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JPUCが記者懇談会を開催

企業・団体 2026年09月24日
「車を渡したのに、代金が振り込まれない」——買取代金の未払い相談が過去最悪水準に
会社名:日本自動車購入協会
記者懇談会で説明する井上貴之代表理事

記者懇談会で説明する井上貴之代表理事

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 「お車を売却する際、『車と書類を渡したのに代金が振り込まれない』といった深刻な買取トラブルが多発しています」——。

 一般社団法人日本自動車購入協会(以下、JPUC)が消費者向けに発出した注意喚起文書には、こう書かれている。車両の引き渡しと代金支払いの同時履行、そして第三者が代金を一時的に預かるエスクローサービスの活用を呼びかける内容で、業界の自主規制団体がここまで踏み込んだ警告を出すのは異例だ。いま買取の現場で何が起きているのか。JPUCが開催した記者懇談会を取材した。

■未払い相談は月平均22.3件、社会問題化した2023年を上回る

 懇談会でまず示されたのが、JPUC車売却消費者相談室(コールセンター)の相談統計だ。月平均の入電件数は2023年が280.5件、2024年が302.1件、2025年は260.8件と一度落ち着いたものの、2026年は1〜8月で280.5件と再び増加に転じた。3月に319件、6月に304件、7月には340件(前年同月比131.3%)と、300件超えの月が相次いでいる。

 深刻なのは中身である。「代金未払い」の相談は2026年1〜8月の月平均で22.3件。ビッグモーター問題などで買取トラブルが社会問題化した2023年の21.4件を、すでに上回る水準にある。キャンセル拒否も月平均10.1件と2桁に乗り、キャンセル違約金は月20件前後で高止まり。再査定・契約解除の相談も右肩上がりが続いている。

 井上代表理事は再増加の背景として、中古車事業者の倒産増加や小規模専業店の経営難を挙げた(ただし確定した原因ではないと留保している)。ウェブ集客、人材採用、システムやAIへの投資力で小規模事業者は不利になりやすく、「強い会社がさらに強くなる」構図の中で、資金繰りに行き詰まった事業者が消費者被害を生む——。実際、被害が報告された事業者について同代表理事は、計画的な詐取というより「一定の社歴がある会社が経営に失敗し、資金繰りが詰まった末に消費者被害を生んだ可能性が高い」との見方を示した。

■車がオークションを経て他店の店頭に——被害回復の難しさ

 懇談会では、代金未払いのまま引き取られた車両が、オートオークションで落札され、別の中古車販売店の店頭に並んでいた事例も報告された。被害者自身が車台番号の一致する車を見つけたといい、名義変更は済んでいなかったとのことだ。販売店側は未払いの事実を把握してオークション会場への返却を模索し、弁護士から契約解除の申し入れも行われたが、会場側が落札代金を回収できなければ車両を戻せない可能性も指摘され、懇談会の時点で返金・返還の結末は示されなかった。一度流通に乗った車両を取り戻すことが、いかに困難かを物語る事例である。

 また、問題事業者に対する媒体(買取一括査定サイト等)の対応時期には差があったことも明らかになった。数年前に取引を停止した媒体がある一方、被害相談が続く中で2026年9月まで掲載が残っていた媒体もあった。JPUCから媒体へ取引停止を命じることはできないが、井上代表理事は「各媒体には自社コールセンターの相談情報を取引継続の判断へ上げる社内体制が必要」と述べている。

■業界が動く。未払いへの4つの対策

 こうした事態を受け、JPUCは4つの対策を進めている。大手買取事業者の経営トップからも「業界として対処したい」との意向が直接寄せられており、業界全体の課題として受け止められている。

 第1がエスクローと倒産時補償だ。消費者決済保全部会で、第三者が代金を預かるエスクローや、事業者倒産時の支払い補償(信用取引保険等)を検討している。媒体料金に上乗せして基金を作る案も出たが、大手が主に負担し中小の倒産案件に支出する構図はモラルハザードが大きいとして、実現性は低いとみられている。

 第2が支払期限の制度化である。車両引き渡しから支払いまでの期間を定めるルール化を、JPUCが各媒体へ要請している。1週間以内の支払いを義務付けている媒体もある一方、期限を定めていない媒体も多いのが現状だ。ただし業界団体による強制は独占禁止法に触れるため、あくまで実態把握と指導の要請にとどまる。

 第3が悪質事業者情報の早期共有だ。媒体各社が問題事業者の情報を早期に把握し共有する仕組みは、以前公正取引委員会に相談した際、独禁法抵触を理由に退けられた。JPUCは顧問弁護士らと法的な論理を整理し直し、改めて公取委へ許可を求める方針である。

 第4が消費者への啓発だ。名義上問題のない人物に会社を設立させて媒体に登録し、最初の数台だけ高値で買い取って信用を作り、換金可能な車を集めて代金を払わない——そうした手口が起こり得るとの危機感も示された。冒頭の注意喚起文書は、まさにこの啓発活動の一環である。

■相談の6割が非会員案件。「指導できない」構造問題

 対策を難しくしているのが、JPUCの権限が及ぶ範囲だ。2026年6〜8月の相談のうち、会員買取事業者に関するものは22.8%にとどまり、非会員案件が57.4%を占める。JPUCは非会員の相談も受け付けるが(この姿勢は各地の消費生活センターから評価されている)、非会員に対しては団体規則に基づく是正要求ができず、弁護士相談や内容証明の送付などを案内するにとどまる。

 一方、費用負担を見ると、買取事業者が74%、媒体事業者が25.9%(2026年6〜8月)。非会員事業者の多くは媒体各社の顧客であることから、井上代表理事は「相談件数のシェアに応じて媒体事業者も費用を負担すべきだ」と主張した。団体の現金残高は毎年減少しており、2025年度は12か月のうち約9か月が赤字だったという。消費者保護の実務を担う組織の持続可能性そのものが、課題になりつつある。

■広告規約、モデル約款100万台、冠水車——その他の論点

 このほか懇談会では、自動車買取広告に公正競争規約を設ける策定作業が報告された。景品表示法の運用変更で買取業態にも同法が適用されるようになったことを受けたもので、「相場より高い」など根拠不明な表示が目立つSNS広告への問題意識が背景にある。制定には2〜3年を要する見込みだ。

 明るい数字もあった。令和7年度のモデル約款による買取台数は初めて100万台を超え(過去最高、事務局確認中)、モデル約款以上の内容で契約する比率は97.5%に達した。大手買取事業者がすべてJPUCに加入しているため、台数ベースでは国内の買取契約の大部分を標準約款以上がカバーしている計算になる。

 また、相次ぐ水害を踏まえ、冠水車をめぐる被害への対応も議題になった。本来100万〜200万円の価値があり得る車を2万〜3万円で買い叩く業者の存在が指摘され、井上代表理事は大手事業者による被災地での適正買取協定と、動かない冠水車を搬出するレッカー輸送体制の必要性を訴えた。さらに、冠水履歴を隠したままの流通を防ぐため、冠水車に関わった全事業者への履歴登録の法制化も提唱している。

■問われる業界の自浄力

 「車を渡したのに代金が振り込まれない」というトラブルは、消費者にとって資産の大部分を失いかねない深刻な被害である。今回の懇談会で浮き彫りになったのは、被害の増加そのものに加え、自主規制団体の権限と財政の限界という構造問題だ。エスクローの普及、支払期限のルール化、悪質事業者情報の共有——いずれも一朝一夕には進まないが、業界の信頼に関わる正念場と言える。消費者にできる当面の防衛策は、車を売却する際に支払予定日と支払方法が契約書に明記されているかを必ず確認することだ。

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【対象評価点】

4、4.5点

【抽出価格条件】

直近価格が500千円以上

【抽出台数条件】

毎月50台以上の流通が過去6ヶ月連続していること