦略について紹介してきたが、今後、自動車業界がどうなるかの見通しは立てにくい状況が続くと思う。
 トヨタ自動車豊田章男社長は現在を「100年に一度の大変革期」と称し日本の自動車産業を守る意味でも危機感を露わにしている。私の周りにも「現在」を「あの時が転換点だった」と振り返る時代が来るだろうと話す人も多い。それだけ「現在」に起きている変化は従来の在り方から激変する可能性が高いと言える。
 ただ、中古自動車販売業界は他業種他業界と比較しても時代の変化に素早く対応してきた業界と感じている。展示場づくりや接客、近年ではIT化の推進など、他業種の好事例や時代で推奨されるサービスや商品を取り入れ、自分たちのオリジナルへと昇華させ、営みを続けてきた。月並みな言葉になるが「変化に対応できる者が強い」と言われるように今後を見据えた取組みが求められる時代だと思う。

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