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自動車公正取引協議会(倉石誠司会長、公取協)が中古車販売時の表示適正化として「支払総額表示」の義務付けをスタートし、丸1年が経過した。中古車業界においては、全国組織の日本中古自動車販売協会連合会(海津博会長、JU中販連)がユーザー保護の観点から率先して「支払総額」表示を徹底するほか、ユーザーへの啓発活動を積極展開している。公取協のインターネットホームページ(HP)には「支払総額表示」に関するあらゆる情報提供が行われており、各業界団体や販売店がユーザーへの認知度拡大に努めているところだ。 (室田一茂)
公取協では、HPや会報誌「公取協ニュース」を通じて、さまざまな情報を発信している。24年6月13日に発信したニュースでは『「支払総額で購入できない」などの苦情が、引き続き寄せられています!」とし「規約違反には『社名公表』など、厳正に対処」と強いトーンで発信を行った。中古車の「支払総額」とは「購入の際に最低限支払う必要のあるすべての費用を含めた価格」とした明確な指針を定め、消費者に安心して中古車を購入してもらうための表示を義務化した23年10月以降もなお、こうした苦情が寄せられていることは、われわれ業界にとっても非常に残念なニュースだ。広告や店頭においては「支払総額」を表示しながら、商談の際には保証やオプションなどの購入や追加費用を求める事業者が存在し、結果として「支払総額で購入できない」という苦情が消費者から寄せられているのが実情だという。
23年10月から24年5月までの期間、こうした「支払総額で購入できない(不当な価格表示)」として相談を受け付けた件数は会員が72件、非会員が34件、不明が23件の合計129件に上ったという。苦情相談内容の内訳は、大きく①支払総額で購入できないと②「諸費用として不適切な費用」を諸費用として請求された---の2項目に分かれる。
①の主な内容は「『保証』や『整備』を購入しないと販売しない」、「オプションを購入しないと販売しない」「購入の際に最低限必要な費用が含まれていない」といった内容で、いずれも広告や店頭において表示した支払総額に含まれていない費用を請求するものばかりで「支払総額表示」が義務化された後もこうした相談が後を絶たない。
こうした中で、JU中販連では「支払総額表示」の徹底を加盟店に呼びかけるほか、各単協が行う独自の啓発活動も活発化している。10月12、13日の2日間、JU熊本(西原村、満田和浩会長)が行った「JU熊本感謝祭」では、支払総額表示を徹底した中古車展示が行われ、来場ユーザーへの認知度向上につなげた。
「支払総額表示」の義務化がスタートして1年が経過、JU中販連では、会員販売店への徹底を促すなど、中古車業界屈指の全国組織として存在感を高めている。大半の販売店が「支払総額表示」に対応する一方で、認識のズレによる誤表記や公取協非加盟店などによる苦情相談も後を絶たないという。2面では業界を挙げて「支払総額表示」への的確対応を推進する中、ユーザーとの直接的な接点を持つ中古車販売店などに「支払総額表示」義務化スタート後の状況や「生の声」を聞いた。
全国の中古販売店では「支払総額表示」義務化から1年、ポジティブな話が良く聞かれる。北海道の中古車販売店は「支払総額を記載したことで『〇〇っていくらですか?』などの質問が減少し、商談がスムーズに進むようになった」という。東海地区の中古車販売店も「同一ルールになったことで、義務化以降はユーザーへの説明がしやすくなった。他店では納車整備費用を計上して売り上げにしていたという具体例も聞いていたが、真っ当な商売をしているお店がこの制度によって報われると思う。また、ユーザーも車両本体価格が安いが、逆に諸費用が高いお店に騙されることがなくなったと思う」とする。栃木県の大手中古車販売店も「業界の不透明性が払しょくされたと思う。また、われわれ自身も『支払総額表示』への理解を深めることができた」という、前向きな声が大半を占めている。
また、一歩進んだ販売店では「総額表示はもともと取り組んでおり、業界を挙げて徹底していくことは良いこと」(東海地区の中古車販売店)や「支払総額表示は当たり前のこと。それを公に取り組むことは大変良い」(首都圏の中古車販売店)と、業界の健全化につながる同制度への歓迎コメントは多く寄せられた。
「業界全体で統一の表示を行うことで、生活者が安心してクルマ選びをできるようになったと感じている」(茨城県の中古車ディーラー)とするように、こうした前向きな販売店が真っ先に思い浮かべるのはユーザーに他ならない。ユーザーを守るためにも業界全体で「支払総額表示」の徹底を推進することが重要だ。
こうした取り組みを推進するのは、公取協と業界団体に他ならないが「支払総額表示は業界のために取り組む必要があり、われわれが率先しなければならない。中古車を扱う全ての販売店が取り組むべきで、業界の垣根を越えて取り組むことで、より良い業界となり、業界自体の存続にもつながる。一番大事なことはユーザーに安心と信頼を提供しクルマを買っていただくこと。そのためにも総額表示を徹底、周知し安心と信頼の土台を作っていかなければならない」(首都圏の業界団体)と、強い使命感を持って取り組んでいる。
こうした前向きな意見が大半を占める一方で、今後の課題や改善ポイントとして考えていかなければならない声もあった。
首都圏の販売店は「総額表示の内容にあいまいな点がある。登録費用では県外登録の場合の運用や表記が不透明になる。その意味で、登録費用やモデルを作ってユーザーに周知するなどの努力や改善も必要だと思う。現場に則した事例をしっかりと検討して欲しいという思いはある。販売店にとっても、ユーザーにとっても分かりやすい制度にするべき」という、ユーザー、販売店目線の貴重な声もあった。
また、一部では「ユーザーに高額ローンを組ませ、そちらで利益を取るなどの抜け道がひどくなっている状況も見えている。また、諸費用の下限はあっても上限を設けていないので結果として統一ルールがあるのに統一感がない。このまま行くと、大規模店が生き残り、小規模店が利益を出せず衰退していくのでは」(北海道の中古車販売店)という、切実な問題提起もあった。
「支払総額表示」義務化のスタートから1年、当初は想定しなかった課題や問題点なども今回の全国ヒアリングによって、見えてきた。公取協にも依然として『表記されている支払総額で買えない』といった相談が後を絶たないという。業界健全化や公平・公正な競争を促すためにも、同制度の徹底は、業界を挙げて取り組んでいかなければならない。
【自動車公正取引協議会 鈴木欣也専務理事】
中古車の「支払総額」の表示を定着させるために
違反事業者への厳正な措置が最重点事業
大手中古車専業店による保険金不正請求等の不正行為により、中古車販売に対する消費者の信頼が大きく揺らぐ中、消費者の信頼を取り戻すため、昨年の10月より、「購入時に最低限必要な全ての費用が含まれた価格」を販売価格として表示する、中古車の支払総額の表示がスタートしました。同表示の実施に当たっては、会員事業者や関係団体、中古車情報誌賛助会員等、多くの方々のご理解・ご協力をいただきました。
支払総額の表示の定着状況については、当協議会に寄せられた消費者からの苦情相談(年間受付件数、約5,500件)を一つの目安とすれば、「表示された支払総額で購入できない」という苦情は、表示がスタートした昨年10月から1月までは月平均約9.5件でしたが、本年2月以降10月までは月平均5.8件に減少しています。これだけで支払総額の表示が定着したと判断できる訳ではありませんが、これまでにない規模で実施した会員事業者及び消費者に対する事前の周知活動の効果等により、定着化が進んでいることは間違いないと思われます。
とは言え、広告等においては支払総額を表示しているが、商談の際には様々な名目で追加費用の支払いを求める悪質な事業者がいるという実態が、苦情相談のモニタリングにより明らかになっています。これらの事業者には、公取協会員である大手中古車専業店が含まれています。
会員事業者が多くの時間や労力、コストをかけ実施した支払総額の表示の趣旨を踏みにじるもので、当協議会は、苦情相談のモニタリングを続けながら、規約違反(表示した支払総額で購入できない不当な価格表示)に対し、厳正な措置(厳重警告又は違約金、併せて事業者名公表)をとってまいります。商談の過程で行われた違反行為を立証するため、相談者への聴き取りや事実確認等、慎重に進める必要があるため調査に時間を要していますが、支払総額の表示を定着させるための再重点事業として、必要に応じ消費者庁とも連携を取りながら、取り組んでまいります。
また、苦情相談が寄せられるようになったのは「支払総額で購入できないのは不当」という認識が消費者に定着しつつあることの現れです。悪質事業者を駆逐する為にも、会員事業者、関係団体、中古車情報誌賛助会員等のご協力を得ながら、より一層認知を定着させるためのPR活動にも取り組んでまいります。
【日本中古自動車販売協会連合会 海津博会長】
消費者保護と業界の透明性向上を目指して
信頼される中古車販売業界を築くための道筋
昨年10月の自動車公正競争規約の改正から約1年が経過し、自動車公正取引協議会会員である中古車販売店における表示のルールは概ね支払総額表示義務化に対応できたものと考えております。しかしながらプライスボードは規約通りに表示がされていたとしても、セールストークや実際の商談の場面でオプションを強制したり、メンテナンスパックをつけないと購入できなかったりなど規約違反ではないかと疑われるような事案があったという声も聞こえてきています。そうした事案については自動車公正取引協議会と連絡を密にとって厳正に対処していきます。また、1年が経過してもなお規約に対する理解不足や、解釈違いなどで知らず知らずのうちに規約違反を行ってしまっているケースもゼロではないと思っております。そうしたものについては一層の理解を深めるために業界内への周知活動は引き続きおこなってまいります。
私たち中販連はこの1年間、支払総額表示義務化のユーザーへの認知向上と「総額表示になって安心」というのを伝えてきました。消費者は「事業者が表示している支払総額で購入できる」という認識を持つようになってきたので、支払総額表示をしていない公取協会員外の事業者は商売がしにくくなったという声が聞こえてきております。ある意味狙い通りではありますので引き続き「中古車は総額表示で購入できる」ということを消費者へアピールしていきたいと思います。
最後にユーザーの信頼確保に関する話として、中古自動車販売士とJU適正販売店認定制度は引き続き推進していくことが重要だと考えています。お客様に疑念を抱かれるようなお店ではないと自らが宣言してもらうのが適正販売店制度なので積極的に参加していただきたいと考えています。
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