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【特集】消費増税と感染拡大からの 景気回復はいつ

各業界関係者の声を聞くとともに各種統計データから1年を振り返る

 昨年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられて1年が経過した。様々な景気落ち込みへの対策が取られたが、増税直後の10月~12月の国内総選(GDP)は7.0%減と大きな落ち込みを見せた。それ以上に、景気に大きく影響を与えたのは新型コロナウイルス感染拡大である。今年4月~6月のGDPの下落率は28.1%減と増税直後を大きく上回る結果だった。自動車業界においても、消費増税および新型コロナの影響は大きく、日本自動車販売協会連合会(加藤和夫会長)と全国軽自動車協会連合会(堀井仁会長)が10月1日に発表した2020年度上半期(4~9月)の新車販売統計によると、総台数は202万8540台(前年同期比22.6%減)となった。消費増税から1年、目まぐるしく変化する経済の中、新車・中古車販売、オートオークション、中古車輸出の各業界関係者の声を聞くとともに各種統計データから1年を振り返ってみた。


■新車登録台数:回復基調にあるもの依然前年割れが続く
 
 増税直後の2019年10月から20年9月までの1年間の新車販売台数(含軽)は444万5723台で前年の539万8069台と比較すると95万2346台、17.6%の減少となった。月別では、増税直後の10月は前年同月比7.1%と大きく落ち込んだが、翌月以降徐々に回復、3月は同90.7%と回復の兆しを見せた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が急速に広まり、全国を対象とした緊急事態前言が出された4月以降新車販売台数は急落、4月は同71.4%、5月は同55.1%と増税直後を大きく下回る結果だった。この時期は世界的に感染が拡大したことにより、自動車生産に必要な部品の供給が一時的に停止、工場の稼働率が大きく低下したことで、生産も大きく減少した。また、各ディーラー販売店においても、感染拡大を考慮し、来店誘致を目的とした営業活動を自粛したことで、各社販売台数が大きく減少、5月25日に出された緊急事態宣言解除後は回復を見せたものの、9月の新車販売台数については、同85.7%に留まっている。
 
 このような状況を受け、自動車関連団体担当者は「新車も中古車も増税前に多少の駆け込み需要があったものの10月以降は低調であった。その後新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて前年比マイナスが続いたが、6月には中古車が前年比で増加に転じた。新車についても需要は回復しているように見受けられるが、生産体制が完全ではないので需要に対して生産が追い付いていない面もあるようだ。今後については、コロナの収束状況にもよると思うが、ユーザーの購買意欲の高まりや各メーカーからの新型車投入に期待している」と考えている。また、国産ディーラー関係者は「緊急事態宣言解除後は展示車やテーブルのアルコール消毒、密を回避するためのソーシャルディスタンスの徹底や営業時間の短縮など感染対策を実施、また、折り込みチラシやWEBを活用した広告宣伝を復活させてことで、客足は元に戻りつつある。加えて新型モデルの投入により、少しずつではあるが、活性化が見えてきた」と今後に期待を寄せている。


■中古車登録台数:緊急事態宣言解除後前年超え

 日本自動車販売協会連合会発表の増税後2019年10月から20年9月までの中古車登録台数(普通・小型)は、前年同期比4.1%減の328万1434台と大きく下落した。新車販売台数は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で前年割れが続いているが、中古車登録台数は緊急事態宣言解除後に反転、5月は同18.0%減と大きく前年を下回ったものの、6月は前年同月比5.8%増、7月は同3.7%増、8月は同4.5%増と前年を上回った。しかし、9月は同2.1%減と前年割れとなり、上向きかけた流れに水を差す格好だった。

 このような状況下において、中古車の販売形態も大きな変化を見せた。新型コロナウイルス感染拡大により、従来の対面による販売から「ZOOM」等の双方向による映像通信や「LINE」などの写真やメッセージを活用したオンライン商談が急速に認知、利用拡大につながった。ただし新車販売の低迷は自動車流通業界に大きな影響を与え、市場の流通台数が減少、中古車販売における仕入れ困難につながった。

 業界団体関係者は「消費増税から一年が経過しようとするが、コロナの影響もあり単純に比較できない。ただ増税の影響というよりはコロナの影響で新車は12か月連続でマイナスという事実がある。今後もコロナが収束するめどがたっていないので新車については当面厳しい状況が続くのではないかと思う。中古車については新車が即納できないといった理由や割安感から移動手段として使うユーザーも増えてきているように感じる。前年比についても中古車としてはプラスになっている月もある。どちらにしても増税の影響というよりはコロナの影響が大きいといえると思う」と分析している。

 首都圏の中古車販売店は、増税後の業績について「大きな駆け込み需要も無く、可もなく不可もない状況。高額車両の販売は低調であったが、100万円以下の販売は好調。特に50万円以下の販売動向は活発であった。コロナ前後の業績推移については3月、4月は大幅な落ち込み。しかし定額給付金の配布以降の販売状況は上向き。給付金を頭金として使うケースも増えている。一方で小売向けの仕入価格が高騰し、売る車を揃えにくい状況が続いている。今後については、依然として仕入価格は高いが、10月に入り落ち着いてきた感もある。景気は予断を許さない状況であり、悪化すると現在仕入れている車が重荷になることも考えられる。コロナ次第のところもあるが、良くて現状維持であり市況は悪化する可能性が高いと思う」と話す。

 また、四国の新車・中古車販売店は「昨年10月の小売り市場(新車・中古車)は非常に重たい印象だった。新車市場が低迷したことで、中古車の発生も減少し、相場も上昇した。こうした中で、年明けから間も無くコロナウイルスが感染拡大し、4、5月は中古車相場が急落した。ここまで低調な印象だが、10月からは新車供給も軌道に乗り、11月以降は中古車流通も活性化してくるのではないだろうか」と増税から1年が経過し、新型コロナウイルスの感染も比較的落ち着いた現在、今後について期待する声もある。

 一方、「昨年10月以降、小売り市場は一気に落ち込んだ。増税前の8、9月の駆け込み需要以上に10、11月の落ち込み幅が大きかったため。想定以上の落ち込みだったが、当時は年明けから春先にかけて需要が回復すると見ていた。しかし、そうした状況下でのコロナウイルス感染拡大で、2、3月以降から4月いっぱいにかけてはドン底だった。5、6月になり、一転して小売り市場は活発になったが、夏頃からは失速の気配が出ている。
秋口からは、岡山の特殊要因として、2年前の西日本豪雨災害の影響が見られる。当時、『生活の足』として購入した中古車の乗り換え需要が出ている点だ。こうした動きにも対応すべく、小売振興キャンペーンを積極展開していきたい」(JU岡山 塩尻卓士会長・理事長)や「昨年の消費増税や新型コロナウイルス感染拡大の影響で会員は大きく疲弊している。今年3月に実施した小売販売促進活動の『JU石川の日』の2回目を来年3月に予定している。個社でキャンペーンを行なうことはなかなか難しいが、組合を通じて行うことで、規模が大きくなり、消費者への認知も高めることができる」(JU石川 宮本次彦会長・理事長)のように一部のJU商組において、会員支援を目的とした「小売振興に注力をする動きが出ている。

 新車販売と比較して、数字上ダメージが少なく見える中古車販売ではあるが、小規模の取扱店が多く、経営に与えるダメージは計り知れない。このような中、共有在庫による仕入れやオンライン商談を利用した販売方法など新しい取り組みに注目が高まっている。


 
■オートオークション・中古車輸出:AA出品台数・成約台数ともに前年を上回る

 2019年10月から20年9月までの全国オートオークション実績は、出品台数が前年同期比6.5%減の713万9277台、成約台数は同8.1%減の449万1907台、成約率は同8.8%減の62.9%だった。消費増税、新型コロナウイルス感染拡大は流通業界にも大きな影響を与えたことにより、出品台数、成約台数、成約率の全ての項目で前年を下回った。月別推移では、新型コロナウイルス感染拡大とともに市場の動きが鈍化、成約率低下にともなって再出品車両が増加、11月以降前年割れしていた出品台数は4月に0.2ポイント前年を上回った。しかし、緊急事態宣言解除後は、ユーザーの消費意欲回復とともに、販売も増加。各AA会場で在庫車を仕入れる動きが顕著となったことで、6月以降成約率が急上昇、前年を上回る実績となった。

 このような状況下において、関東地区AA会場関係者は「増税の影響を受け、出品車の集荷に苦戦。特に小売りに直結するクルマの確保は困難であり、成約率にも影響が出た。また、コロナ前は需要期を迎え盛り上がりつつあるタイミングであっただけにコロナにより大きく影響を受けた。特に4月、5月は来場禁止や先行きの不透明感から最悪とも言える状況であったが、3密回避の意識から良質の小売り向け出品車の応札は強く、外部応札であっても一定の引き合いはあった。緊急事態宣言解除以降は活発な小売市場の影響もあり、6月以降はタマ不足が続きながらも成約率は上昇。また、輸出も一部地域で動き始め、思いの他活発な取引を受け、業績にも好影響をもたらしている。依然とタマ不足は続いており、成約には好影響を与えているが、今後は不透明。新車の納車が進んでいくと代替車も増え、現在の成約率を維持していくのは困難と思われる」と話す。

 また、「昨年9月末にかけては、消費増税前の駆け込み需要などもあり、バイヤーの痒い意欲が非常に高かった。一方で、増税後は一気に市場が冷え込み、中古車流通もダブついた印象だった」(関西地区AA関係者)。「昨年10月の消費増税では、2014年の増税時に比べると、それほどのインパクトは感じなかった。駆け込み需要も少なく、低調な印象だった。こうした中で越年したが、間も無くコロナの衝撃が走り、低水準のまま、ここまで推移してきた状況。経済も低迷する中で、AA開催も山場を作れない状況が続いている」(九州地区のAA会場関係者)と話すように、全国のAA会場で消費増税と新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく出ている。

 一方、中古車輸出においても、AA市場同様に大きな影響が出ている。大手輸出関係者は「コロナ前の1月までは前年並みに推移。世界的に感染拡大となった2月以降は、輸出仕向け地がロックダウン(都市封鎖)の処置を行ったため、輸出は完全にストップ。港に船が着いても税関が閉じているため、現地での積み上げ手続きができず輸出台数は大幅に落ち込んだ。しかし、6月以降は世界各地でロックダウンも解除され、一部地域では急速に輸出も回復。前年同期水準に届かないまでも、かなり持ち直してきた状態」と語る。 

 「増税後、コロナ禍においても海外での日本で発生する中古車の需要は高いものの、日本国内のAA相場の高騰や海外現地での新型コロナウイルスによるバイヤー予算の低下より、海外の多数の国で実際の売買に関しては比例して伸びていない状態がある。 今後の見通しについては、今のところリーマンショック時のような輸出にとって為替の大幅な円高がないため、中古車流通がある程度正常化してくると輸出台数は回復してくると思われる」(中古車輸出コンサルタント代表)と今後については回復基調の予測を立てている。

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