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社員5人で粗利1億円—集客より先にやることを説く車屋経営コンサルタント・野瀬貴士氏に聞く

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  • 今回取材に応じていただいた野瀬貴士氏。 今回取材に応じていただいた野瀬貴士氏。
  • 野瀬氏が創業したミニバン専門店・ラインアップの店舗 野瀬氏が創業したミニバン専門店・ラインアップの店舗
  • ラインアップ時代のスタッフと。社員5人で粗利1億円超を実現した ラインアップ時代のスタッフと。社員5人で粗利1億円超を実現した
  • ラインアップ時代にAA(オートオークション)会場で念入りに車の下見を繰り返す野瀬氏。 ラインアップ時代にAA(オートオークション)会場で念入りに車の下見を繰り返す野瀬氏。
  • 販売店でのコンサルティング風景。営業マン一人ひとりに向き合う 販売店でのコンサルティング風景。営業マン一人ひとりに向き合う
  • 実際に使われていた営業補助ツールの一つ。整備・鑑定・保証を他店と比較して"見える化"する 実際に使われていた営業補助ツールの一つ。整備・鑑定・保証を他店と比較して"見える化"する
  • コンサルティングで使用するテキスト『即決車営業術7STEP』 コンサルティングで使用するテキスト『即決車営業術7STEP』
  • 2018年出版の『ネットに騙されない本当の中古車選び』。消費者向けに"店選び"の重要性を説いた 2018年出版の『ネットに騙されない本当の中古車選び』。消費者向けに"店選び"の重要性を説いた
  • 現在の著書『車屋経営の㊙戦略3.0』。社員5人で毎年"億"を超える粗利を実現したノウハウをまとめた 現在の著書『車屋経営の㊙戦略3.0』。社員5人で毎年"億"を超える粗利を実現したノウハウをまとめた

利益は「集客数×成約率×1台あたり粗利」の掛け算——著書で「グー鑑定付きを選んで」と説いた理由、そしてプロト幹部が数十冊を買いに来た日

 「集客を増やしたのに、利益が残らない」。そんな悩みを抱える中古車販売店は少なくない。今回話を聞いたのは、車屋専門の利益改善コンサルタント・野瀬貴士氏。自動車業界歴28年、営業マンとして全国チェーンのトップセールスに上り詰めた後、30歳でミニバン専門店「ラインアップ」を創業。社員5人の小さな会社で毎年1億円を超える粗利を出し続けた実践者である。現在は自身の成功パターンを体系化し、全国の販売店の利益改善を支援している。筆者が野瀬氏のもとを訪ね、じっくり話を聞いてきた。(プロト総研 編集部)

■トップセールスから30歳で独立 無借金17年、社員5人で粗利1億円

 野瀬氏のキャリアの原点は、大学卒業後の24歳で入社した中古車チェーンでの販売営業である。営業経験ゼロからのスタートだったが、市販の営業本を買い込んで独自のトークを作り、閉店後は店長を相手にロープレを重ねる日々を送った。「気がついたら3カ月で店舗トップ、数カ月後には全店でもトップになっていました」と振り返る。その後は日産系ディーラーの中古車部門立ち上げに誘われて移籍し、そこでも数カ月でトップの成績を記録した。

 30歳で独立し、後輩と2人でミニバン専門店「ラインアップ」を創業する。自己資金800万円に、父親に頭を下げて借りた700万円を加えての船出だった。「借りたお金は1年以内に返しました。それ以降は無借金・現金だけで17年間回してきた、車屋ではちょっとレアなケースだと思います」。

 赤字になった年は一度もなく、最終的には社員5人の体制で毎年1億円以上の粗利を出し続けたという。オークションでの仕入れから販売、社員教育まで一貫して自ら仕組みを作り上げ、40代で経営の第一線から退いた。

■「穴の空いたバケツに水を注いでいた」——集客偏重からの大転換

 そんな野瀬氏にも、集客ばかりを追いかけていた時期があった。営業マンが4〜5人に増えた頃、自身は商談から完全に離れ、ポータルサイトへの掲載、チラシ、写真撮影、ブログまで集客業務に自分のリソースを振り切っていたという。ところが販売台数は思うように伸びない。現場に目をやると、そこにあったのは大量の「売り逃し」だった。

 「即決ができない。決まりそうなのに『検討します』と言われて、そのまま帰られてしまう。計算してみると、お客様1組に来店してもらうためのコストは数万円かかっています。それをそのまま売り逃していたら、穴の空いたバケツに水を注ぎ続けているのと同じだと気づいたんです」

 そこから野瀬氏は方針を大転換する。「まずやるべきはバケツの穴を塞ぐこと。すなわち、目の前に来たお客様を確実に決めることが先だろうと。利益を上げるためには、力を入れる順番が非常に大事なんです」。集客は必要最低限にとどめ、①成約率の改善、②1台あたり粗利の改善、③集客——の順で改善を進めた結果、月間粗利は300万円から1200万円へと4倍に跳ね上がった。

 野瀬氏によれば、利益は「集客数×成約率×1台あたり粗利」という掛け算で決まる。ところが多くの販売店は、うまくいかない原因を「集客不足」だと思い込み、広告費を増やして価格訴求に走ってしまう。「安さで反応を取ると、安さを求めるお客様ばかりが集まります。相見積もりも値引き交渉も増えて、売れても薄利。利益が残らないから、もっと集客しようとなる。売上はあるのに赤字、という悪循環です」。成約率と1台あたり粗利は自社の努力で改善でき、再現性も即効性もある。「やらない方がおかしい」と野瀬氏は言い切る。

■価格で戦わない——相場より27万円高いステップワゴンが売れる理由

 では1台あたりの粗利はどう上げるのか。野瀬氏の答えは「値下げではなく、どこまで上げられるかというチャレンジ」だった。相場100万円のステップワゴンをあえて127万円で売る。その代わり、車両品質、仕上げ、保証、接客のすべてを徹底的に磨き上げ、その価値をホームページやブログといった自社メディアで発信し続けたのである。

 「激安でも格安でもなく『適正価格』というコンセプトを打ち出しました。すると、その考え方に賛同した質のいいお客様が集まってくる。値引き交渉はほとんどなく、『買うと決めてきました』という方が来てくれるので、営業マンもやりやすい。そういう好循環に入っていきました」

 値引きは全面禁止とし、代わりにコーティングや希望ナンバーなどの「当日成約特典」に統一。新人でもベテランでも同じ条件で提示できるため、営業の属人化を防ぐ効果もあったという。

■トップ営業マンに頼らない——「誰でも売れる」仕組みの作り方

 営業面で野瀬氏が強調するのは、トップ営業マン依存からの脱却である。「5人の店で1人だけ成約率80%、残り4人が30%なら、組織としては平均40%。一方、全員が60%なら安定して60%です。月50組の来店なら販売台数で10台の差。1台あたり粗利20万円なら月200万円、年間2400万円の差になります。トップに依存していて、その人が独立や引き抜きで抜けたら一気に崩れます」

 そこで野瀬氏が構築したのが、営業の「仕組み化」である。柱は4つ。自身のトークを体系化した台本、商談を"見える化"する営業補助ツール、営業時間内にルール化した毎日のロープレ、そして商談1件ごとのフィードバックである。「台本を渡すだけでは売れるようになりません。人は覚えたつもりで自己流に変えてしまう。だから毎日30分、営業時間の中にロープレを組み込んでルーティン化しました。スポーツと同じで、素振りもせずに試合に出ても勝てないんです」

 トークの中身も独特である。9割方は売り込まず、「先生と生徒」のような信頼関係を作ることに徹する。「『検討します』と言われたら、切り返す前にまず受け止める。『やっぱり検討したいですよね、お気持ちはよくわかります』と共感してから、初めて提案する。営業マンではなくアドバイザーとして見てもらえれば、同じ『この車いいですよ』という言葉でも伝わり方がまるで違うんです」

 この育成パッケージを導入した支援先は、これまでに20社以上で成果を出している。営業マンの平均成約率が20%台から50%台に上がった会社、販売台数が前年比2倍になり「税理士が驚いた」という会社、粗利が倍増した会社も複数あるという。

■「鑑定書付きの車を選んでください」——著書で勧めたグー鑑定

 野瀬氏は現役経営者時代の2018年、一般ユーザー向けに『ネットに騙されない本当の中古車選び』という書籍を出版している。当時、ブログでの情報発信を通じて「このお店で買っても大丈夫ですか」「騙されてしまった」という消費者からの相談が数多く寄せられており、「被害に遭う人を減らしたい」との思いから筆を執ったものである。

 その中で野瀬氏が「基本の大前提」として挙げたのが、第三者機関の鑑定書——プロトが手掛けるグー鑑定の付いた車を選ぶことだった。「めちゃくちゃ良かったですよ。鑑定書を見せてくださいと言えば、実走行かどうか、修復歴の有無、外装や機関の程度までわかる。ユーザーにとって大きな安心材料になります」。もっとも当時の導入率は掲載車両の2割程度で、軽自動車ではほぼ皆無だったとのこと。だからこそ「鑑定書の有無」が店選びの明確な基準になる、というのが野瀬氏の主張だった。

 この本をめぐっては、忘れられないエピソードがあるという。出版直後、プロトコーポレーションの幹部社員が野瀬氏の店を直接訪ねてきたのである。「『営業マン全員に読ませたいから、何十冊か買わせてほしい』と言われました。それで20冊か30冊、まとめて用意してお渡ししたんです」。自社サービスの価値を第三者の視点から説いた一冊を、後輩社員への教育のためにまとめ買いしていく——。筆者としては身内ながら、現場の熱量を感じるエピソードだった。

■今日からできるのは「4つの数字」の書き出し

 最後に、いま悩んでいる販売店が今日からできることを聞いた。答えは極めてシンプルである。「直近3カ月でいいので、来場数、成約台数、成約率、1台あたり粗利の4項目を紙に書き出してみてほしい。どこで利益が漏れているのかが必ず見えてきます。成約率が低いならまず成約率の改善、売れているのに利益が出ないなら値引きか利益設定の問題。集客に手を付けるのはその後です」

 注意点はカウントの仕方である。敷地で車を眺めて帰った人も1件と数えるのが正しい母数の取り方で、「着席して見積もりを出した人だけ数えていたら、成約率は実態より高く出てしまいます」。

 インタビューの締めくくりに、野瀬氏はこう語った。「車屋の社長はみんな、会社のため、社員のため、家族のために本当に一生懸命なんです。それなのに利益が残らない、社員が育たないと悩んでいる。僕もそうだったから気持ちはよくわかります。でも、やり方と順番さえ間違えなければ、集客を変えなくても、広告費をかけなくても、利益はまだまだ改善できる。真面目にお客様のためを思ってやっている車屋さんが報われる業界になってほしい——それが昔からの僕の願いです」


■野瀬貴士(のせ・たかし)氏 プロフィール

 車屋専門の利益改善コンサルタント。自動車業界歴28年。中古車チェーンおよび日産系ディーラーでトップセールスを記録した後、30歳でミニバン専門店「ラインアップ」を創業。無借金経営を貫き、社員5人で毎年1億円超の粗利を実現した。現在は全国の中古車販売店に対し、営業の仕組み化を軸とした利益改善コンサルティングを行う。著書に『ネットに騙されない本当の中古車選び』『車屋経営の㊙戦略3.0』。

PROTO総研にも掲載しています。
https://protosouken.com/interview/15323/

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