停車中にスマホ操作で利用者宅への到着と出発をお知らせ

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「生活をもっと豊かに」―。ダイハツ工業(大阪府池田市、井上雅宏社長)は、福祉・介護領域において「新たなケアモデル」の推進を加速している。手作業や紙による業務が根強く残る福祉・介護業界に、デジタル・トランスフォーメーション(DX)による「業務効率化」を推進し「介護現場の負担軽減」と「質の高いケア」の両立を実現する。
同社は2018年、通所型介護施設や送迎業務を担う事業者の運行管理システム「らくぴた送迎」をリリースした。同システムは、施設利用者の送迎計画を「誰でも簡単に」作成することで、事業者の業務負荷を軽減し、本来の介護・ケア業務に専念できる環境を整える。
また、ドライバーとの送迎中の連絡や報告なども滞りなく対応し、安心・快適な送迎業務をサポートする。同システムは現在、全国で200法人以上が導入し、活躍の場を広げている。
同システムの開発には、3万件以上の介護施設を訪問した「現場の生の声」が活かされている。
同社はさらに22年、地域の共同送迎サービス「ゴイッショ」の提供を開始した。同サービスは、従来それぞれの施設が個々に行っていた送迎業務を外部団体に一本化し、複数施設の利用者が乗り合い、介護施設に通うサービスモデルだ。
送迎業務を介護現場から切り離し、地域一体で効率的な運行を行うことで、業務の「ダブり」を解消する。限られた介護施設のリソースを、利用者のケア業務に集中させることで、地域における福祉サービスの利便性を高める。同サービスは現在、様々な地方自治体で実証実験を進め、同サービスの導入を加速している。
同社は、1907年の創業以降「現地現物」を徹底し、地域に暮らす生活者一人ひとりに真摯に向き合ってきた。生活者に近い存在だからこそ発見できた問題や課題に寄り添い、福祉・介護業界の未来を切り拓く。
|送迎計画の「効率化」が導く現場革新
福祉・介護業界では、介護人材不足という課題を抱えながらも、業務の多くはアナログ(手作業)だ。なかでも、業務全体の3割を占める「施設利用者の送迎業務」の送迎計画を作成するには、1~2時間(事業所の規模によっては2時間以上)を要するという。送迎業務は、利用者のキャンセルや予定変更が発生するたびに、パズルを組み合わせるように、その都度修正を加える。
こうして介護施設は、施設利用者の要望を柔軟に対応する一方で、同計画の作成が「煩雑化」し、業務を圧迫するというジレンマに陥る。計画作成の多くは、エクセルやホワイトボードを用いたアナログな手法で行っているため、多くの工数を割く。また、施設利用者の性格や利用者同士の相性を考慮し送迎計画を立てるとなると、より苦慮することになる。
さらに同計画の作成は、経験豊富な熟練社員に依存する「属人的」な業務に他ならない。作成できる社員は限られているため、担当者の不在時に業務が滞るリスクを抱える。
同システムは「誰でも簡単に」送迎計画を作成し、業務の「平準化」や「工数削減」を実現する。同システムを導入した介護施設からは、「実際に計画作成可能な人材が増え、業務効率化が進む」など、喜びの声が上がっている。
|「運用コストの最適化」が、より質の高いサービスを生む
同システムは、ドライバーの安全運転をサポートする。急な計画変更や業務連絡は、スマートフォンの画面表示や音声案内でドライバーへ通知されるため、停車時に安全に確認できる。また介護施設は、車両位置や送迎状況をリアルタイムに把握でき、施設利用者からの問合せにも迅速に対応できる。
このほか、施設利用者が送迎車の到着予定時刻を事前に確認できるなど、自宅での準備をスムーズに進め、無駄な待ち時間や不安を解消することができるという。
同システムは、時間の有効活用にとどまらず、車両や移動距離といった「運行コストの最適化」も支援する。送迎ルートを最適化し、これまで「4台」必要だった車両を「3台」で回せるようになれば、余った「1台」を、施設利用者の通院や買い物などの移動支援に充てることができる。こうして施設利用者の移動の自由度が高まり、生活の質(QOL)向上にもつながる。
|「らくぴた送迎」を認知症高齢者向け小規模施設へ導入
長谷工グループが展開する「認知症高齢者」を対象としたデイサービス「ふるさと」では今年6月、同システムを導入した。
従来、認知症利用者は、送迎ルートや担当者変更が発生すると不安を感じやすいため、送迎の効率化は難しく敬遠されていた。同社は「ふるさと」での試験運用を開始し、業務の効率化を図りながら、環境変化に敏感な認知症利用者にも、安心な送迎が可能であることを確認した。
営業担当の峯脩仁さんは「認知症利用者へサービスを展開できたことは、大きな一歩」と、振り返る。同システムは、今後「ふるさと」の全直営店(45店舗)に拡大する予定だ。
|「個々の運行」から「共同運行」へ
同社は22年、地域の共同送迎サービス「ゴイッショ」の提供を開始した。
同サービスは、従来個々の施設が単独でおこなう送迎業務を、外部団体へ一本化し、複数の施設利用者が乗り合わせて通所する新たな仕組みだ。
同年6月、香川県三豊市で全国初の正式運行「ゴイッショみとよ」をスタートした。共同送迎の運行は、地域のタクシー会社が務める。
同市では、今年4月より「放課後等デイサービス(発達に支援が必要な子どもが放課後等に利用する通所支援サービス)」との連携を開始し、高齢者介護と児童支援をまたぐ、全国でも先駆的な「異業種共同送迎」へと発展している。
現在、同サービスは滋賀県野洲市や大阪市阿倍野区などの正式運行に加え、島根県出雲市と岡山県高梁市、兵庫県川西市など、様々な自治体と連携を進め、実証実験を加速している。
峯さんは「地域ごとに課題は異なる。『現地現物』のアプロ―チが、現在のサービス基盤を支えている。地域の生活者に寄り添い、豊かな社会を実現したい」と、未来を見据える。
|現場起点の発想が生み出す「豊かな生活」
同社が事業を推進する原点は「現地現物」の徹底に他ならない。同福祉・介護事業は、福祉車両の性能や利便性をヒアリングする中で、介護現場の「業務の煩雑化」という本質的な課題に着目したことで始まる。同社は、15年に福祉介護専門チームを発足し「デジタル化」による業界課題の根本解決に乗り出した。
同社は、自動車メーカーとしての「モノづくり」と、生活を豊かにするという「コトづくり」の両面を相乗的に機能させ、地域社会の新たなインフラを生み出している。
同事業は、施設利用者・介護事業所・自治体の三者において、①利用者の「毎日をもっと楽しく」②介護事業所の「高度なサービス提供」③自治体の「住みよい街づくり」―を目指す。
同事業を担当する岡本仁也主査は「ダイハツは、それぞれの地域の生活者に真摯に向き合い、寄り添ってきた。自動車メーカーとしての『モノづくり』はもちろんのこと『コトづくり』の両面を機能させることが重要。見えない課題を発見・解決し、生活を豊かにしていく。新たなマーケットを作り、やり続けることが、ダイハツらしい」と、力強く語る。
同社は、現場起点の発想で、新たなソリューションを生み出す。
57年に発売した軽三輪トラック「ミゼット」は、戦後の街頭で「ビールを積んだスクーターが横転し、全てのビール瓶が割れる」という光景を目撃したことから誕生した。「狭い道でも小回りが利き、経済的で扱いやすい便利なクルマ」を追求した、現場起点の発想だ。
同事業においても「介護業務の煩雑化」という課題に真摯に向き合い、システム化による現場負担の軽減と、地域の共同送迎という新たなソリューションを生み出した。
大阪府池田市にあるダイハツ工業本社には「ミゼット」が展示されている。時代を越えて受け継がれる「現地現物」のⅮNAを、今も静かに語り継いでいる。