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Web限定【自動車業界特化型税理士新連載企画】「個人事業」で車屋を始めた酒井くんと、「法人」を設立した相川さん

『第8話:創業融資を受けよう!』

 個人経営と法人経営のメリット・デメリットなどについては様々な書籍が発行されていますが、この連載企画では「実際のところどうなの?」という素朴な疑問に立ち返り、物語形式でその実態に迫ります。

【今回のテーマ】
 「個人事業主」として開業することにした酒井くんと、「法人」を設立して開業することにした相川さんは、無事に古物商の営業許可を取得することができたので、資金調達をする段階にきました。
 開業に伴う資金は、「自己資金」と「借入」の2つに大別されますが、今回はその中でも、開業時に金融機関などから資金を借り入れる「創業融資」について整理したいと思います。

【創業融資とは?】
 車屋を始めた当初というのは、設備や在庫車の仕入に多額の資金が必要であるため、自己資金が潤沢にある場合を除いて、融資(借入)に頼るケースがほとんどです。しかし、開業したばかりの個人事業主や新設法人は売上実績がないため、銀行などの民間金融機関から通常の融資を受けることは困難です。そのような場合は、公的な創業融資を利用するのがオススメです。創業融資とは、開業時に受けられる融資のことで、国や自治体によって創業者を支援するために設けられている公的な融資制度のことを言います。

【2つの創業融資】
 創業融資の検討をする際には、「日本政策金融公庫」による「新創業融資制度」と、「自治体・信用保証協会・金融機関」による「制度融資」を2つの柱とすると良いでしょう。

(1) 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」
 日本政策金融公庫は、国が100%出資している政府系金融機関です。国が定めた政策に基づいて、創業支援や中小企業の事業支援などを行っているため、中小企業や小規模事業者に対する融資制度が豊富に用意されており、その中の代表的な制度として「新創業融資制度」があります。この制度は、原則として無担保かつ無保証人で融資を受けることが可能である他、自己資金の要件が創業資金総額の10分の1と非常に低く設定されていることも魅力の1つです。また、民間の金融機関に比べて金利が低く、申し込みから融資実行までに要する期間が通常約1ヶ月程度と短いため、非常に使い勝手の良い融資制度と言えます。

(2) 自治体・信用保証協会・金融機関による「制度融資」
 制度融資とは、自治体・信用保証協会・金融機関の三者が連携して行う融資制度のことで、主に中小企業やスタートアップ企業を対象に、自治体が経済政策支援の一環として実施しています。
 信用保証協会は、中小企業や小規模事業者の円滑な資金調達のために設立された公的機関です。制度融資では、この信用保証協会が債務保証をすることで金融機関からの融資を受けやすくする仕組みになっており、借入に係る利息の他に信用保証料が必要となりますが、利息の一部を自治体が負担する「利子補給」や、信用保証協会の保証料の一部または全部を自治体が負担する、「信用保証料補助」があるため、これらの制度を活用することで、事業者の負担は軽くなります。
 なお、制度融資の手続きは自治体・信用保証協会・金融機関の三者が連携して行うことから、その実行まで一定の期間(通常1~2ヶ月程度)が必要となりますので、お急ぎで融資を希望する場合には、スケジュール面にも配慮するようにしましょう。



【事業計画書(創業計画書)】
 金融機関から融資を受ける際には「事業計画書」を作成する必要があり、これに対して難しいという印象をお持ちの方も多いと思います。インターネットで検索すると「事業計画書の書き方」「資金調達コンサルタント」「融資を引き出すコツ」など、様々な情報が錯綜しているので不安に感じてしまいがちですが、融資を受けた資金をどのように使って、それをどの様に回収して、そして返済に充てていくかという、これから自身が始める事業のことをイメージしながら作成していくと決して難しいものではありません。特に、創業融資の際に作成する事業計画書(「創業計画書」と呼ばれています。)は、様式が用意されており、項目ごとに順番に記載(回答)していくことで、比較的スムーズに作成することが可能です。
 例えば日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合に提出する創業計画書の記載項目は、下記のようになっています。

1.創業の動機
2.経営者の略歴等
3.取扱商品・サービス
4.取引先・取引関係等
5.従業員
6.お借入の状況(法人の場合、代表者の方のお借入)
7.必要な資金と調達方法
8.事業の見通し(月平均)
9.自由記述欄(アピールポイント、事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイス等)

 個人事業主の酒井くんも、法人を設立した相川さんも、最初は不安がありましたが、今後の事業をイメージしながら、項目ごとに順番に記載することで創業計画書を難なく完成させ、窓口の担当者の方の協力もあって、無事に融資を申し込むことができました。



【創業融資のポイント】
 創業融資は、前述のとおり「創業者を支援するため」の融資制度となっておりますので、決してハードルが高いものではありません。しかし、比較的融資を受けやすい制度だからこそ慎重に検討し手続きを進めていくことが大切です。ここでは、創業融資を受ける際に押さえておくべきポイントについてご紹介したいと思います。

(1)自己資金
 創業融資を受ける際には「自己資金」をいくら準備することができるかが重要となってきます。自己資金の割合が低いと希望した金額の融資が受けられないことがあるだけでなく、今後の経営(資金繰り)にも大きく影響してきます。どの程度の規模で、どの程度の在庫車を持つのかにもよりますが、最低でも創業融資を申し込む金額の3分の1程度の自己資金は準備しておいた方が安心です。

(2)融資審査
 創業融資を受けるためには、日本政策金融公庫や金融機関の審査をクリアする必要があります。創業融資の場合は実績がない状態で審査を受けるため、「創業計画書の内容」に加えて「経営者の経歴(創業する事業に関する実務経験)」などについて審査を行います。そして、やはり「人となり」も大切な審査項目となりますので、窓口で相談する際には、謙虚な姿勢での対応を心がけましょう。
 なお、個人事業主と法人では審査内容や審査基準に違いはないものの、やはり登記情報を公開している法人の方が信頼度は高いと言えます。

(3)返済計画
 当たり前のことですが、お金を借りたら返さなければなりません。創業融資に限ったことではありませんが、融資を受けた資金の使い道だけでなく、利息を含めた無理のない返済計画も事前に立てておくことが大切です。
 なお、返済計画を立てる際には、毎月の売上だけを見るのではなく、売上から仕入原価や家賃などの経費を差し引いた利益をベースにして、税金や支払・回収サイクル(資金繰り)なども加味する必要があります。

【今回のまとめ】
 今回は創業融資についてご紹介しましたが、あまり難しく考え過ぎず、まずは「日本政策金融公庫」と「地域の信用金庫」などの金融機関に連絡をして相談に行きましょう。必要書類や手続きのことだけでなく、融資全般に関する相談など、窓口の担当者の方が親切丁寧に対応して下さいます。きっと「インターネットで調べた情報よりも思いのほか簡単だった」と感じることでしょう。

【著者紹介・取材協力】
税理士 酒井将人。
自動車業界特化型税理士事務所OFFICE M.N GARAGE代表。
税務の枠を超えて自動車販売店の業務改善などを行う「中小企業者の経営サポート」と「相続&事業承継対策」のスペシャリスト。著書に『いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務Q&A(セルバ出版)』『おうちのくるま(乗り物絵本シリーズ)』など。


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