Web限定【自動車業界特化型税理士新連載企画】「個人事業」で車屋を始めた酒井くんと、「法人」を設…

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Web限定【自動車業界特化型税理士新連載企画】「個人事業」で車屋を始めた酒井くんと、「法人」を設立した相川さん

コラム 2024年07月01日
『第17話:自分に給与を払おう!』
会社名:自動車業界特化型税理士 酒井将人

 個人経営と法人経営のメリット・デメリットなどについては様々な書籍が発行されていますが、この連載企画では「実際のところどうなの?」という素朴な疑問に立ち返り、物語形式でその実態に迫ります。

【今回のテーマ】
 「個人事業主」として開業した酒井くんと、「法人」を設立して開業した相川さんは、順調に事業を進めているようで、中古車の販売などから利益を生み出しています。サラリーマン時代は、基本給に加えて自分が生み出した利益の一部を歩合給という形で毎月受け取っていた酒井くんと相川さんですが、自分自身が事業者となった場合、自分に給与を払うためにはどうすれば良いのでしょうか?また、個人事業主と法人の場合で違いはあるのでしょうか?今回は、そんな事業で得た利益(お金)を事業者が受け取る方法などについて、個人事業主と法人との違いを中心にご紹介したいと思います。

【個人事業主が受け取る給与】
 個人事業主は、サラリーマンのように毎月会社から給与を貰うことはないため、自身が営む個人事業の儲け(利益)の一部を生活費や貯蓄といったプライベートのお金に充てることになります。もちろん、サラリーマン時代の給料と同じように毎月一定金額を事業用口座からプライベート用の口座に送金する形でも問題はありませんが、そのような送金方法を採ったとしても、個人事業主は自分の給与を経費として処理することはできません。
 個人事業主は、儲けによって増えた「事業のお金」を、いくらでも任意のタイミングで「プライベートのお金」として自由に使うことができるため、「自分の給与」という概念はなく、その金額は経費にすることができないのです。

【個人事業主の給与の経理処理】
 個人事業主が「事業のお金」の中から「プライベートのお金」を受け取った場合、個人事業の経理処理を行ううえでは「給与」という経費ではなく、「事業主貸(借方・資産)」という科目で処理を行います。あまり馴染みのない科目ですが、事業者としての立場から、プライベートの事業主に対してお金を貸してあげるというイメージを持つと分かりやすいと思います。
 なお、反対に「プライベートのお金」を「事業のお金」として投入した場合には、『第15話:自己資金を投入しよう!』でご紹介したとおり「事業主借(貸方・負債)」という科目で処理を行います。
 個人事業主として開業した酒井くんは、基本的には毎月一定額を、儲けが多かった月はその金額に応じて多めに事業用口座からプライベート用の口座に送金することにしました。


【法人役員が受け取る給与】
 個人事業主の場合には、一人の個人の中に「事業のお金」と「プライベートのお金」が混在するため、事業者が給与を受け取った場合でも給与として経費処理するのではなく、「事業主貸」という科目を使って少し特殊な処理を行う必要がありました。
 しかし、法人を設立して事業を行っている場合には、法人格とその事業者(役員)は、全くの別人格となるため、一般的なサラリーマンが受け取る給与と同様に、法人側では給与として経費処理を行い、事業者(役員)側では、受け取った金額が給与所得となります。


【損金算入される役員給与】
 法人の役員が受け取る給与は、一般的なサラリーマンが受け取る給与と同様に取り扱うということは前述のとおりですが、サラリーマンの給与と役員の給与では、法人側における損金算入(経費として認められること)の点で少し異なります。
 具体的には、法人がその役員に支給する給与については、不当な利益調整の防止などの観点から、次の3種類の給与に限り損金算入が認められています。

1.定期同額給与
支給時期が1か月以下の一定の期間で、事業年度内に支給する金額が毎回同額である給与

2.事前確定届出給与
決められた時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する一定の条件を満たしている給与

3.業績連動給与
同族会社ではない法人が業務執行役員に対して支給する給与で、利益に関する指標を基礎として算定されているもの

 このうち、「3.業績連動給与」は上場企業を対象とした制度となりますので、いわゆる中小企業で損金算入が認められているのは、「1.定期同額給与」と「2.事前確定届出給与」ということになります。また、「2.事前確定届出給与」もその名のとおり、事前に支給時期と支給額を税務署に届け出る必要があるため、ほとんどの中小企業では「1.定期同額給与」を役員に支払うこととなります。

【定期同額給与の改定方法】
 定期同額給与は、法人の役員に対して1か月以下の頻度で定額を支払うという点では一般のサラリーマンに支払う月給と類似しています。しかし、定期同額給与は、株主総会等であらかじめ金額を決定しておかなければならず、その金額を変更(改定)する時期にも制限が設けられていて、次の3つの改定方法だけが認められています。

1.通常改定
事業年度開始から3か月を経過する前に改定された場合

2.臨時改定
役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更などがあった場合

3.業績悪化改定
経営状況が著しく悪化したことにより減額がやむを得なくなった場合

 なお、業績悪化改定は、減額での変更(改定)のみが対象です。主な取引先との突発的な取引停止など特別な事情がある場合にのみ適用される項目であり、単なる業績悪化などには適用されません。また、一時的な資金繰り目的での改定や、恣意的な改定も対象外となります。
 法人を設立して開業した相川さんは、今回の検討タイミングが法人を設立日から3か月以内であったことに胸をなでおろしながら、「1.通常改定」にて一人株主総会を開催し、設立1期目の自分の役員給与月額を決定しました。

【今回のまとめ】
 今回は、事業者が自分に給与を払う場合における取り扱いについて、個人事業主と法人の場合の違いを中心のご紹介しました。個人事業主の場合は、事業のお金とプライベートのお金を分けてイメージすること、法人の場合は、法人と役員は全くの別人格と捉えることがそれぞれポイントとなります。特に、役員給与の金額設定については、ある程度の業績予測をしながら法人側と役員側の税負担なども考慮して検討する必要があることから、顧問税理士にも相談されると良いでしょう。

【著者紹介】
税理士 酒井将人。
自動車業界特化型税理士事務所OFFICE M.N GARAGE代表。
税務の枠を超えて自動車販売店の業務改善などを行う「中小企業者の経営サポート」と「相続&事業承継対策」のスペシャリスト。著書に『いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務Q&A(セルバ出版)』『おうちのくるま(乗り物絵本シリーズ)』など。

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