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個人経営と法人経営のメリット・デメリットなどについては様々な書籍が発行されていますが、この連載企画では「実際のところどうなの?」という素朴な疑問に立ち返り、物語形式でその実態に迫ります。
【今回のテーマ】
「個人事業主」として開業した酒井くんと、「法人」を設立して開業した相川さんは、順調に開業手続きと開店準備を進め、いよいよ車屋を正式にオープンしました。これから商品となる中古車を仕入れてお客様に販売していくこととなり、それに伴って会計処理も本格化するため、税理士に会計・税務に関する顧問を依頼することにしました。そこで今回は、「税理士の選び方」のポイントなどについて整理したいと思います。
【税理士の仕事】
税理士とは税理士法に定める国家資格を持った「税務に関する専門家」で、世の中に数多く存在する様々な税金に精通しています。そしてその仕事内容は次の4つを柱としていて、関連業務や付随業務などを含めて非常に幅広い業務に携わります。
<税理士の主な業務>
□税務代理
…個人や法人を代理して、各種申告手続きや税務調査の立会いなどを行います。
□税務書類の作成
…個人や法人に代わって、所得税や法人税の確定申告書などの税務書類を作成します。
□税務相談
…税金に関する様々なご相談に応じます。
□会計業務
…税務に関する業務に付随して、会計帳簿の記帳代行や決算書の作成などを行います。
【税理士の必要性】
税理士と顧問契約を締結すると毎月の顧問料が発生し、決算申告業務を依頼すると決算申告料が発生します。当たり前のことですが、これらの税理士報酬の固定費負担は決して小さくはありません。特に個人事業主の場合には、税務署の無料相談などを利用してご自身で確定申告をされている方も数多くいます。しかし、何かと複雑な処理が多い「車屋」の場合は、ご自身で正しい会計・税務に関する手続きを行うことは難しく、また開業して間もない大切な時期こそ、会計や税務に関することに気を取られることなく本業(事業経営)に全力を注ぐべきです。そして、その環境作りの為には、税理士との顧問契約が必要となります。「良い税理士」というのは、単に経営者の負担を軽減するだけでなく、経営者の力強い味方となり、事業経営の成長・発展において重要な存在となることでしょう。
【税理士の探し方】
税理士と顧問契約を締結するにあたって、どのようにして税理士を探せば良いか分からない方も多いと思いますので、ここでは一般的な3つの探し方とそれぞれの方法のメリット・デメリットと注意点についてご紹介します。
(1)税理士紹介サイトを利用する
税理士紹介サイトは、ユーザーが自分のニーズや条件に合わせて税理士を検索し、紹介を受けることができるとても便利なウェブサイトです。サイト運営会社は、税理士を探しているユーザーと仕事が欲しい登録税理士をマッチングさせることで税理士側から報酬(紹介料)を得る仕組みになっています。ユーザーは全て無料で利用することができるため、一見するとメリットしか無いように思いますが、税理士が運営会社に支払う報酬の原資はユーザーから受け取る税理士報酬であることも考慮し、慎重にサイトを利用する必要があります。
<メリット>
・基本無料で利用可能である。
・税理士の面談をアレンジしてもらえる。
・手間をかけずに複数人の税理士の話を聞くことができる。
<デメリット>
・税理士の評価やレビューをどこまで信用して良いか分からない。
・登録している税理士の中からしか選べない。
・税理士側が紹介料を運営会社に支払うビジネスモデルが悪影響を及ぼす可能性がある。
<注意すべきポイント>
・複数名の税理士の紹介を受け、面談で税理士本人から直接話を聞くようにしましょう。
・サイトの情報に惑わされず、得意分野や人柄をしっかりと確かめることが大切です。
(2)知人からの紹介を受ける
税理士を探すにあたって真っ先に思いつくのが、知人からの紹介だと思います。素性が知れた税理士を選ぶことができるので安心感はありますが、一定のデメリットも存在します。
<メリット>
・得意分野、評判や人柄など、信憑性がある情報を入手できる。
・紹介者が胸を張って紹介できる税理士なので、良い税理士である可能性が高い。
<デメリット>
・紹介者のことを考えると、細かい要望を出しづらい。
・紹介を受けた手前、税理士と馬が合わなかった場合に断りづらい。
・顧問契約の打ち切りを検討する際に、紹介者に気を遣ってしまう。
・自分のビジネス(業種)に適している税理士とは限らない。
<注意すべきポイント>
・紹介者には何人かの税理士の中から決めることを遠まわしに伝えておきましょう。
・取引上の立場が上の人(得意先など)からの紹介は、極力避けましょう。
(3)自分でインターネット等を利用して検索する
最後にご紹介するのは、税理士紹介サイトや知人の紹介に頼らず自分自身で税理士を検索する方法です。最近では殆どの税理士がホームページを持っているので、多くの情報を集めることができる反面、正しい情報を見分ける難しさもあります。
<メリット>
・ホームページなどで、自分に合いそうな税理士を多く検討できる。
・紹介者などのしがらみがないので、自分と合わなかった場合には断りやすい。
・ITに強い税理士である可能性が高い。
<デメリット>
・ホームページのデザインが綺麗だと良い税理士だと惑わされてしまう。
・ホームページを持っていない税理士と巡り合えない。
・サイト情報に差がない場合は、料金だけの比較になり、質の検討が難しい。
<注意すべきポイント>
・ホームページの記載内容を鵜吞みにせず、慎重な判断を行うようにしましょう。
・更新頻度が低い(更新されていない)ホームページは避けた方が良いでしょう。
なお、個人事業主の酒井くんも、法人を設立した相川さんも、「車屋」特有の実務に精通している税理士を自身で検索し、その中から自分たちと同世代で話しやすい印象を受けた税理士と顧問契約を締結することにしました。
【税理士のタイプ】
ご存知でない方も多いかと思いますが、一言で税理士と言っても、税理士の資格を有することとなった経緯によって、次の4つのタイプに分類されます。税理士の能力を評価する指標として、税理士資格を取得した後の経験や実績も当然重要なのですが、税理士資格を有することとなった経緯も、その税理士の知識やバックボーンなどを知る上で重要な情報となります。
(1)国家試験合格者 (試験組)
国家試験である税理士試験に合格して税理士になった人をいいます。税理士になるためには、会計科目を2科目と税法科目を3科目(合計5科目)に合格する必要があります。
(2)元税務署職員 (国税OB組)
税務署の職員には一定期間以上勤務すると事実上無試験で税理士になれるという制度があり、この制度を利用して税理士になった人をいいます。税務署の職員の多くは、この特典を利用し、定年退官した後に税理士の登録をして会計事務所を開業するので、比較的高齢の税理士が多いという特徴があります。
(3)院卒者(免除組)
税理士になるためには、合計5科目の税理士試験に合格する必要があるのは前述のとおりですが、大学院で特定の課程を修了することで一部の科目合格が免除される制度があり、この制度を利用して税理士になった人をいいます。
(4)公認会計士・弁護士 (無試験組)
弁護士は無試験で、公認会計士は税法に関する研修を修了することで税理士資格を得ることができるため、税理士試験を受験することなく無試験で税理士になった人をいいます。
<税理士のタイプ別特徴>
□試験組
…ベースとなる知識がしっかりしている。
□国税OB組
…税務署での勤務時に担当していた税法(税目)を得意としている。
□免除組
…知識には個人差があるため未知数である。
□無試験組
…税務以外(会計または法務)の見識や知識が豊富である。
なお、ここでご紹介している特徴は、あくまでも一般的な内容となりますので、この情報だけを元に「良い税理士」「悪い税理士」の判断をすべきではありません。 例えば、「国税OB組」であっても退官後に得意ではないの税法(税目)の勉強をした人や、「無試験組」であっても、税法を深く勉強した人もいます。「良い税理士」を選ぶには、税理士になった「経緯」を参考にしながら、「税理士になったあとも、お客様のニーズに応えるため努力を続けているか」という現在の業務に取り組む姿勢も含めて総合的に判断することが大切です。税法は毎年改正され、また、お客様からの要求も多様化しています。よって、税理士となっただけでは知識・経験ともに不十分であり、その後もしっかりと勉強と情報の更新を続けている税理士こそが「良い税理士」ということになるのです。
【今回のまとめ】
今回は税理士の選び方や税理士のタイプ別特徴などをご紹介して参りましたが、最終的には、皆様がその税理士から受ける印象を大切にし、「自分(自分の会社)の為に懸命に行動してくれる税理士」「その為の知識と経験がある税理士」「親しみやすい(気軽に相談できる)税理士」を選んで頂きたいと思います。
【著者紹介】
税理士 酒井将人。
自動車業界特化型税理士事務所OFFICE M.N GARAGE代表。
税務の枠を超えて自動車販売店の業務改善などを行う「中小企業者の経営サポート」と「相続&事業承継対策」のスペシャリスト。著書に『いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務Q&A(セルバ出版)』『おうちのくるま(乗り物絵本シリーズ)』など。
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