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【バディカ連載 Ver.2.0】 005 商談は順番が9割

バディカ代表取締役・中野優作氏による新連載

●お客様に合わせたオーダーメイドの提案

 当初の希望と違う車を買って帰るお客様も多い。来店して見比べていくうちに考えが変わることがあるということだ。
「2人目の子供が生まれたからそろそろ軽自動車からミニバンに乗り換えようかな。お正月には家族で出かけるから7人乗れたら便利だろう」というお客様が来店した。こういったお客様は多い。家族が増えたタイミングでのクルマ選びだ。
 それでも、最終的にコンパクトカーになることがある。予算とタイミングの問題だ。実際にあった話を例に詳しく説明していこう。

 このお客様はご夫婦とも軽自動車を所有していて、ご主人は通勤、奥様は買い物程度に使っている。先月2人目のお子様が生まれたからミニバンに乗り換えようかなと来店された。奥様のワゴンRの車検が近いらしく、予算は現金150万だった。結論、買った車はトヨタのルーミーだ。ワゴンRを下取りに入れて乗り出し100万円のルーミーを買ってもらった。

 今ミニバンを買うと、中学校までは送り迎えが必要だから、15年は乗れる必要がある。でも、15年乗れそうなミニバンを150万円で買うのは難しい。それなら下のお子様が小学校に入学するまでの間は室内の広いコンパクトで十分だろう。それからミニバンに乗り換えようという判断になった。
 その方が維持費も安く抑えられるし、本当にミニバンが必要になるまで頑張って貯金してアルファードを目指そう。どうせなら子供たちが車の価値が分かる頃に、大きなクルマでドライブに行こうとなった。
 ミニバンとコンパクトの維持費は大きく違う。5年で20万円以上変わるだろう。これから子育てにもお金がかかるから少しでも手持ちの現金は残しておきたかったという奥様の希望を叶えられて、大満足してもらった。

●商談には要素分解が必要

 僕は営業会社に入社して、最初の2カ月は全く歯が立たなかった。初月は50件行って7台。成約率は12%。翌月も同じようなものだ。言われた事を言われたとおりにやったつもりだったが、とにかく決まらない。お客様とは仲良くなれる。いい感じでクロージングまで進む。だが決まらない。どんなに行っても全く売れなかった。
 そこから1年もかからず全国トップセールスになった。成約率は50%を超えるというところまで成長した。人ベースで考えれば成約率は9割を超えていただろう。では一体、何が変わったか?
 まずは「商談の順番」だ。地味なところからで申し訳ないが、これが最も重要だと覚えて欲しい。
スポーツで言えば準備運動をしていなければ試合でケガをする。体が温まって初めて最高のパフォーマンスが出せる。それと同じで商談にも準備運動が必要だ。初対面からクロージングまで、段階を分けて、順番に進んでいく事必要がある。
 僕はクルマを売るのが得意だけど、それより得意だったのは「売らせる事」だ。僕より売らせるのが得意な人は見たことがない。店長時代、売れない営業マンはとりあえず中野のところに送ればなんとかなると言われていた。

 実際に猫の手だと送られてきた2人をトップセールにして表彰台に上げたことも何度もあるし、数時間のロープレで何倍も売れる人間にしたこともある。
それが弊社に今いる社員だ。彼も中野再生工場の卒業生で、僕に出会うまでの彼は入社1年間鳴かず飛ばずだった。月間アベレージが7~8台で、10台売れるのは年に1度あるかないかだ。そんな彼も僕が数時間、1度ロープレしただけで翌月26台販売して、エリアでのトップ争いに食い込んだ。
 彼は典型的なパターンで、コミュニケーション能力も接客もユーモアも申し分ない。だが商談の組み立て方を完全に間違っていた。元々ポテンシャルが高い人は組み立てを変えるだけで驚くほど成果が上がることがある。
 僕から見れば、売れない営業にはパターンがある。
  ✔元気で愛想はいいが商談が組み立てられない。
  ✔お客様とは瞬時に仲良くなるが、最後に逃げられる。
  ✔ベテランで知識が豊富だが、警戒されて懐に入れず決まらない
 本当に様々な営業がいる。こういう人達には要素分解が必要だ。問題を売れないと一括りにするからおかしくなる。自分が今どこにいるのか分からなくり、動けば動くほど商談の迷路に迷い込む。
 
 今が商談のどの段階で、この段階では何を成し遂げるか、それで次にどう進めるかを判断していく。もう契約手前で決まる段階なのに、あれやこれやと確認してタイムアップになってしまうケースも何回も見てきた。料理のコースのようなものだ。メインディッシュを先に出されて最後にサラダが出てきても食べる気がしないだろう。順番を間違えてはだめだ。
「初めまして」から「契約」まで、お客様の半歩前を、一緒に歩きながら、相手のスピードに合わせながら、手を引いてゴールまで進んでいく事をイメージしてほしい。

 商談は、6段階に分けて考える。
  ①初対面-「安心感を与える」
  ②アイスブレイク 
  ③情報収集
  ④差別化
  ⑤車種選定
  ⑥クロージング

 初対面で注文書を出す人はいないだろう。商談の終盤のクロージングの最中に天気の話や世間話をする人もいない。何の合意もできてなくて契約する人はいないし、商談の大詰めで世間話をすると契約が流れるからだ。そんなことは分かり切ったことだと思う。
 だが、僕にとってはそれと同じぐらい分かり切った間違いを商談中にやっている人がこれまで多かった。お客様が来店してすぐに質問攻めを始めてアンケート攻撃をやっている会社は多いんじゃないだろうか?これはクルマに限ったことじゃない。住宅展示場や家電量販店でよくある。とりあえず見に行っただけの段階でこんな営業に捕まると最悪だ。
 予算は?希望のメーカーは?何にお悩みですか?と言われたところで答えようがない。予備知識がないからだ。今からそれを考えるのに、いきなり聞かれても答えようがない。どんどんテンションが下がっていく。
 クルマ屋で例えて、どうすればいいか考えてみよう。

 駐車場に誘導した瞬間、お客様が緊張して構えた感じがする場合は、即座に引くべきだ。ここはまず最高の挨拶だけすればいい。ご来店の感謝を伝えて、一旦自由に見させてあげるのがいい。
 この段階では「俺は敵じゃないし、売る気は全くないからごゆっくり」と無害な演出を完璧にする事に努めて、ホッとさせる。安心させるのが狙いだ。そうして展示場を案内して一旦離れてもいい。
 そうすればある程度自分の好みのコーナーに行って見始める。価格を表示してあるから予算とかけ離れているものは見向きもしないだろう。自分の予算範囲で探し始め、まずは目に留まるクルマの前で止まる。
 それから値段を見る。距離や年式を見て、次にも目に留まる車に行く。
 ここで初めに見た車より安いクルマを見に行くか、高くて新しいクルマを探すか?そのお客様の動きから予算や好みが見えてくる。そして次のクルマの前で止まった時。このあたりがチャンスだ。
 
 来店後3分程度、このタイミングで話しかける。
 考えてほしい。来店して警戒している人に即質問攻撃開始するのと、今のタイミングでそのクルマについて話すのとどちらが有効だろうか?
アンケートや情報収集なんかしなくても、その人の目の前にあるクルマが希望のクルマや予算に近いんじゃないだろうか。
 そもそもアンケートでやりたかったのはこれだろう。
 こういった商談での考え方を、次回は6段階に分けて説明していく。


<プロフィール>
中野優作(なかの・ゆうさく)氏。1982年3月香川県さぬき市生まれ。バディカ代表取締役社長。
中古車小売り大手で数万台を超える実戦経験で手腕を発揮したのち、2017年同社創業。最大手業販サイト、オートサーバーで「5ツ星認定」を受け、21年度「販売台数ナンバー1」(全国会員7万社中)に。「車の流通をもっと自由に、なめらかに」というミッションを持ち、圧倒的な努力と情熱で挑戦する。地元・香川の3店舗と千葉、兵庫、岡山、福岡の直営店に加え、初のフランチャイズ店を茨城と香川に2店舗オープン。趣味は「筋トレ」というストイックな側面は、事業への熱意や意識の高さにも通じる。

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