最新ロシア中古車流通レポート 【前編】 - グーネット自動車流通

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最新ロシア中古車流通レポート 【前編】

オークション 2015年02月04日
~再び翳りが見え始めた ロシアへの中古車輸出に復活は期待できるか~ ソウイング 代表取締役社長 中尾聡氏 寄稿
会社名:ソウイング
写真❶新潟東港から出港するロシアの自動車運搬船

写真❶新潟東港から出港するロシアの自動車運搬船

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 日本の中古車市場において、ロシアという国の存在は極めて大きい。ことに中古車輸出に於いては、我が国の中古車輸出台数の10%(2014年実績)にあたる輸出台数を誇り、過去25年、常に中古車輸出台数で上位を占めてきている。それだけに国内情勢の変化は、輸出市場はもとより中古車流通全般に大きな影響を及ぼすこととなる。

 記憶に新しいところでは2008年、ロシア1ケ国で年間の輸出台数が全体の42%を占める563,369台を記録したことがあった。しかし翌年、ロシア政府が関税を引き上げたことで前年の1割にも満たない53,180台まで一気に落ち込み業界を震撼させたことがあった。輸出業者はもとより買取業者の統廃合、オークション関連事業者の事業縮小など中古車市場全体に大きな影響を及ぼす一大事となったが、ここへ来て、再びロシア市場を取り巻く環境に暗雲が漂いはじめている。(写真❶写真➋)


(1) 日本側輸出事業者の憂鬱
 ロシア市場に変化の兆しが見え始めたのは、昨年2月に開催されたソチオリンピック終了後のウクライナ情勢が緊迫の度を強め始めた頃からである。日本を含め欧米の経済制裁よって徐々にロシア経済は低迷、さらに秋になると原油価格が暴落、またルーブルも一気に下落するなど惨憺たる状況が追い討ちをかけるかたちとなった。(表Ⅲロシアルーブル対日本円レート推移WTI原油先物価格推移参照)

 特に日本からの中古車輸入に関しては、9月1日から新車販売を救済するべくスクラップインセンティブが導入され、それにルーブル安が加わって一気にブレーキが掛かっている。この制度は今年も継続するとのことである。またこの景気低迷が高い失業率とインフレ、可処分所得の低下をもたらすなど、中古車輸入にとってはネガティブな要素しかなく、明るい兆しはまったく見当たらない。

 「もはやロシアへの輸出に魅力は感じない」と言い切るのは、ロシアへの代表的な輸出港、新潟東港周辺で輸出事業を営むTQMインターナショナル株式会社(ウダヤ・カンデル代表 ネパール出身)のセールスマネージャー、ガーネッシュ・スヤル氏だ。「ウクライナ情勢が緊迫化するたびにルーブルが急落し、台数に影響が出ていることは事実だが、それ以前の問題として、ここ数年でロシアへの輸出にメリットがなくなってきている』という。以前、同社は秋田の大舘に本社とヤードを構えていたが、年々増加するロシアへの輸出事業が8割以上にいたって、ピーク時の08年に今の場所に移転してきたとのこと。しかし、近年は同業者が一気に拡大、過当競争となり利益は最盛期の半分以下となり、ビジネスとして成立しなくなったというのだ。結果、現在はミャンマーやケニアが主力となり、今の場所にヤードを置いておく必要性がなくなったという。近い将来、ミャンマーやケニアへの船が確保でき、仕入れ先であるAA会場が多く存在する名古屋港周辺に移転を計画中とのことだ。(写真➌)
 また「ちょうど1年前、1ルーブルが3.1円であったのが、今年に入って2円を切り、ついに1.9円となった。これでは輸出事業は完全に機能停止だ。」と嘆くのは、長年、乗用車、商業車をロシアに輸出してきた有限会社栗林商会の栗林貴光社長。昨年後半から、車両輸出はなくなり、現在のオーダーは必要に迫られた中古部品のみ。ただ、「ロシア極東地域における日本車の人気は絶大であり、爆発的な潜在能力を秘めた魅力のある市場であることに変わりはない。」と断言する。さらに「今の状況が未来永劫続くことはなく、必ず回復する時期が来ると信じている。」とし、「止まっている期間が長ければ長いほど、回復した時に堰を切ったような物凄い需要が発生するので、今はそれに備えて、ただひたすら耐えるのみ」と語ってくれた。(写真❹)


(2) ロシア側輸入事業者の苦悩(写真❺)

 筆者は昨年9月、実際にウラジオストックで中古車輸入事業の関係者を訪ね、翳りがみえつつある中古車輸入の実態を探るべく取材を敢行している。当時はウクライナ問題が緊迫はしていたものの、原油相場もルーブルも今のような惨憺たる状況ではなかった。今回、当時の取材対象者の何人かに電話取材を行い、現在の状況をどう捉え、どう対処しているのか聞いてみた。当時の取材内容と併せて紹介してみたい。

 まずはロシア最大の中古車バザール、グリーンコーナー(英語訳 現地名はゼリョーニィ ウーゴル 日本語訳では緑の一隅)で07年から中古車販売に携わっているジャパン・ユナイテッドのロマン・ガラーラ代表に話を聞いた。前回の取材で、今後の見通しについて聞いたところ、「極めて厳しい」と即答で断言した上で、その理由として、「現在ウクライナ情勢は緊迫の度合いを深め、欧米諸国は経済制裁に踏み切っている。この流れに日本は恐らく同調するはずで、そうなった場合、かなり高い確率でロシア政府は海産物の輸出と中古車の輸入を制限するとみているからだ」と言っていた。その点について聞いてみた。「日本の追加経済制裁はあったものの、大したものではなく、報復としての中古車輸入制限は行われなかったが、ルーブルがこの間、日本円に対して、ほぼ半値近くになってしまい、制限しなくても必然的に輸入できない状況に陥ってしまった。」とのこと。
 現在はどう対処しているか尋ねたところ、ほぼ開店休業状態で、現在、日本からの仕入れはゼロ。グリーンコーナーの展示車両は、現在のレートではなく、2円後半台のレートの時に仕入れた車両のみだが、まったく売れる気配がないという。今はユーザーから頼まれる中古部品の調達だけだが、それも極めて少なく、利益もほとんどとれないとのことだ。今回も今後の見通しを聞いたところ、ロシア中央銀行はルーブル安の防衛策として、12月16日に緊急利上げを行った。いったんは効果が出たが、再びルーブル安に反転している。このルーブル安の要因は原油相場の暴落によるものだが、今年に入り1バレル=50ドルを割り込み(WTI)、さらに拍車をかけようとしている。しかしいつまでもこの低レベルで原油価格が推移することはあり得ないことで、いずれ底を打ち回復するのは必然で、そうすればルーブルも反転し、再び輸入することができるようになる。それまで何とか辛抱するしかないだろうと力なく語ってくれた。(写真❻)(表Ⅱロシアへの中古車輸出台数月間推参照)

 続いて話を聞いたのは、極力在庫は持たず、日本のインターネットAAを上手く活用した注文販売を主流にしている若手の代表格でもあるグローバルモータースのフィリップ・コモリニィ社長だ。まずは現状について聞いてみた。「まったくお手上げ状態だ。取材の時(9月)に話をした2010年式(前期タイプ)のホンダフィット(青・評価点4点・走行4万5千KM、AAで55万円で落札)が当時は20万ルーブルを切っていたが、あれからわずか3ケ月たった現在では30万ルーブル出しても買えない状況。労働者の賃金はほぼ据え置きだから、極端なインフレ状態で、とても車を買おうというユーザーはいない」と嘆く。(写真❼)
 前回の取材の時、彼の話で印象深かったこととして、09年に関税が引き上げられた際、生き残った事業者のモラルの低下と市場の荒廃があった。具体的な内容は、当時中古車ディーラーの多くが廃業に追い込まれたが、生き残った中古車ディーラーの中で、関税逃れのため、日本のAAで落札した車両をハーフカットし、部品として輸入、通関したのち、接合して販売、もしくは、過走行車を安くAAで落札し、メーターを改竄したのち販売するような者が出てしまい、グリーンコーナーに接合車もしくはメーター改竄車がかなり流入してしまいユーザーの信用を大きく失墜させてしまったという事例だ。今後、このようなことが起こりうるかと聞いたところ、「現在のルーブル安が続くようであれば、そういうこともあるかもしれないが、早期に回復してそうならないことを祈っている」と語ってくれた。(写真❽)

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【対象評価点】

4、4.5点

【抽出価格条件】

直近価格が500千円以上

【抽出台数条件】

毎月50台以上の流通が過去6ヶ月連続していること