「エコカー補助金」終了目前 自動車業界における期待と不安
9月末を待たずに終了することが確定的な「エコカー補助金」。終了前・終了後の動向をめぐって不安や期待感など、各者(各社)各様の反応が見受けられる。【駆け込み需要】 スバルは、補助金枠を使い果たしてエコカー補助金の適用が受けられなかった場合に、最大10万円まで独自に負担しユーザーに補填する、期間限定の特別制度をメーカーが主体となって実施した。 一方で、補填策については、「国が行っている補助金を、身銭を切ってまで肩代わりする必要があるのか」という意見を述べる別メーカー系のディーラーもあり、補助金が受けられなかった場合の混乱を避ける意味で、顧客から念書を取っているところもあるようだ。このあたりは、メーカー・ディーラー・ブランドによって対応がずいぶんと異なるようだ。【中古車業界の反応】 JU中販連は澤田稔会長が終了を歓迎する声明を発表した。「補助金によって、中古車業界は不安定な状況を強いられていた。補助金終了を中古車業界浮揚のきっかけにしたい」とする。また、「エコカー補助金を使って購入した新車に課せられている1年間の最低使用期限が順次クリアされていくことから、中古車流通台数にプラスの効果が期待できる」との主旨の前向きな見解を述べている。 また、オークション業界においても、期待する声が複数聞かれる。オークション流通をめぐっては、エコカー補助金の適用によって車齢13年超の低年式車が相当な台数スクラップされてしまったことで、集荷面で苦戦を強いられた会場が多い。特に、低年式でも強い引き合いがある、輸出業者向けに特化した会場や、低年式でも足代わりとして車検残のある車を求めるニーズを集めていた会場は結構な痛手をこうむった。そのため、補助金終了をプラスとみる。 大阪日産AA(大阪市此花区)の吉岡末治社長は「従来から、低年式車にも根強い引き合いがあった。補助金終了は追い風」とみている。 また、国内唯一の輸入車専門AA、ジップの神川薫社長は「輸入車はエコカー補助金対応車種が国産車に比べて少なく、新車販売は不利な状況だった。インポーターや販売会社は独自のインセンティブを用意し乗り切ったが、不公平感は否めない。補助金終了で公平な状態になる」と話す。 実際、輸入車をめぐっては、「補助金の有無を気にしない超富裕層は別として、高級輸入車を乗り継いできた町工場の社長が、経営悪化で少しでも安く買える実用本位の国産車に格下げしたケースはたくさんある」(東大阪市の輸入車販売会社店長)といった声もあがっている。 一方、別の見方もある。「エコカー補助金実施により、新車が実質的に値引きされたのと同じになり、中古車との価格差が縮まったことで、中古車を買うはずだったユーザーの多くが新車に流れる。結果として中古車が売りにくくなった」といった見解をよく耳にするが、ある中古車販売店(大阪市)の社長は「本当にそうなのかな」と首をかしげる。その社長いわく、「中古車と新車のユーザーは意外と棲み分けができている。新車が安く買えるからといって、中古車ユーザーが新車に流れたケースはさほど多くないはず」と分析。「中古車が売れないのを新車のせいにすることによって『補助金が終了するまでの辛抱』と他力本願で希望をつないでいるかのように見える」と辛口のコメントを寄せた。
また、別の中古車販売店(兵庫県尼崎市)の代表者は「顧客との長年の信頼関係が強み。良質車さえ仕入れられれば、多少仕入れ値が高かろうが、何とかできる。しかし、モノがないことには勝負ができなくなる。補助金終了で良質な下取車が減って、オークション仕入れがしにくくならないか」と心配する。 USSの田村文彦副会長は、「良いほうに転ぶか、悪いほうに転ぶか、正直いって予想が難しい。ただ、どういう状況となっても対応できるように、心構えはしている」と話す。 TAA近畿会場の和田孝弘執行役員は「補助金により、専業者に下取車(買取車)が入りにくくなり、以前は開催あたり250~300社あった専業者の出品社数が200社を下回る開催もある。それだけ専業者は商材が減り、苦しんでいる」とし、「補助金が終了したからといって、苦しい目にあってきた専業者の体力がすぐに回復するかは楽観できない」とする。また、新車販売についても「補助金がない頃は、例年とあまり変わらぬ販売動向で推移してきた。しかし補助金実施により『売れまくった』わけで、将来の代替母体となる
はずの中古車が国策で早期に新車に置き換えられ、代替母体が大幅に減ってしまった、いびつな状態。反動が心配」とする。【反動回避策】 各メーカー・ディーラーは、HDDナビなど豪華オプションを装備し価格を据え置き、実質値下げとした特別限定車や地域限定車を続々と投入。お買い得感を演出し、反動を極力抑えるように努める。 一方、輸入車業界は、従来から補助金対応車種が少なく、不利な状況を強いられてきたが、国産車の補助金終了を好機と捉え、独自の販売支援策を一層強化。反転攻勢に出る構えだ。 (久保元)
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