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【バディカ連載 Ver.2.0】009 情報収集で「選択肢」を増やす

バディカ代表取締役・中野優作氏による新連載

 アイスブレイクの次は情報収集だ。この段階では、お互いの緊張関係もほぐれて、お客様の好みやこだわる部分などの情報がすでに入ってきているはず。勘違いして欲しくないのは、先ほどのアイスブレイクと、この情報収集はグラデーションに混ざり合っている。

 アイスブレイクが終わって、さて、これから情報収集するぞ!といきなり戦闘モードに入ってはお客様も構えてしまうだろう。折角ほぐれた緊張が元通りになってしまう。アイスブレイクから流れるように進んでいこう。

 この段階での目的は情報収集により、「提案の幅を広げ、選択肢を増やす」事だ。聞きたいポイントは4つ。ライバル、時期、車種、予算だ。すでに大手販売店でお勤め方は聞いた事あるだろう。

 だが、聞き方がまずい事が多い。聞けばいいって問題じゃない。

 ご予算おいくらですか?と聞いて、92万円!という人はいないだろう。100万円。200万円のように切りのいい数字を言う。その事自体は全く問題ないが、その出て来た数字に振り回されて、提案の幅が狭まる事がある。

ホンダ「NBOX」を例に説明しよう。
5年落ち、走行5万km、シルバー  100万円
4年落ち、走行2万km、黒     110万円
 この2台が並んでいればどちらを買うだろうか?恐らく10人お客様が来店すれば黒の110万を10人中7人は買うだろう。それなのに初めに予算を聞いて、じゃあ100万円以内で探しましょうと言ってしまうと提案から外れて事も多い。情報収集は提案を狭める為にやるわけじゃない。あくまで、提案の幅を広げて、お客様の選択肢を増やすために行うものだと理解しておこう。
 
 <会話の突破口は2パターン>

 まずは、乗り換えか?増車か?から入っていく。
 どちらのパターンだとしてもこの段階での目的は「情報収集」。提案の幅を広げ、お客様の選択肢を増やすという目的を達成するために、相手の考えを肯定しつつ引き続き相手のリズムに合わせて進めていこう。
 どのように進めていくか具体的に書いていくが、流れが重要なので会話形式で進めていく。流れるように、ライバル、時期、車種、予算。だいたいの雰囲気を掴んでいくことを目標とする。ここで注意してほしいが、ここからのセリフを読むと無機質に感じると思う。言葉を削って書いてあるからだ。

 実際の現場では抑揚を付けて、細かく相槌を打ちながら、お客様のテンポに合わせて、お客様の乗って来たクルマの前で話したり、展示場を歩いたり、クルマを前にしたり、身振り手振りを使って会話していると想像してほしい。

 【乗り換え】 10年落ちのワゴンRに乗って来られた場合

営業 「こちらのワゴンRから乗り換えられるんですか?」

お客様「うん。そうだよ。」

営業 「見た感じまだまだ走れそうですけどね。」

お客様「いやもう車検も近いし、結構距離も乗ったしね。」

営業 「車検はいつまでなんですか?」

お客様「7月だよ。」※3か月後

営業 「近いですね。走行距離はどれぐらいですか?」

お客様「9万キロ超えたぐらいかな。」

営業 「まだ9万kmなんですね。査定額も全然ありそうですね。」

お客様「え?そうなの?結構ぼろいよ。」 

営業 「全然いけますよ。ワゴンRは人気ですから。」

お客様「そうなの?下取りつかないと思っていたよ。」

営業 「まだ査定はされてないんですね?」

お客様「うん。まだ今日初めてクルマ見に来たからね。」

営業 「有難う御座います。インターネット見てきてもらったんですか?」

お客様「うんそうだよ。安いのが何台かこのお店で出てきて」

営業 「うれしいです。ちなみにワゴンRはいつ買われたんですか?」

お客様「6年ぐらいかな。車検付きを買って、次の車検が6回目だからね。」

営業 「買ったお店には見に行かれてないんですね。」

お客様「担当者が辞めてもういないからね。車検も他で出してるしね。」

営業 「そうなんですね。じゃあ後で査定もしてみますね。」

お客様「うん。お願いします。」

営業 「ちなみに次乗りたいクルマは決まってるんですか?」

お客様「次は広いのがいいかな。タントとかどうなんだろう?」

営業 「タントいいですよね。見てみましょう」「予算はこれからですか?」

お客様「特に決めてないけど、100万までかな。」

こんな感じで十分だろう。もうこれで状況は想像がついた。この会話に必要な時間は3~5分。これで欲しい情報はすべて手に入っている。 整理してみよう。今集まっている情報はこのあたりだ。

①ライバル 現時点ではいないが中古車情報誌掲載店がライバルになりそう

②時期   3カ月以内。急いではいないが車検までには乗り換えたい

③車種   室内空間の広いクルマだがこだわりはない。

④予算   100万。おそらく前回はもっと安く買っている。

 そして、会話の中から、売れる営業マンは提案する車種をそろそろ想像し始めているだろう。この事前に集まった情報から、お客様の好みは見えてくる。

 中古車を買うお客様は許容できない距離、予算があり、お得だと自分が感じる年式や距離のゾーンがあり、毎回同じような買い方をする人が多い。新車を買って毎回3年で乗り換える人や、未使用車を買って乗り潰す人や、3万キロ以内を買って10万キロで手放す人や、100万の予算で毎回探す人や、50万円現金一括まで!という人。

 今回のお客様は推察するに、前回買ったワゴンRは3年落ちで3万キロ、当時の売値で80万円ぐらいで買っているだろう。

 当時もタントは存在したが買ってない事を考えると、20万円安いワゴンRを選んだかそこまで強いこだわりはないだろう。今回も3万km以内でタントを探すと予算100万円を超える。場合によっては予算も上げるだろうが予算が増やせない場合は年式や距離を妥協するか、嫌そうならekスペースをお薦めしてみる。三菱が嫌と言われたら、デイズルークスの100万円とタントの110万円で比較してもらおうかな。

 これが営業マンの頭のシナリオだ。

 もちろんこれ通りに行かないだろう。タントが売れるかもしれないし、eKスペースだってありうるし、ワゴンRを買うかもしれない。重要なのは商談を組み立てられるだけの「情報収集」ができた事だ。
初対面からアイスブレイク、この情報収集まで実際にクルマを見せながら10分も経過してないだろう。これが重要だ。流れるようにここまで進もう。

 この段階での目的は、情報収集により「提案の幅を広げ、選択肢を増やす」事だ。必要な情報は集まった。これぐらいが丁度いい。なぜここのぐらいの情報でいいかと言うと、クルマ選びには正解がないからだ。よく販売現場のマネージャーや、経営者の社長と話していると、まるでお客様が求めているクルマに正解があるかのように考えている人が多いが、そんな筈はない。

 いままで新車しか買ってこなかった人でも、1年落ちで50万円価格差が出るなら中古でもいいなと売れた事もあるし、初めは何でもいいから予算重視で探してと言っていたお客様が展示場にあるクラウンを一目惚れして買う事だってある。電動スライドドアがマストだと話していたが、価格差を見るとワゴンRで十分じゃん。となることだってある。

 だから、このパートではそこまで絞り込む必要はない。質問攻めはお客様のテンションは下げる。熱が冷めない間に次の展開につなげていこう。

 競合(ライバル)についての質問だ。
「以前購入されたお店で、対応に不満はなかったですか?」
 ここから次の展開に移っていこう。

【プロフィール】
中野優作(なかの・ゆうさく)氏。1982年3月香川県さぬき市生まれ。バディカ代表取締役社長。
中古車小売り大手で数万台を超える実戦経験で手腕を発揮したのち、2017年同社創業。最大手業販サイト、オートサーバーで「5ツ星認定」を受け、21年度「販売台数ナンバー1」(全国会員7万社中)に。「車の流通をもっと自由に、なめらかに」というミッションを持ち、圧倒的な努力と情熱で挑戦する。今年1月には「バディカダイレクト」を発表したばかり。趣味は「筋トレ」というストイックな側面は、事業への熱意や意識の高さにも通じる。

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