不況下に出品を伸ばす主要AA会場に学ぶ強みと見直すべき現場重視主義
【前年度比で出品プラス会場】
9月中旬にエコカー補助金が打ち切られたとはいえ、10年度1~7月度の新車販売(軽除く)が前年度比で128・8%(8月単月では29万789台)と大幅に実績を伸ばし、ユーザーの買い替え需要を先食いした反動は大きく、中古車業界は、価格面で燃費に優れた低価格の新車に食い込まれた。
さらに登録から13年以降の車が廃車した際、25万という補助金を支給するスクラップインセンティブの影響で本来下取りで流通可能な車が解体業者に向かい、1~6月度は前年度比6・4%減の204万2741台と軟調に推移した。
ちなみに7月単月の中古車登録台数は、前年同月比4・8%減の32万7881台と、18カ月連続で減少し、7月単月では統計を開始した1978年以来、過去最低水準に落ち込んだ。
その影響は現在もまだ尾を引いており、中古車専業者の買取りや下取りにも大きな影響を与えている。そのため、各AA会場は出品車の獲得に苦戦を強いられ、昨年実績(09年)の21・8%減から、さらに台数を落とすAA会場が増えている。
いまだ回復の兆しを見せない中古車業界のなかで、生き残りをかけたAA会場間の戦いは、ますます激化している。
一時期はネットワーク化が勝利の方程式で「勝ち組」の条件とも言われたが、業界がシュリンクする中、もちろんネットは必要不可決なインフラとなっているが、これからの時代は、勝つか負けかではなく、まさに「生き残り」を懸けた大競争時代に突入したと言っても過言ではない。
上記の表は、その厳しい状況下(2010年1~7月度)で、出品が前年度対比でプラスとなった主要会場の一覧は、伸び率1位は大阪・ハナテン、2位は愛知・USS名古屋、3位が広島・TAA広島となっている。
その他にも増となった要因には、会員への営業力強化、新規会員獲得と会場集客策、成約率(ネット落札率向上)、記念企画など、出品がプラスに転じた要因は、各会場様々であるが、個別に見てみると、それぞれが自社ネットなど、独自で勝つ仕組みを備えているように思われる(前年度比99%でほぼ変わらずという会場もあるが、あえて一覧表はプラスとなった会場のみに限定)。
当然、この裏側には厳しかった09年を割り込む前年度割れのAA会場が多く存在する。
各AA会場はこれからの、自社会員の「囲い込み」と、他会場との「差別化」が問うているが明確な打開策に頭を悩ましている。さらに、新規自社会員の獲得策も図らねば、今の状況は改善のしようがない。一部のAA会場は、多くはないが廃業や退会が増えているという。
9月末以降のエコカー減税終了後は、新車販売が前年比で20%以上落ち込むと見られており、当然、下取り車が大きく減少するのでさらに厳しい状況が想定されている。
常に早い「選択」と「決断」を迫られ、判断を間違えば大きな失敗につながりかねない。そんな大競争時代を生き抜く答えは、設備投資や企画だけではなく、意外に「現場」にある。
日頃、会員と接し、いろんな声を聞き、満足も不満もすべて知るのは社員である。現場を重視する会場は、例え業績がマイナスになっていても、社員が伸び伸び活き活き仕事に挑み、会員と笑顔と元気な声で接している。そこには、次に繋がる可能性を感じる。
逆に現場を軽視し、トップダウンを行う会場には、日頃意見を聞いてもらえないために言っても無駄と諦めた「指示待ち型」が多い。決して、仕事にやる気がない訳ではないが、対応や行動に覇気を感じられない。そういう会場ほど、上層部が出品減を「社員の努力不足」と言われることが多い。
社員は、自分の人生を懸けて仕事に取り組んでいる。運営方針や目標設定はトップの判断でなければならないが、実務面は積極的に権限委譲を行い、月末や四半期など節目で結果をチェックし指導するのが望ましいのではないだろうか。目先のAA会場の出品を伸ばすことより、社員を伸ばすこと、思考も「使う」から「活かす」に切り替えることが重要なキーワードである。
あるAA会場のトップは、事務局に権限委譲を行い、職場の活性化と業績の改善に成功を収めていた。
いくら優秀なトップでも頭も目も耳も機能するのは一人力しかない。仮に100人の社員の力を結集すれば、100倍力とは言わないまでも、数倍の知恵が出てくる可能性は高い。そして何より社員は自分たちの意見が反映される手応えを感じる。そこにやる気と意欲が湧いてくる。
こういう経営の基本が出来ていないAA会場は一部であるが、今以上に業績と社員のモチベーションを下げないためにも早急に改善を図るべきである。
会員のニーズを掴み、市場の変化をいち早く知り、対策は社員にも意見を求め、全員の知恵を集める。
今の不況下でも業績が堅調な企業は多い。衣料品のユニクロ、外食産業の餃子の王将やワタミ、食品スーパーのヤオコーなど、異業種の勝ち組の事例を見れば、仕事は厳しくても「現場」を重視し、業績を伸ばしている。その成果は一目瞭然である。 (倉元)
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