HAA神戸(神戸市中央区)は、8月21日に開催した「新館オープン9周年記念AA」において、今期最高の59・1%の成約率を記録した。全国的に商品車不足が顕著となっており、特にメーカー系AA会場などでは成約率70%を超える実績を叩き出すところも見受けられる。そういった会場の数値と比べると「59・1%はたいした数字ではない」と思うかもしれない。しかし、数字だけで優劣を単純に比較できない。【日本有数の巨大会場に成長】 開催平均8000台超を集荷する同会場。出品店の内訳は、一般の専業者、ディーラー、業販店に至るまで多種多様。黎明期に「流通委員制度」を導入し、集荷という「販促活動」を能動的かつ強力に促進。「車が集まるからバイヤーが集まる。バイヤーが集まるから車が集まる」という好循環が発生。多くの車と人が集まる利便性の高い会場づくりに成功した。また、数年前から一般会員を対象とした出品台数約定システムである「ゴールド出品会員」制度を導入。会員規模を問わず、広く出品を得ることに成功している。【中古車版ロングテール・マーケット】 同会場の特徴といえるのが「ロングテール」。テールとは動物の尻尾のこと。尻尾の根元は太いが、後ろにいくにつれ次第に細くなる。グラフに置き換えると横軸は品目数、縦軸は販売数量となる。「ショートテール」の身近な例は「コンビニ」。限られたスペースに売れ筋商品を「広く・浅く」並べることで、効率的な経営を実践している。消費者にとっては、普段はコンビニで事足りていても、品揃えが少なくて困ることが必ずあるもの。そういったときに役立つのが専門店。ただ、専門店は「狭く・深く」が特徴。欲しいものを探して何軒も専門店をハシゴすることもある。「広く・深く」が実践できれば、あらゆる商品を手間なく見つけられ利便性が高い。それを実現したのが「ロングテール」型の店舗。ネット通販の「アマゾン」や、実店舗では鹿児島の「A‐Zスーパーセンター」などがその代表例として著名。 同会場は扱う品目が非常に多い。2000台規模の会場と8000台規模の会場を単純比較すると4倍だが、実際には同じ車種が複数出品されており、開催によっては10~20倍の品目差にもなることもある。大量の売れ筋車種はもとより、ドレスアップ車、輸入車、冷凍・冷蔵車、作業車、福祉車輌、消防車、霊柩車に至るまで様々なレアな車種が見つかる。これらは万人受けする売れ筋車ではないものの、会員にとっては、顧客から注文が入ったときに極めて心強い存在となる。 なぜ、レアな車が多数集まるのか。会場側がレアな車の集荷を強化しているわけではなく、出品店が自由意志で出品している。そこには、「果たしてこの車が売れるのだろうか」というようなレアな車は、多くの会員が集まる会場に出せば売れやすいという心理に加え、売れ筋車と比べ、レアな車ほど現車を確認して買いたいし、1台でも多く集まる会場のほうが、目的の車種が見つかりやすい、といったバイヤーの心理が効果的に作用していると考えられる。 会場にとっては、売れ筋車種主体のほうが成約率は向上する。売れ筋でない車種は売れるまで何度も流札する場合も多い。ただ、そういった点を差し引いても、豊富な品目が集まる会場は会員にとって利便性が高く、他会場にない強烈なアイデンティティとなる。「59・1%」は数字以上に価値ある実績といえる。(久保元)