【特集】どうなの中東危機・ナフサショック⁉自動車流通業界への影響は⁉ - グーネット自動車流通

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【特集】どうなの中東危機・ナフサショック⁉自動車流通業界への影響は⁉

コラム 2026年05月28日
「ナフサショック」が自動車流通業界を直撃、サービスの価値を見直す新たな出発点にも

 連日のようにメディアを騒がせている「中東危機」。トヨタ自動車が発表した2027年3月期業績見通しにおいても、営業利益は前期比20.3%減の3兆円という見通しだ。「新たに加わった中東影響を吸収しきれず、減益」とするもので、連結販売台数見通しが同0.1%増の960万台と堅調を維持する一方で、営業面と製造原価などで、中東情勢による影響として6700億円の損失を見込んでいて、営業収益はわずかに伸ばしながらも、大きな減益を見通す。自動車業界のトップ企業の業績見通しにも表れるように、今期の自動車業界を取り巻く環境は大変厳しくなっている。自動車流通新聞では、新車・中古車販売、自動車整備、鈑金・塗装などを営む事業者に「ナフサショック」による影響などをヒアリングし、現状を探った。 (室田一茂)

【ナフサ由来の製品は多岐にわたり大きな懸念】
 中東危機によるホルムズ海峡封鎖の影響は多岐にわたるが、とりわけ自動車業界が直面しているのが「ナフサショック」に他ならない。ナフサとは、石油製品の一つで、LPガス留分の次に沸点が低く軽い留分。ナフサからは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン・キシレンといった「石油化学基礎製品」が作られる。これらの基礎製品からプラスチックや合成繊維、合成ゴム、合成洗剤、塗料などの原料となる「石油化学誘導品」(中間製品)が生産される。この中間製品は関連産業の工場で様々な製品に加工される。自動車業界に関わりがある製品は自動車の樹脂パーツやシート、内装、塗料やエンジンオイル(化学合成油)、シンナーなどが挙げられ、原油の供給不足がナフサ不足をもたらし、そこから派生するあらゆる製品の供給不足をもたらしているという連鎖的な構造だ。経済産業省の資料によると、日本国内のナフサ調達は、原油から国内工場で精製されるものが4割。中東ナフサが4割、それ以外が2割という状況。今回の中東危機によって、原油の調達が難しくなっていることはもちろん、中東産のナフサも滞り、現在のところ、原油やナフサの代替調達先からの輸入が始まるまで、絶対量が不足することは明らかだ。

 特にシンナーの入手は困難になっており、建設業界ではすでに大きな痛手となっている。塗料やシンナーの不足により、工事の中断や中止が頻発しているという。ホームセンターなどに足を運んでもこうした製品は枯渇している状況だ。大阪府の中古車販売店は「知り合いの建設業者からシンナーの入手を依頼され、既存取引先に追加発注を依頼したが、従来からの取引量以上の発注に対しては『納期未定』という不確定な発注しかできない状況」だという。大規模なビルや商業施設などの建設現場は、大手ゼネコンなどが材料を確保、戸建住宅の新築やリフォームなどに関連する業者の手元に、塗料やシンナーが行き渡らないような「目詰まり」を起こしているという。

 一方で政府は、原油やナフサの代替ルートでの調達を進め「ナフサ由来の化学製品の供給は年を越えて継続できる見込み」(高市早苗総理)としている。

 自動車業界においても、この「目詰まり」が起こり、とりわけ自動車整備、鈑金・塗装の分野で、製品の不足が顕著に表れてきた。各分野の最前線から「現場の生の声」をまとめた。

 中東危機による原油・ナフサ不足の状況はいつまで続くのだろうか?経済産業省が発表した原油調達数量について、昨年は1カ月あたり239万バレルだった。一方でホルムズ海峡封鎖後の今年4月は59万バレルに急減、政府による備蓄放出でしのぎ、何とか乗り切った状況だ。5月はホルムズ海峡経由以外の中東地域からの調達と合わせ、アメリカ合衆国やその他地域から代替調達したことで、備蓄放出は大きく減少したが、調達できたのは140万バレルだった。6月はアメリカからの輸入がさらに拡大し165万バレル以上まで引き上がる見通しを立てているという。アメリカとイスラエルによるイラン攻撃後、急に蛇口を閉じられた状態だったが、徐々に増えている状況は認識しておきたい。もちろん、ナフサは製品として輸入されるものもあるので、原油とナフサの調達量は必ずしもリンクしていないが、概ね同様の状況が続いている。ガソリン不足は早々に反応があったものの、ナフサは国内に輸入された原油の精製過程で同時に作られる「連産品」の一つなので、1カ月程度の時間差で供給不足の状況が表れたことも頷ける。その上で、供給安定化には無理な買い占めやまとめ買いを無くすことが特に重要だ。

 現在、自動車業界では、連日のように報じられる「ナフサショック」により、エンジンオイルやブレーキフルード、シンナー、塗料、パテ、マスキングテープ、ビニールシートなどの不足が際立っている。3月以降、急激に供給が止まったことで「流通段階での出荷調整や一部業者の買い占めなどで、品薄の状態に拍車をかけている」(中国地区の中古車販売店)という見方もある。肝心の原油調達自体は、4月の59万バレルから6月は165万バレル以上ということなので、単純に約3倍の調達量(備蓄放出除く)に増大、昨年の1カ月あたり調達量に近づいており、供給量が全く回復しないという状況には陥らないと思われる。少なくとも6月頃までは商品確保が難しいと見られるが、恒久的なことではないので、しっかりとした基盤を作らなければならない。高騰したエンジンオイル価格などを受け、ユーザーの納得を得ながら、値上げなどの判断もしていかなければならない。

【新車・中古車販売・AA】
 自動車流通新聞によるヒアリング結果を見ると、車販自体にはあまり影響が出ていないという声が大半だった。一方で「シンナー不足により塗装作業ができなくなる可能性があるとの懸念の声が自社BP工場から上がっている。そうなれば下取り車の流通が滞る」(近畿地区の新車ディーラー)や「シンナー不足の影響などが顕著なので、鈑金・塗装(BP)が必要な中古車の仕入れを極力さけている」(九州地区の中古車販売店)という声が上がっている。

 各AA会場においても「加修が必要なクルマへの応札が確実に弱まっている。これまで加修して商品化していた中古車の動きが特に弱まっている」(近畿地区のAA会場)という。また、こうした動きとは別で「ホルムズ海峡の閉鎖によりUAE向けの船が日本に戻ってきている。船に載せたままや保税ヤードに置いたままにはできず、AAに再出品している。輸出向け中古車の相場が下降傾向にある。AA出品は状況を見ながら台数調整している」(東海地区の中古車販売店)という中で、全国AA会場の出品台数は記録的な高水準にある。

【自動車分解整備】
 自動車整備業界においては、とりわけエンジンオイル、ブレーキフルードなどの油脂類の不足が顕在化している。日本自動車整備商工組合連合会(整商連)関係者によると「4月は前年以上の注文が寄せられている。各メーカーでは基本的に前年実績ベースで当年の生産量を決めるため、4月の受注殺到で生産が追い付かない状況。5月に生産予定だったものを前倒ししている状況なので、受注は一旦ストップしている。『足りなくなるのでは?』という強迫観念に駆られての受注殺到と見られる」(取材協力=プロトリオス)という見解だ。

 こうした状況に全国の自動車整備事業者では「今のところ確保は出来ているものの、エンジンオイルの在庫が減少している。(中東危機前)年初に管理客向けにオイル交換無料キャンペーンを発信したばかりなので、キャンペーン自体を取り止めた上で、価格上昇によるユーザーへの値上げも必要になる」(大阪府の自動車整備事業者)、「エンジンオイル、ブレーキフルードを含め、オイル関係全般が不足傾向。メーカー系部販会社からの供給も厳しい状況」(関東地区の自動車整備事業者)、「整備分野ではブレーキオイル、エンジンオイルなどの油脂類が入らない。この状況が続けば、オイル類のメンテナンス作業も来月にもできなくなる可能性がある」(広島県の中古車販売・整備業者)、「一般的なエンジンオイルが手に入らず、高価格帯のものしか入らない状況。お客さんが価格についてこれない。自分でオイル交換をしようとして失敗したというレッカー依頼も2台あった。車検の際のブレーキフルード交換も商品が入ってこないことが心配」(鹿児島県の中古車販売店)という状況だ。

 また、こうした中でも「ディーゼル車のオイルが少ない。ディーゼル車のオイルの場合、規格が違うと故障の恐れがあり、粘度は変えられても代わりが利くオイルが少なく苦労している」(同)と、かなりひっ迫した状況がうかがえる。各社ともオイル類の必要在庫を何とか確保しようと動いているが、先を見通せない状況に不安感を募らせている。

【自動車鈑金・塗装】
 今回のヒアリングを通じて、最も事態が深刻化しているのは、鈑金・塗装(BP)分野だろう。大半の事業者が塗料自体というより「シンナー」の不足を嘆く声が多かった。「シンナーの入荷状況が悪く、あと1カ月で在庫切れ。入荷が無い場合、一時的にBP工場を閉鎖する予定。関西方面は特に厳しいらしく、最近京都のユーザーからの入庫があった」(東海地区でBP工場を持つ中規模販売店)、「自社は直接影響を受けていないが、指定先BP工場の話ではシンナーの価格が2~3倍に跳ね上がり、仕入れ数量も制限されているという。パテも同様で、じわじわと影響が出ている」(関東地区の大手中古車販売店)、「塗装用のシンナーも全く入ってこない状況で、すでに仕事をセーブ(制限)しないと厳しい状況にある。値段が上がることもしんどいが入手不可で作業ができないことはもっと痛手」(岡山県の自社BP工場を持つ中古車販売店)と、厳しい現実にされされている。「塗装の際のマスキング保護シートも入らず、在庫が今月中に無くなるかもしれないという状況」(広島県の自社BP工場を持つ中古車販売店)だという。

月刊ボデーショップレポートなどの専門誌を発行するプロトリオス社の記者からの話を整理すると、

①シンナーは一斗缶(16㍑)ではなく小分け(4㍑)のみの販売制限が続く。
②現状のシンナーの値上げ幅は150~180%。
③現場では塗料の不足感よりもシンナー不足の方が困っている。
④シンナーの入手状況は二極化。地域性や取引先によって左右される様子。
⑤シンナーリサイクラーがヤフオク!などで高額販売され、購入できず。廃シンナーの再利用もままならない状況にある。

という厳しい状況が浮かび上がる。

 こうした中で、われわれ業界が考えなければならないのは「この供給不足の状況は恒久的には続かない一時的なものである」という落ち着いた認識を持つこと。ホルムズ海峡封鎖の影響で急減した原油調達だが、その影響が少し時間差となって表面化しているものの、政府による原油やナフサの代替調達の動きは確実に中東危機前の調達量に戻そうとしている。ただし、代替調達先がアメリカ産などになるため、価格面ではこれまでの中東産を上回ることが明らか。こうした値上がり分を着実にユーザーに説明した上で、料金に転嫁できるかどうかが販売店には求められる。昨年の米騒動においても、一般消費者は高くても米を買ったのは記憶に新しい。これまで無料サービスでオイル交換をしていた販売店・自動車整備事業者はもちろん、有償サービスとしてのオイル交換の浸透を図ることや下請け業務を多く行ってきたBP工場においては、高騰した塗料・シンナーなどの材料代を料金に転嫁できるような関係性も強める必要があり、こうした取り組みが将来の経営基盤を強めてくれるはずだ。

 また、経済産業省や国土交通省には、ナフサ関連の相談窓口なども設置されているので、ここも活用していきたい。

 ※今回の特集テーマに関する情報は、プロトリオス社発行の月刊誌「ボデーショップレポート(BSR)」「メンテナンスショップレポート(MSR)」や両誌のWEBメディアでも紹介しています。

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