中古車市場の活性化と業界の健全化を目指して/対談企画⑦ - グーネット自動車流通

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中古車市場の活性化と業界の健全化を目指して/対談企画⑦

ひと 2026年09月25日
「信頼」が市場をつくる タイ中古車、成長への道 ~評価基準の統一、車両履歴データ、そして「透明性」で挑む市場の健全化~
会社名:タイ中古車協会

 ASEANの成長市場として注目されるタイ。

 だが人口は成熟期に入り、二輪中心の文化や個人間売買の強さなど、日本と重なる局面も少なくない。市場を伸ばすのは人口か、それとも信頼か――。

 タイ中古車協会の会長兼共同創設者であるウィスット・ヘムパンパイロ氏と、「グーネット」で中古車流通の情報開示をリードしてきたプロトコーポレーションの白木享社長がタイで対談。

 評価基準の統一、車両履歴データの整備、SNS時代の販売、そして「安心」を軸とする市場の健全化への道筋を語り合った。

■タイ市場の「現在地」

――日本では「タイ=成長市場」という印象があります。ですが人口は成熟期に入り、二輪中心の文化も根強いと聞きます。中古車流通200万台と言われるこの市場は、いまも伸びているのでしょうか。

ウィスット
 正直に言えば、市場はいま厳しい局面にあります。最大の要因はオートローンです。コロナ禍の頃は中古車購入者の約9割がローンを利用していましたが、いまは75〜80%程度まで下がりました。家計債務が高水準にあり、金融機関の審査が厳しくなったためです。新車の販売も落ち込み、中古車として市場に出てくる車そのものも細っています。オークションを介したBtoBの流通は、拡大よりむしろ縮小しかねないと見ています。

 背景には、コロナ禍で膨らんだ不良債権と、その後の金融引き締めがあります。とりわけ小規模なディーラーは、大手中心に組まれる金融支援のなかで競争が難しくなり、店舗数そのものが減っています。ただ、これは市場が縮むという話ではありません。むしろ、選ばれる事業者とそうでない事業者がはっきり分かれる、健全化の入り口だと捉えています。言い換えれば、いまは量を追う時代から、質と信頼で選ばれる時代への転換点にあると感じています。価格競争だけに頼る経営は、これからますます難しくなっていくはずです。

白木
 日本も人口と保有台数の拡大が市場を押し上げた時代を経て、いまは成熟市場です。伸びを支えるのは台数ではなく、消費者の信頼になりました。その意味で、タイと日本は共通の課題に直面しています。タイの現状は決して悲観すべきものではなく、次の成長に向けた助走だと捉えています。

■個人間売買隆盛の時代に、販売店は何で選ばれるか

――SNSを使った個人間売買が盛んななかで、それでも消費者が販売店を選ぶのはなぜでしょうか。販売店に求められる価値をどうご覧になっていますか。

ウィスット
 タイのディーラーの仕入れは、かつてオークション経由が約6割、消費者からの直接買い取りが約4割でした。それがいまはほぼ逆転し、直接買い取りが約6割を占めています。私自身もFacebookを使い、毎日のように仕入れと発信を行っています。中古車ビジネスの原点は仕入れであり、いかに良質な車両を確保するかがすべての起点になります。消費者はFacebookのMarketplace(電子市場)で車を探し、気に入った車の販売店ページを訪ねてきます。私自身も車両のレビュー動画を継続して発信しています。単に在庫を並べるのではなく、自分の言葉で説明することが信頼につながります。

 以前はOne2car(タイ国内最大級の新車・中古車売買プラットフォーム)などの情報サイトが主流でしたが、いまや車探しの入り口はSNSに移りました。そこで最後に問われるのも、やはり透明性です。何か不誠実なことをすればすぐにSNSで広まる時代であり、情報を隠さない店だけが信頼を積み上げられます。だからこそ、販売店にとっては一台ごとに責任を持って説明できることが、これまで以上に大きな強みになります。発信のスピードと透明性を両立できる店ほど、これからの時代に選ばれていくのだと思います。

白木
 日本でも「グーネット」への掲載と情報開示が販売の前提になっています。発信の手段は違っても、透明性が集客と信頼の土台であるという点は、タイも日本もまったく同じです。

■「安心」を買う消費者の登場

――価格の安さだけでなく、検査や保証といった「安心」を重視する消費者は増えているでしょうか。

ウィスット

 確実に増えています。いまタイでは中古車の販売時に保証を付けるのが一般的になりつつあり、少なくとも1年間の保証を付けて売る店が多いです。私の店では1年、または2万kmの保証を自社で付けています。日本系のFIXMANや独立系のAsia Careなど、保証を専門に手がける会社も育ってきました。なかでもAsia Careは金融会社と提携し、市場の約7割を占めるとみています。

 さらに大きな変化は、車両の状態を示す検査レポートがなければ、オートローンの審査が通りにくくなってきたことです。安心が、消費者だけでなく金融の側からも求められ始めています。検査や保証は、もはや単なる付加サービスではなく、取引の前提条件になりつつあると実感しています。価格の安さだけで選ばれる時代は、少しずつ終わりを迎えようとしています。

白木
 日本では点検整備記録簿の有無が中古車の価値を左右します。記録簿付きの車は同じ価格でも選ばれ、より高く売れます。「安心」が価格をつくるという構図は、タイでもこれから加速するでしょう。こうした「安心」への投資は、めぐりめぐって販売店自身の利益にもつながっていくはずです。

■評価基準の統一と、車両履歴データという次の一手

――日本は第三者検査や修復歴開示、保証で「安心して買える市場」を築いてきました。タイも情報開示が市場を伸ばす段階に入っているのでしょうか。いま最も必要な標準化は何でしょうか。

ウィスット
 まさにその段階にあります。いまタイには、業界全体で共通して使える車両評価基準がまだありません。オークション会場も買い取りプラットフォームも、それぞれ独自の方法で車を評価しているのが実情です。そこで協会では、ディーラーも巻き込んだ共通のグレーディング基準づくりを進めており、第1段階を終え、いまは会場を含む業界全体への展開という第2段階に入っています。

 もう一つの鍵が車両履歴データです。修理歴や事故歴を確認できる仕組みは、米国のCARFAX(車台番号をもとに事故歴・メンテナンス歴などを調べられる有料履歴確認サービス)のように政府や関係機関が連携してこそ成り立ちます。タイではまだデータが分散しており、我々は消費者保護当局と協力して「E-Book」と呼ぶ登録の仕組みを試験的に始めました。販売前に価格や履歴を登録し、記録として残します。まずは協会の会員から始めていますが、将来的に政府の制度と結びつけ、業界の共通基盤に育てることが最も重要な課題だと考えています。

 標準化は一朝一夕には進みませんが、業界が同じ物差しを持つことこそ、消費者の信頼を取り戻す近道だと考えています。データが整えば、消費者は安心して選べ、事業者も適正な評価で車を売れるようになります。

白木
 日本は評価点や情報開示、そして車両鑑定を積み重ねて市場の信頼を築いてきました。基準づくりは一社ではできません。だからこそ、タイが業界横断で標準化に踏み出している意味は大きいと思います。日本が数十年かけて築いた仕組みも、最初はこうした地道な一歩から始まりました。

■人口ではなく、信頼が市場を伸ばす

――中古車市場を成長させるために最も重要なことは何でしょうか。日本とタイは、競い合うのではなく学び合うパートナーになれるのでしょうか。

ウィスット
 最も重要なのは、やはり信頼です。私が初めて日本を訪れたとき、日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連)の方から「Peace of Mind(安心)」という言葉を教わり、強く心に残りました。信頼がなければ車は売れず、事業も続きません。そして、これからさらに重要になるのが透明性です。車両の状態や履歴を隠さず、誰もが確認できる仕組みをつくります。それは協会だけでは実現できず、ディーラー、金融会社、オークション会場といったパートナーとのネットワークがあってこそ可能になります。この「安心」と「透明性」を、タイだけでなくマレーシアやインドネシア、ベトナムといった周辺国へ広げ、タイを東南アジアの中古車流通のハブにしていきたいと考えています。信頼と透明性は、国境を越えて共有できる価値だと信じています。

白木
 人口が増えるから市場が伸びるのではありません。信頼があるからこそ、市場は伸びます。その一点で、日本とタイは同じ道を歩んでいます。互いの経験を持ち寄れば、両国の市場はまだ大きく育ちます。日本の読者にとっても、タイの挑戦は決して遠い国の話ではないはずです。両国が知見を持ち寄れば、ASEAN全体の中古車市場にとっても、良い先例をつくれるはずです。

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