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2026年7月31日 [金曜日] 大安 |  西暦元号早見表 西暦元号早見表  |  サイトマップ サイトマップ

【特集】自動車整備分野で進む外国人採用の現状

コラム 2026年07月31日
「人手不足」の整備業界はどう変わるか?

「自動車整備士の有効求人倍率は5.09倍で過去最高値を更新」――。
 
 国内の自動車整備業界を悩ませている問題は「人材確保」に他ならない。厚労省が公表している「自動車整備・修理工」の2024年度の有効求人倍率は全職種の平均1.14倍を大きく上回る数値だった。2025年度統計はまだ発表されていないが、更に上昇する可能性もあり、自動車整備業界の人手不足は年々深刻化、これを補うイメージで海外からの「特定技能」人材の積極活用が業界内で広がっている。ベトナムやフィリピンなど、東南アジア諸国からの受け入れが大半を占めるが、新車ディーラーから町の自動車整備工場まで幅広い業態で活躍し、各社における大きな「戦力」として期待が高まっている。(室田一茂)

■整備業界は有効求人倍率「5.09倍」の危機

 厚労省が公表した「自動車整備・修理工」の有効求人倍率5.09倍とは、労働者1人に対して5.09社からの求人があるということ。つまり、5社のうち4社は必要な人材を確保できない厳しい状況に陥っているということだ。また、この倍率はパートタイム労働者を含むもので、これを除いたフルタイム限定では、5.45倍とさらに数値が跳ね上がった。有効求人倍率は20年度の4.50倍から毎年上昇を続けている状況だ。この有効求人倍率は、厚労省の統計で公共職業安定所(ハローワーク)に登録された「有効求人数」を「有効求職者数」で割った数値で、求職者1人あたり何件の求人があるかを示す指標だ。圧倒的な「売り手市場」だが、他業種に比べても極端に高い数値なのが気がかりなところだ。背景には少子高齢化の加速と若者のクルマ離れ、車両の高度化による要求レベルの上昇、労働環境や賃金の課題などが挙げられるが、求職者の多くが「賃金が高く、働きやすい環境」を容易に選択できる状況が生まれ、自動車整備への関心が弱まっていることも大きな課題と言える。

■「人材不足」の救世主「外国人技能実習制度」

 こうした中、業界内外を問わず、外国人労働者の活用が進んでいる。外国人技能実習制度を活用したもので、同制度は1993年に創設「国際貢献」という名目で、主に発展途上国などから外国人を受け入れるようになった。日本の技術や技能を移転して人材育成を図るという大義だった。実際には、幅広い分野で運用され、現在では46万人(24年末時点)が外国人技能実習生として日本に在留しているという。

■「技能実習制度」の課題と新たな「育成就労制度」

 一方で、当初の「国際貢献」という目的自体が崩れ「労働力確保」という側面が強まっていることも課題として挙がっている。人権侵害や労務管理の不備、職場を変えられない転籍不可の仕組みなどが要因の失踪なども含め、国際社会からも問題視されていた。こうした状況を受け、27年には「育成就労制度」に移行することが決まっている。「人材育成」と「人材確保」を明確な目的として掲げられているのが特徴で、従来の制度にあった「建前」と「実態」のかい離が見直しの背景にある。

■「特定技能」のスタートで外国人受け入れ姿勢も大きく変化

 こうした中で、より専門性やスキルの高い人材を安定確保する意味で、19年4月からスタートした「特定技能」ビザでの就労形態が主流になっている。日本語レベルが1段階上がるほか、受け入れ可能期間は「技能実習」ビザの最大3年に対し「特定技能」(1号)ビザは最大5年。専門的技能・技術が必要な分野に限定したものだが「自動車整備」も特定産業分野の中に含まれている。この制度を活用した場合「特定技能1号」から「特定技能2号」に認定された場合は、在留期間の上限がなくなるのが大きな利点だ。この場合、要件を満たせば家族の帯同も可能になり、日本国内での転職も可能だ。こうした状況について、アセアンカービジネスキャリア社長の川崎大輔氏は「外国人採用の競争激化が進むほか、離職リスクも高まる。高い採用コストをかけて育てても辞めてしまうこともあり、企業側も『採用』から『定着』を意識する必要性が高まる」と、現状分析する。
 
 こうした状況で、外国人を高度な労働力として期待する場合は、持続的な成長を考えなければならない。川崎氏は「経営者が本気で採用に関わり、教育、育成にも投資することが重要。『即戦力』を求める企業も多いが『採用コスト』以上に『離職コスト』を意識し、外国人のキャリアップを図り、『特定技能』2号人材の定着化を図る必要がある」と、外国人採用の本質を話す。

■昨今の「円安」が外国人とりわけベトナム人の採用に大きく影響

 日本に来る外国人労働者数は年々増加傾向にあることは事実だが「特定技能」に該当する労働者の国籍はベトナムが過半数近くを占める状況にある。ただ、このベトナムからの労働者の動きにも変化が見られる。特定技能に該当する労働者とは言え、多くの場合は本国への「仕送り」が重要な目的でもある。これまで日本を目指していたベトナム人労働者が韓国をはじめ、より給与水準の高いドイツをはじめとするヨーロッパなどへ職場を求める傾向が強まっているという。とりわけ東ヨーロッパ地区にはベトナム人コミュニティが多いことも影響しているという。昨今の経済成長でベトナムの給与水準が上昇したことで、日本に来る「うま味」が弱まっているのだろう。

■期待感が高まるインドネシアからの労働力

 高度人材の確保の上で、ベトナム人の技術や人間性などが評価される中、多くの企業にベトナムからの労働者が目立つようになり「特定技能」人材についてもベトナムが最大数に上るのは事実だが、着々と構成比を拡大しているのがインドネシアに他ならない。1人あたりGDP水準が目安になるが、インドネシアやフィリピン、バングラデシュなどが大きな期待市場と言えるという。中でもインドネシアは政府が「特定技能人材」を日本に送り出すことに前向きに取り組む。7月上旬には、インドネシア労働副大臣が政府代表団を率いて来日し、インドネシアの特定技能人材に特化した人材紹介会社のアプティグローバル(東京都渋谷区、リム・ストパー社長)を表敬訪問したほか、日本での人材受け入れ状況を視察するため、関東エリアの3事業者などを視察した。同国では、若年層の失業率解消のため対日送出数を拡大、今後はベトナムなどの上位国を抜いて1位を目指すと表明している。ただ、「帰国後の母国貢献」が大きな目的なので、単なる「労働力提供」ではなく「人材育成」としての位置付けが必要になる。

 以下、外国人労働者を受け入れ共存共栄を図る新車ディーラーや自動車整備事業者4社を紹介する。

■マンザイ自動車(千葉県旭市) 
~未来を担う新戦力 「意欲」重視で現地採用「家族のようなケア」で言葉の壁超え定着、実習生が指導役に~


 千葉県旭市の自動車整備工場「マンザイ自動車」が、深刻化する整備士不足の打開策としてベトナム人スタッフの確保と育成に活路を見出している。「整備士不足はいずれ必ず来ると確信していた」。そう語る菅谷道晴取締役は、国内で求人を出しても若者の応募が極端に少ない現状を受け、約10年前から現地の送り出し機関と築いてきた独自のパイプを生かしてベトナムからの受け入れを決断した。現在、同社では特定技能2名、技能実習生2名の計4名が前線で活躍中だ。採用で重視したのは「自動車への関心とやる気」であり、現地である程度自動車に精通した人材をリクエストすることで、スムーズな現場適応を狙ったという。

 言葉の壁や定着への懸念に対し、同社は「家族のように迎え入れること」を重視する。実習生から特定技能へステップアップした先輩スタッフが後輩の指導や橋渡し役を担うほか、社員が食事を共にするなどして彼らの孤立を防ぐケアを徹底。菅谷取締役は「日本人が来ない時代だからこそ、国籍にこだわらず、手に職をつけたいという熱意に応えていきたい」と先を見据える。

 今後は日本語学校に通う留学生の採用や、社内教育を通じた国家資格の取得支援も視野に入れる。地域のインフラを支える整備現場を次世代へつなぐため、熱意ある新戦力と共に歩む同社の挑戦は、外国人雇用の先進事例として注目を集めている。


■ビッグワンオート(千葉県木更津市) ~外国人11人が現場の主力に~

 千葉県木更津市で鈑金塗装や車検整備、レッカーサービスなどを手がける株式会社ビッグワンオート。日本人スタッフを募集しても集まらなかったことから、約10年前に外国人材の受け入れを始めた。現在はスリランカ人1名、ベトナム人4名、インドネシア人1名、フィリピン人5名の計11人(取材時)が技能実習や特定技能の在留資格で在籍する。20〜30代の若手が中心で、今や現場の主力だ。

 受け入れ直後は言葉の壁があるものの、現場で主力として活躍するまで約1年半。全員勤勉で規律正しく、勤怠も正確だ。大里光夫社長は「3年も経てば、安心して任せられる。個人差はあるがトップクラスの技術を持つ外国人スタッフもいる」と話す。外国人を受け入れたことで一番変わったことは、持ち前の明るさで職場の雰囲気がよくなったこと。外国籍の顧客対応でも強みを発揮するなど、組織全体の活性化につながっている。

 円滑な受け入れを支えるのが手厚いサポート体制だ。日本人ベテラン社員が指導にあたり、寮の用意など生活面も会社が支援。大里社長は「受け入れることにほぼストレスはない」と言い、「文化への認識や語学に対する理解など、受け入れる日本人側の努力が欠かせない」と成功の秘訣を語る。

 今後も外国人材の受け入れを続けつつ、日本人の中間管理職育成も併せて進める方針。人手不足に悩む業界の確かな成功モデルと言えそうだ。

■横山モータース(岐阜県各務原市)
  ~外国人材が変える自動車整備の未来、人材不足を救う外国人材の可能性~

 横山モータース(岐阜県各務原市、横山智紀社長)では、深刻な自動車整備士不足の対策として、2018年からフィリピンからの外国人技能実習生の受け入れを開始。外国人材の力は企業の存続と県民のカーライフを守るためにも、今では欠かせない存在となっている。

 横山社長は、受け入れのきっかけを「日本人整備士の採用が困難な中、実際に現地視察で目にした彼らの技術力の高さに感銘を受けたため」と振り返る。同社では現在、5名の外国人材が在籍しており、そのうち1名が高度な知識とスキルを持つ「特定技能」の資格を取得。来年1月までに、7名を追加し、計12名体制(うち特定技能は2名、他は技能実習生)となる予定で、この規模は県内でもトップクラスの外国人整備士比率となる。

 外国人材を受け入れるメリットとして横山社長は「雇用の安定と技術力の高さ、そして場を盛り上げることができる国民性」を挙げる。今後は彼らの能力に応じた独自の評価制度を設け、日本語能力の向上や接客業務への登用など、さらなる活躍の場を広げていく方針。

 横山社長は外国人材について「単なる労働力としてではなく、一人の人間として尊重し、働きやすい環境を整えることが、これからの整備工場に求められる『適応』である。今後も積極的に外国人材の登用を行っていきたい」と展望を語った。

■京都トヨタ(京都市南区)
  ~海を越えてやってきた「共に成長する仲間」、「関西弁講座」など独自の研修プログラム~

 京都トヨタ(京都市南区、芳賀将英社長)は、京都府内に17店舗を展開する新車ディーラー。同社は現在、23人の外国籍整備士を迎え入れている。このうち2名は特定技能生で、スキルアップを目指し日々奮闘する。採用を始めたのは2022年。「外国人だから」と身構えるのではなく「ひとりの仲間」として同じ目線で接する。社内はグローバルなコミュニケーションが生まれ、良い雰囲気だ。また同社員は向上心も高く、スタッフ同士のスキル向上にもつながり、相乗効果を発揮する。

 同社員の業務は、オイル交換などの日常点検をはじめ、幅広く行う。作業の範囲は経験やスキルによって異なる。車検は点検、整備、検査の3段階あり、若手スタッフは整備がメインである。経験やスキルを重ねていくと、エンジンを車体から切り離して整備する「重整備」も担当する。

 昨秋、日本語教育の一環として「関西弁講座」をトライアルスタートした。目的はコミュニケーションの円滑化である。例えば、関西では「新しいもの」を「サラ」と言うなど、標準語とは違う表現がある。同社員の評判も良く、顧客との接客対応も見据える。また今年1月より、同社員1名をサービス本部に配属した。日本語教育の強化や独自の研修プログラムなどを通じ、接客サービス向上にもつなげ、さらなる活躍を見据える。

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