【大重税時代に突入】
政府税調は昨年の12月8日、2011年10月からの地球温暖化対策税(環境税)導入を決めた。経産省は同会合で輸入原油や天然ガス等にかかる石油石炭税を現行の1・5倍に増税する具体案を提示、家庭への影響については標準世帯で電気料金が月額34円、都市ガスが同10円の負担増になると試算している。
経産省案によると、今回導入が決まった環境税は二酸化炭素(CO2)排出抑制を目的に、石油石炭税を2011年から段階的に増税するというもの。最終的な引き上げ幅は、原油・石油製品1キロリットル当たり790円増、現在2040円のものが2830円になる。ガソリンや軽油、灯油は、それぞれ1リットル当たり0.79円の負担増となる。
自動車業界に限らず、現在、日本の経済・社会・自動車業界は、大きな転換点に差し掛かっているように感じる。日本漢字能力検定協会が発表した、2010年を表す漢字は「暑」だったが、エコカー補助金に振り回された中古車業界は、まったく逆の「寒」であった。
【新車市場・低価格のエコカー以外は苦戦する】
新たにスタートした2011年は、まさに「五里霧中」だ。新車販売の回復がない限り、中古車業界の繁栄はあり得ない。
EV車の分野では、昨年12月に日産が発売した「リーフ」が、どこまで販売台数を伸ばせるかに注目しているが、価格は税込で約376万円から、国からのEV補助金(78万円)を適用しても約298万円からと価格が高く、さらに1回の充電で走行できる距離が160㎞と短い上に、街に充電設備が無いなど課題も多い。増税による石油価格の上昇で、ユーザーの低燃費志向が更に高まることは予想されるものの、EV車が国内で普及するには、まだまだ相当の時間を要すると考える。
一般消費者にはトヨタ「プリウス」を筆頭に、今年発売を予定している1リットル当たりの走行距離が40㎞となる新型ハイブリット車やホンダのリチウムイオン電池を搭載する「シビックハイブリッド」、マツダの1リットル当たり30㎞の低燃費を実現するという新型「デミオ」等、EV車と比較して価格が安いハイブリット車がヒットするだろう。
いずれにしても車は「低燃費」「低価格」「エコカー」が、今年も重要キーワードになる。
【中古車流通の変化】
中古車流通の主流であるオートオークション(AA)。全国のAA会場における出品台数の合計は、2008年の約875万台をピークに減少の一途を辿っている。翌2009年は約693万台(前年度比21%減) に減少、そして2010年は約650万台( 約7%減)になる見込みだ。
2011年も前半までは、各メーカーの新型ハイブリットカーの発売車種が少ない為、下取り車の増加による流通増への期待は薄いが、耐久消費財である車は車検・買い替え・転勤・事故等、売買需要は絶え間なく発生しており、一定の流通量は見込めると考えられる。
近年、国内のAA会場ではネット検索が普及、販売店では注文販売が主流となり、店頭在庫を仕入れる大口落札店が減少している。昨年、JU福岡がFAS(社団法人福岡県自動車整備振興会)と提携し、整備事業者の獲得に取り組んだように、ネットサービスの充実だけではなく、新たな会員開拓策が、今後の勝負の分かれ目となる可能性もある。
また、昨年12月には荒井商事が、世界最大のAA運営会社である米国マンハイムオークショングループの子会社と提携したことも、大きな話題となった。同社は1ドル83円という円の独歩高を追い風に、国内では仕入れが難しい車を海外から直接仕入れることができる仕組みを実現した。米国においては、GMが復活を機に小型車を強化する可能性があることや、現代(ヒュンダイ)車が売れていること等から、日本において割安な輸入車の人気が高まる可能性が
ある。実績次第だが、利用が増えれば他会場との大きな差別化(強み)となる。
一方、JUCがJU中販連の協力の下で進めるセリシステムの共有化が1月11日開催のJU埼玉からスタート。JU札幌・JU函館も14日から稼動する。AA会場の大幅なローコスト運営と、高い成約率が見込まれており、今後導入を予定する会場を中心にその成果と課題に、AA業界の注目が集まっている。
全国の中古車業者の商いに欠かせないAA会場。これまでセリシステムと会場間のネットワーク化を追及してきた各会場の次なる一手に注目したい。
【中古車小売市場動向】
20年以上低迷してきた国内経済は、未だに本格的な回復の軌道に乗っておらず、慢性的なデフレが続いている。昨年は「100年に一度の不況」といわれ、エコポイントの減額やエコカー補助金の終了と同時に、景気後退が加速するという負のスパイラルに陥った。
一昨年、中古車販売店では「商談が長引きなかなか決まらない」「審査基準が厳しく、ローンが通らない」等、顧客は来店するが販売するのに苦労するといった話が多く聞かれたが、昨年は状況が様変わりし、「ユーザーの来店が急減した」との声が多く聞かれた。来店が激減した最も大きな理由は、国の補助金により結果的に大幅な値引きとなった新車の「お得感」と「エコ」によって、中古車最大の武器である「割安感」が打ち消されてしまったことであった。
しかし、ユーザーニーズを分析し、社員の接客教育と商品車の品質にこだわり、丁寧な対応で接することができている店の販売は落ち込んでいないと聞く。官製中古車不況と言えばそれまでだが、自力本願(工夫次第、努力次第、情報分析次第)で、販売を伸ばす店も存在する。
JU中販連は、今の接客対応に問題があると判断し、販売士の資格制度導入に着手し、消費者が安心して中古車が買える店を目指す。その「成果」に期待したい。長引く不況で消費者の財布の紐は固く、中古車を売るのは容易ではない。2011年、今までの売り方(考え方)ではユーザーに中古車を買ってもらえない、さらに難しい時代になる。
(発行人・倉元進)
政府税調は昨年の12月8日、2011年10月からの地球温暖化対策税(環境税)導入を決めた。経産省は同会合で輸入原油や天然ガス等にかかる石油石炭税を現行の1・5倍に増税する具体案を提示、家庭への影響については標準世帯で電気料金が月額34円、都市ガスが同10円の負担増になると試算している。
経産省案によると、今回導入が決まった環境税は二酸化炭素(CO2)排出抑制を目的に、石油石炭税を2011年から段階的に増税するというもの。最終的な引き上げ幅は、原油・石油製品1キロリットル当たり790円増、現在2040円のものが2830円になる。ガソリンや軽油、灯油は、それぞれ1リットル当たり0.79円の負担増となる。
自動車業界に限らず、現在、日本の経済・社会・自動車業界は、大きな転換点に差し掛かっているように感じる。日本漢字能力検定協会が発表した、2010年を表す漢字は「暑」だったが、エコカー補助金に振り回された中古車業界は、まったく逆の「寒」であった。
【新車市場・低価格のエコカー以外は苦戦する】
新たにスタートした2011年は、まさに「五里霧中」だ。新車販売の回復がない限り、中古車業界の繁栄はあり得ない。
EV車の分野では、昨年12月に日産が発売した「リーフ」が、どこまで販売台数を伸ばせるかに注目しているが、価格は税込で約376万円から、国からのEV補助金(78万円)を適用しても約298万円からと価格が高く、さらに1回の充電で走行できる距離が160㎞と短い上に、街に充電設備が無いなど課題も多い。増税による石油価格の上昇で、ユーザーの低燃費志向が更に高まることは予想されるものの、EV車が国内で普及するには、まだまだ相当の時間を要すると考える。
一般消費者にはトヨタ「プリウス」を筆頭に、今年発売を予定している1リットル当たりの走行距離が40㎞となる新型ハイブリット車やホンダのリチウムイオン電池を搭載する「シビックハイブリッド」、マツダの1リットル当たり30㎞の低燃費を実現するという新型「デミオ」等、EV車と比較して価格が安いハイブリット車がヒットするだろう。
いずれにしても車は「低燃費」「低価格」「エコカー」が、今年も重要キーワードになる。
【中古車流通の変化】
中古車流通の主流であるオートオークション(AA)。全国のAA会場における出品台数の合計は、2008年の約875万台をピークに減少の一途を辿っている。翌2009年は約693万台(前年度比21%減) に減少、そして2010年は約650万台( 約7%減)になる見込みだ。
2011年も前半までは、各メーカーの新型ハイブリットカーの発売車種が少ない為、下取り車の増加による流通増への期待は薄いが、耐久消費財である車は車検・買い替え・転勤・事故等、売買需要は絶え間なく発生しており、一定の流通量は見込めると考えられる。
近年、国内のAA会場ではネット検索が普及、販売店では注文販売が主流となり、店頭在庫を仕入れる大口落札店が減少している。昨年、JU福岡がFAS(社団法人福岡県自動車整備振興会)と提携し、整備事業者の獲得に取り組んだように、ネットサービスの充実だけではなく、新たな会員開拓策が、今後の勝負の分かれ目となる可能性もある。
また、昨年12月には荒井商事が、世界最大のAA運営会社である米国マンハイムオークショングループの子会社と提携したことも、大きな話題となった。同社は1ドル83円という円の独歩高を追い風に、国内では仕入れが難しい車を海外から直接仕入れることができる仕組みを実現した。米国においては、GMが復活を機に小型車を強化する可能性があることや、現代(ヒュンダイ)車が売れていること等から、日本において割安な輸入車の人気が高まる可能性が
ある。実績次第だが、利用が増えれば他会場との大きな差別化(強み)となる。
一方、JUCがJU中販連の協力の下で進めるセリシステムの共有化が1月11日開催のJU埼玉からスタート。JU札幌・JU函館も14日から稼動する。AA会場の大幅なローコスト運営と、高い成約率が見込まれており、今後導入を予定する会場を中心にその成果と課題に、AA業界の注目が集まっている。
全国の中古車業者の商いに欠かせないAA会場。これまでセリシステムと会場間のネットワーク化を追及してきた各会場の次なる一手に注目したい。
【中古車小売市場動向】
20年以上低迷してきた国内経済は、未だに本格的な回復の軌道に乗っておらず、慢性的なデフレが続いている。昨年は「100年に一度の不況」といわれ、エコポイントの減額やエコカー補助金の終了と同時に、景気後退が加速するという負のスパイラルに陥った。
一昨年、中古車販売店では「商談が長引きなかなか決まらない」「審査基準が厳しく、ローンが通らない」等、顧客は来店するが販売するのに苦労するといった話が多く聞かれたが、昨年は状況が様変わりし、「ユーザーの来店が急減した」との声が多く聞かれた。来店が激減した最も大きな理由は、国の補助金により結果的に大幅な値引きとなった新車の「お得感」と「エコ」によって、中古車最大の武器である「割安感」が打ち消されてしまったことであった。
しかし、ユーザーニーズを分析し、社員の接客教育と商品車の品質にこだわり、丁寧な対応で接することができている店の販売は落ち込んでいないと聞く。官製中古車不況と言えばそれまでだが、自力本願(工夫次第、努力次第、情報分析次第)で、販売を伸ばす店も存在する。
JU中販連は、今の接客対応に問題があると判断し、販売士の資格制度導入に着手し、消費者が安心して中古車が買える店を目指す。その「成果」に期待したい。長引く不況で消費者の財布の紐は固く、中古車を売るのは容易ではない。2011年、今までの売り方(考え方)ではユーザーに中古車を買ってもらえない、さらに難しい時代になる。
(発行人・倉元進)