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個人経営と法人経営のメリット・デメリットなどについては様々な書籍が発行されていますが、この連載企画では「実際のところどうなの?」という素朴な疑問に立ち返り、物語形式でその実態に迫ります。
【今回のテーマ】
「個人事業主」として開業した酒井くんと、「法人」を設立して開業した相川さんは、会計ソフトを選んで自計化をスタートさせました。しかし、会計ソフトに初期設定されている勘定科目だけでは車屋特有の取引の入力処理を行うことが困難であっため、顧問税理士とも相談しながら勘定科目の設定を行うことにしました。そこで今回は、勘定科目を設定する際のポイントなどについて整理したいと思います。
【勘定科目とは】
会計帳簿に記帳する際に使用する「現金」や「通信費」といった取引の名目を表す科目のことを「勘定科目」といいます。会計ソフトには一般的な業種を想定した勘定科目が初期設定されているため、大抵の業種の場合はスムーズに自計化をスタートさせることができるのですが、売上項目が多岐にわたり、法定費用の立て替えや預かりが頻繁に発生する車屋の実務においては、事前に自店に合った勘定科目を設定しておくことがとても重要となります。
【残高試算表と決算書】
残高試算表とは、各勘定科目の金額を一覧にしたもので、原則として毎月、経営状態を把握するための「内部管理資料」として作成するものです。一方、決算書とは、原則として年に1回、株主や債権者、そして税務署などに提出するための「外部報告資料」として作成するものです。この残高試算表と決算書は、作成時期や形式も当然異なりますが、最も大きな相違点は、その作成目的にあります。決算書が外部報告資料として作成されるのに対して、残高試算表は、業績把握のための内部管理資料として作成されるので、勘定科目という観点からすると、残高試算表の勘定科目は、ある程度自由に設定しても良いのです。もちろん、金融機関に融資を申し込む際などに、決算書と一緒に直近の残高試算表の提出を求められるケースがありますので、あまり自由すぎるのも如何なものかと思いますが、経営者が後から見て把握しやすい勘定科目を設定すると良いでしょう。
【勘定科目の設定と運用】
残高試算表の勘定科目の設定は自由であることは前述のとおりですが、会計ソフトに初期設定されている勘定科目や簿記のテキストに載っている勘定科目では、車屋における会計処理に当てはめるのは困難です。車屋が勘定科目の運用を行う際に最も大切なのは、自店オリジナルの科目体系を設定し、そのルールに従って規則的に処理することです。まずは、会計帳簿を使って何を管理し、どのような指標を把握したいのかをしっかりと考え、自店オリジナルの勘定科目体系を設定しましょう。そして、その設定された勘定科目体系に従って規則的な処理を行うことによって、管理性が高く生きた経営指標を示す会計帳簿を作成することができるのです。
【勘定科目の設定方法】
具体的な勘定科目の設定には、大きく分けて2つの方法があります。1つ目は、項目ごとに勘定科目を設定する方法です。1つの項目につき1科目を設定するため、残高試算表を見れば各項目の残高や構成比率を一目で把握することができます。
<売上項目ごとに勘定科目を設定した例>
□車販売上高
□R預託金売上高
□諸費用売上高
□整備等売上高
□手数料収入
□その他売上高
2つ目は、各科目に補助科目を設定する方法です。補助科目とは、その名のとおり勘定科目を補助する役目を担う科目のことで、補助科目の残高は残高試算表ではなく補助残高一覧表で確認することになります。勘定科目の数自体は増えないので残高試算表をシンプルに仕上げることができますが、残高を確認する際には補助残高一覧表を見るという一手間が加わります。
なお、補助科目を設定する場合には、勘定科目の特性や自身が管理・把握したい内容に応じて「項目ごとに補助科目を設定」する方法だけでなく、「取引先ごとに補助科目を設定」する方法を活用するのも良いでしょう。
<項目ごと補助科目を設定した例>
【勘定科目:売上高】
□車両販売
□R預託金
□諸費用
□整備等
□手数料
□その他
<取引先ごとに補助科目を設定した例>
【勘定科目:外注費】
□佐藤自動車
□鈴木タイヤ
□高橋鈑金
□田中塗装
□その他
【今回のまとめ】
今回は勘定科目を設定する際のポイントなどについて、事前に勘定科目体系を設定し、それに従って規則的な処理を行うことが重要である旨をお伝えしましたが、開業してすぐに自店に合った勘定科目を完璧に設定することは不可能です。日々の実務に応じて柔軟に勘定科目体系を見直しながら、より良い残高試算表や補助残高一覧表の作成を目指して頂ければと思います。
【著者紹介】
税理士 酒井将人。
自動車業界特化型税理士事務所OFFICE M.N GARAGE代表。
税務の枠を超えて自動車販売店の業務改善などを行う「中小企業者の経営サポート」と「相続&事業承継対策」のスペシャリスト。著書に『いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務Q&A(セルバ出版)』『おうちのくるま(乗り物絵本シリーズ)』など。
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